重厚な研究 ― 2014年12月11日 08時41分27秒
今年出版された音楽書の中からとびきりのものとして、後藤暢子さんの『山田耕筰――作るのではなく生む』(ミネルヴァ書房)をご紹介します。
後藤さんは人も知る耕筰研究家で、『山田耕筰作品全集』(春秋社)、『山田耕筰著作全集』(岩波)といった大きなお仕事を主導して来られました。その蓄積をもとにしてのみなし得た評伝が、今回のものです。待望のお仕事だと思います。
山田の生涯と業績、作品と人柄、努力と理想、成功と挫折が、ここでは高い密度で、無駄なく著述されています。力みも誇張もないセンテンスの背後に、その数倍の研究が蓄積されていることが透けて見える。ノンフィクションの系列とは異なる、研究の結実です。
山田耕筰の音楽家としての大きさと重要性、また山田研究を通して見えてくる日本文化史の広がりに照らして、読み継がれていって欲しい本です。
コメント
_ べんだー ― 2014年12月13日 03時02分11秒
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後藤さんのこの著作は知らなかったので、ぜひ読んでみようと思いました。ありがとうございます。
今年はC.P.E.バッハのアニバーサリーということと関係していると思いますが、David Schulenbergと Siegbert Rampe の2人がC.P.E.バッハ研究の記念碑となるような著作を相次いで出版し、私にとってはこれがこの上ない歓びとなっています。学界内ではこのような盛り上がりが見られる一方、コンサートやCDなど実演の方面では、結局C.P.E.バッハが多く特集される機会は多くなかったような気がしていて、少し残念です。