今月のCD/DVD2009年08月27日 01時35分17秒

今月は全日更新を狙っていたのですが、ダメでした。今日はひじょうに急いでいる仕事があり、がんばっているうちに気がつくと、12時を回っていました。明日はいずみホールでギエルミの公演(オルガン)なので、更新できないかもしれません。

今月のCD/DVD選。大野和士さんがグラインドボーン音楽祭で上演したフンパーディンクの《ヘンゼルとグレーテル》(デッカのDVD)を1位にしました。お菓子の家が現代のコンビニとなる演出ですが、はつらつとして生気にあふれた舞台は、違和感を感じずに楽しめます。大野さんは子供のための啓蒙にも熱心な方ですが、そういう方ならではの熱気が感じられる、夢のある《ヘングレ》でした。

第2位には、先日ご案内したノリントンのハイドンの交響曲を入れました。厳密には先月分に当たりますが、どこかで一度取り上げておきたいと思い、今月分に押し込みました(輸入盤)。

3位は、岩城宏之さんがオーケストラ・アンサンブル金沢を指揮した遺産です(CD、ワーナー)。武満徹、メシアン、一柳慧、高橋悠治の作品が、まっすぐ切り込む真摯なスタイルで演奏されていて、岩城さんが現代音楽の分野で積み重ねた貢献はやっぱり大きなものだったんだなあ、となつかしみました。

もぬけの殻2009年08月24日 23時57分37秒

10月にいずみホールで開かれる「ウィーン音楽祭 in Osaka」の記者発表のために、大阪へ。今日はシェーンベルク《月に憑かれたピエロ》を歌われる中嶋彰子さんが同席してくださいましたので、彼女を中心に話が進みました。そのコンサートで取り上げられる貴志康一(大阪出身の天才作曲家)についても中嶋さんがたくさん調べられており、そのテーマでも話がはずみました。

企画打ち合わせの前に一休みしようと、ホール近くのコーヒー店「にしむら」へ。ここのコーヒーはたいへんおいしく、モーニングも充実しています(「サラダセット」「フルーツセット」の2種がある)。私は大阪に宿泊すると、いつもここで朝食を取るのです。新聞も揃えられ、スペースもゆったりしていて、なかなかこれだけのお店はありません。

ところが・・・。お店が、跡形もなくなくなっていたのです。もぬけの殻。茫然として、しばらく立ち尽くしてしまいました。少し前に閉店したが、安いチェーン店に押されたのではないか、とのことでした。

私の通うお店はつぶれる、というのは、本ブログでもよく申し上げているジンクスです。でも、ある程度冗談のつもりだったんですよね。どうやら、冗談では済まなくなってきました。

お手上げの審査2009年08月23日 22時01分15秒

いやあ、今日はきつかったです。午前中に、中学混声の部14団体、小学校の部2団体を審査。午後は1時半から、一般の部22団体の審査になりました。

自由曲が8分プラス課題曲というルールなので、1団体が10分を超えます。1時間5団体弱ぐらいのペースで、途中10分の休憩をはさみ、6時過ぎまで、審査が行われました。この22団体に、順位をつけるのです。

アドバイス用コメントを書きながら順位を考えてゆくのは、結構な重労働。しかし玉石混淆であればまだいいのです。埼玉県というのは合唱団が多い上に一般のレベルが高く、実力伯仲の団体がたくさんある。上位に集中というのがいちばんやりにくい形ですから、正直に言いますと、あまりうまくない団体が出てくると、ほっと一息です。逆に、すばらしいハーモニーで歌い出されたりすると、さあ困った、と、頭を抱えてしまいます。

だんだん疲れて頭が働かなくなり、収拾がつかない状況で終了。困りました。コンクールではいつも困りますが、今回の困り方は深刻。もうこんな仕事は金輪際辞めよう、と決心しました(笑)。

1位の候補は、私見によれば前半のA、中程のB、後半のCの3つで、伯仲しているように感じれられました。終わった段階ではC、B、Aという順が心に浮かんだのですが、しばらく考え、A、B、Cの順に修正して提出。その理由は、時間差でたくさんの演奏を聴き、順位をつける場合には、どうしても新しい方が印象が強いので有利になる、という体験(客観的にも立証されている)から、「同等に感じた場合には前の方を上位にする」という原則を、自分なりに立てているからです。とはいえ、この原則を発動するか否かにも、微妙な判断を強いられます。

