帰国後の活動から2015年07月01日 05時52分58秒

20日(土)に関空に付くと、そのままいずみホールへ。その日はバッハ・オルガン作品全曲演奏会の当日で、ステージに間に合わせることが、絶対条件でした。とぼとぼ歩きで、リハーサルへ。出演者は小柄な韓国女性、오자경(オ・チャギョン)さんです。

到着と並んで心配だったのは、バッハゆかりの教会でオルガン・コンサートを聴いてきた自分が、日本のコンサート・ホールのオルガンに失望しないだろうか、ということでした。演奏者がアジア人だけに、なおさらです。

しかしそれは、杞憂でした。♯調の曲を集め、それらが「バッハ好みのロ短調」に向かっていくという選曲の構想をオさんは見事に踏まえてくださっていて、基礎のしっかりした音楽性で、潤いのある演奏をされたのです。とりわけ最後のロ短調フーガは、正確無比のテンポの上にフーガが端正かつ壮大に築かれ、まさに大伽藍の趣きでした。

韓国の古楽事情は日本より20年遅れているとおっしゃっておられましたが、こういう正統的な方が指導的地位にあるのなら、着実に成長することでしょう。彼女の存在を本当はわれわれが知るべきなのに、ヴォルフ先生から教えられるとは。シリーズの視野が、世界にもうひとつ広がったコンサートでした。

日曜日からもイベントだの、授業だのが連なっていて休めません。トピックを申しますと、日本モーツァルト協会におけるピアノ協奏曲論が、26日で終了しました。3月のピアノ教育連盟講演を基礎にし、さらに調べを加えて全協奏曲をたどったのですが、おかげでたいへん勉強になり、諸作品がそれぞれ、内包する方向性や工夫とともに、個性的所産として眼に映じてきました。よき聴き手を得て、勉強したなあという実感のもてる講演でした。

でもどうやら、バッハに集中するタイミングを失ったようです。モーツァルトの仕事も、結局継続してゆくことになりそう。ともあれいま先決なのは、いまだどっぷりとはまっている時差を解消することですが。