2017ドイツ滞在記(3)ーー尻上がりの《オルフェオ》2017年06月24日 23時11分25秒

ドイツのホテルの楽しみは、朝食。よりどりみどりのビュッフェから、皆さん山盛りに料理を取って、ぱくついておられます。

しかし私は、それができません。まともに食べると必ず気分が悪くなってしまうのです(注:胃を切った後遺症)。バター、クリーム、油の系統を厳重に制限し、黒パンに野菜、果物ぐらいをほどほどに、というという自己管理で臨みました。今年は去年よりコントロールに成功したのですが、唯一だめだったのが13日(火)。脈が早鐘のようになって部屋で寝込む羽目になり、約束していたハレ行きをキャンセルしてしまいました。前日飲み過ぎたたたりだと言われれば、否定できません。

昼頃やっと起きだし、市内へ買い物に。いつも行くのは、トーマス教会裏のシラー通りにある楽譜屋さんです。ここにはさすがにバッハ関係の本がよく揃っており、いつも、買うものが見つかります。

今回買ったのは、コンラート・クレークという著者によるバッハの教会カンタータ解説書最新本、全3巻。作曲年代順に全歌詞付きで解説されており、役に立ちそうです。『バッハ年鑑Bach-Jahrbuch』と同じ出版社から出ています(Evangelische Verlagsanstalt Leipzig)。加えて、ルター自作のコラールを詳しく解説してある本と、ミヒャエル・マウル氏による、トーマス学校とそのカントルに関する本を買いました。論文に使えたらと思っています。

同行の方々との解説会の後、ゲヴァントハウスで開かれたバッハ祭コンサートの一つ、モンテヴェルディ 歌劇《オルフェオ》へ。コンサート形式と謳われていましたが、オルガン席を含むステージの高度差が配置に生かされ、歌い手にもほどよい動きがあるなど、イメージを伝える工夫が払われていました。声楽・器楽に駆使されるエコーも、扉を開けた舞台裏を使って表現されると、異次元の空間性が発揮されます。

ジョルディ・サバール指揮、レ・ナシオンの演奏は、細やかに整えられた、安定感のあるもの。その分、思い切りや踏み込みに欠けるところがあり、平素ならそれだけで呪縛されてしまう「音楽」女神の導入も、きれいに、さらりと進みました。そういう印象になったのは、ゲヴァントハウスの音響によるところもありそうです(広すぎる)。前半では、使者を担当したサラ・ミンガルド(メゾソプラノ)が実力を発揮して、拍手を集めていました。

しかし、正統的な解釈の積み上げによって、後半は作品の真価をほぼ伝える出来になったと思います。オルフェオ役、マルク・モイヨンの精緻な歌唱は、聴き応え十分。通奏低音が多彩な編成により、効果を発揮していました。

まずまず想定内の《オルフェオ》。しかし翌日の《ヴェスプロ》は、まったく想定しようのないものでした。