提出し、いや~な気持ちで、集計を待ちました。集計紙が配られてこわごわ見ると、右隣の審査員(二期会の重鎮S先生)の1位が、やはりAではないですか。思わず、全身の力が抜けるほど安堵しました(笑)。2位は左隣の審査員と同じ、3位の団体には、委員長が1位をつけています。全体としてみれば私の採点は異色なのですが、違うところも自分なりに説明できる違い方なので、まずまずこれで良かったと胸をなで下ろしつつ、講評に出かけました。

というわけで、審査、またやることになりそうです(笑)。辛かったですが、いい音楽をたくさん聴くことができました。ちなみに私の1位は、scatola di voceという合唱団です。

繰り返される報道2009年08月22日 23時30分51秒

覚醒剤の件、報道は繰り返しに入っていますが、それでも見てしまうのは、話題の主の華麗な容姿のゆえに違いありませんよね。美しい映像が、あとからあとから出てきます。「清純派」の話題は当室では未遂に終わりましたが、報道では完全にNS=清純派という等式になっており、清純派の概念も同時に、疑惑に包まれてしまいました。等式が本当に正しいかどうか、吟味も必要でしょうが。

私は美学の出身ですから、こんなとき、美とは何だろうと考えます。美は人の心に非現実的な期待を生み出し、思い込みによる虚像を拡大する。それは一面で、さまざまな悲劇や弊害を生み出します。女性は一般に、物心つき、恋をしながら美しくなってゆくものだと思うので、少女時代からきわだって美しいというのは、それなりの環境を前提とする、ということはないでしょうか。

いつも多大な気持ちの負担を伴いながら、進むにつれて充実感を覚えるのが、合唱コンクールです。たいへん疲れましたが、明日もう一日、がんばります。

夏の終わり2009年08月21日 22時44分46秒

惜しまれつつ亡くなった若杉弘さんは、とても付き合いやすい、魅力のある方でした。その若杉さんから伺ったお話で印象深いのは、あるときから夏休みをしっかり取るようにした、ということです。

日本人は休みもろくに取らずに働きますが、向こうの人は、長期間のバカンスを、遠慮なく取る。音楽家も同じで、音楽をまったく離れ、リゾートなどに出かけて、心ゆくまで遊ぶのだそうです。そうすると、夏が終わる頃には意欲が再燃し、音楽をやりたくてたまらなくなる。自分もそれに気づいたので、どんなにおいしい話があっても仕事を入れないのだ、というお話でした。

この話をありありと思い出したのは、明日からスケジュールがぎっしり詰まっていて、夏休みが事実上、今日で終わったからです。え、リフレッシュして意欲再燃か、ですって?

今年は外に一歩も出ず、部屋で片付けをするばかりでしたので、夏を楽しんだという感じがしません。いわゆるブルーマンデーと、同じような状態になっております。なにしろ最初の仕事が合唱コンクールで、なかなか気骨が折れるものですから・・・。

ハイドンの愉しみ2009年08月20日 23時54分39秒

没後200年を迎えたハイドンの音楽、皆さん、楽しんでおられますか?けっして盛り上がっているようには思えませんよね。大音楽家として知られ、尊敬されていても、人気はもうひとつ盛り上がらないように見受けられますが、それは、日本だけではありません。ウィーンのハイドン記念館も閑散としていて、トイレさえないのには往生しました。

外国のことはともかくとして、ハイドン人気が日本でもうひとつなのは、日本の音楽ファンが音楽を情緒的に聴く傾向があるからではないかと思います。音楽に感動を求めるスタンスを捨て、あたかもからくり屋敷を探検するような好奇心で音に耳を傾ければ、ハイドンほど面白い音楽も、そうありません。

そう思ったのは、ノリントン指揮、シュトゥットガルト放送交響楽団のDVD(ヘンスラー)を見たから。第96番《奇跡》、第101番《時計》、第1番の3つの交響曲が、ユーモアとウィットの固まりのように演奏されていて、こういう音楽を楽しむゆとりをもちたいな、と思いました。

ハイドンの輸入DVDでは、アンドラーシュ・シフが解説しながらピアノを弾いているフンガロトンのDVDが圧巻です。頭が指に直結しているように見事にコントロールされたピアノで、形を作りながら形をこわし、形をこわしながら形を作っていくハイドンの楽想が生き生きと表現されています。

思い出のソプラノ2009年08月19日 22時14分21秒

ヒルデガルト・ベーレンスさん、草津で亡くなったんですね。夕刊で知りました。レヴァインとメトロポリタン歌劇場の記念碑的な《リング》は、彼女のブリュンヒルデなくしてはありませんでした。巨人的なブリュンヒルデでなく、女らしさのいきわたる役作りが印象的でした。

今、持っているだけだったDVDに少しずつ目を通しているので、一世代前の歌い手たちと再会します。ベーレンスさんと別の意味でいいソプラノだったなあ、と思うのは、チェコ(スロヴァキア)のガブリエラ・ベニャチコヴァーさん。ジョルダーノの《アンドレア・シェニエ》を見たのですが、全盛期のドミンゴ、カプッチッリにはさまれて、じつにしっとりとした、やさしいマッダレーナを歌っています。

サイトウ・キネン・フェルティバルでヤナーチェクの《イェヌーファ》が上演されたとき、主演した彼女のステージが「イェヌーファ千回目」とアナウンスされ、度肝を抜かれたことを憶えています(百回の間違いじゃないか、と思いました)。千回と言えば、1週間に1回歌っても20年近くかかるわけですよね。世界中の《イェヌーファ》上演に呼ばれていた、ということでしょう。ポップ、グルベローヴァといった後輩に比べると地味な存在かもしれませんが、心のある、いい歌い手でした。

頭のいい人2009年08月18日 22時38分03秒

覚醒剤の話が一段落して、テレビに選挙の話が戻ってきました。私は非政治的なのですが選挙は好きで、開票速報をいつも楽しみにしています。今年はその日が須坂なので、温泉でビールを飲みながら眺めることになりそうです。

で、いまテレビに自民党の細田幹事長が出演していたのですが、たいへんな頭脳の持ち主ですね。古舘伊知郎を子供扱いです。すっかり感心してしまいました。

一見おっとりと見え、カリスマ性を感じないのですが--だから幹事長に登用されたとき、もっと違う人いないの、と思ったわけですが--頭の回転の速さといい弁論術といい、ずば抜けています。そしてそれが目立たないというのが、まことに、一筋縄でいかないわけです。世の中にだいぶそのことが認知されたとみえ、女子大生の人気が急上昇とか。私も一票です(あ、選挙の票という意味ではなく)。

私は、権力者の目というのを知っているつもりなのですが、細田さんはやさしい目ですね。でも時が時なら、こわくもなるのでしょうか。

修士号?2009年08月17日 22時52分52秒

新聞で面白い記事を読みました。ドイツの女性の提出した修士論文が話題になっている、という内容です。この女性は、トイレの落書き700件を収拾して分類・考察し、人間は「思い込みで自己主張する派」と「自分の意見はないのに他人の欠点をあげつらって攻撃する派」の2つに分かれる、という結論を導き出したというのです。結局人間はこの2種類しかないのかもしれない、というオチがついていました。

なかなか、辛口な発想ですね。でも人間、それほどひどくはないと思いますよ。小さな新聞記事でどこまで論評していいかわかりませんが、私が思うには、トイレに落書きするのは特別な人であり、その特別な人が、2つに分かれるというだけのことではないでしょうか。それにしても、これだけ丹念に読んで記録にさえしてくれれば、落書きした人は本望でしょうかね。

独創的な切り口とは言えるとしても、大学のトイレの落書きを700件集めただけで、修士号が取れるものでしょうか。どういう専攻かわかりませんが、ちょっとお手軽なように思えます。ちなみに著者は、キャンパス内の40のトイレを巡回して情報を集めたそうです。

アルンシュタットからのメール2009年08月16日 22時24分24秒

《マタイ受難曲》公演ツアーからとうとう2ヶ月経ってしまいました。昨日ようやく、ケンブリッジ・コンツェントゥスの方々にお礼状を執筆。英語を書くのは時間がかかるので、ドイツ語で書き、ウルリーケさんに英訳してもらうことにしました。併せて、ブログのいくつかと、皆様からいただいた感想も独訳して送りました。

間もなくリフキン先生から返信が来ましたが、なんと、バッハが若き日を過ごしたアルンシュタットからで、これからバッハ・アンサンブルのコンサートをするとのこと。メールの最初の方を訳してみます。リフキン先生特有の修辞的表現をご理解いただくために、わざと直訳にします。

「貴兄のすてきなメールは、私をアルンシュタットで見いだしました。ここで私は今夜、バッハ・アンサンブルとコンサートをするのです。完璧な音響をもつすばらしい古教会で行われる、まったく特別なコンサートです。この教会は、長いこと放置されたままでしたが、最近行政の手で修復されました。ですから貴兄のメールは、私の現在の音楽生活の中心であるドイツと日本を、この上なくすてきな形で結びつけたことになります。」

このあと、皆様の感想を感動して読んだこと、心が伝えられたのであれば音楽家としてこれ以上の喜びはないこと、などが綴られていました。 ありがたい感想をくださった方々に、あらためて御礼申し上げます。