今月のCD/DVD選2011年08月24日 23時43分04秒

本日の夕刊に、今月のCD選が出ました。

私の1位は、輸入DVDですが、リュリの最高傑作歌劇《アルミード》 の、シャンゼリゼ劇場における上演映像です。クリスティの自信みなぎる指揮(演奏はレザール・フロリサン)、魔女役を熱唱するドゥストラックら歌手たち、モダン・バレエを駆使した新鮮なステージ、いずれもが最高の魅力にあふれ、優雅流麗なフランス様式を堪能させてくれます。カーセンの演出は、寓意的が人物がルイ14世を賛美するプロローグを現代の観光ツァーに設定していて、観光客がバレエを踊ります。私はこういうのを基本的に歓迎しないのですが、幕が空いてからは正統的な舞台になるので、許容範囲内としました。

ジェローム・ローウェンタールというピアニスト、有名ですよね。「師事」したと経歴に乗せている日本人もたくさんいます。しかし演奏は、まったく聴いたことがありませんでした。今回窓口のできた輸入レーベルからリストの《巡礼の年》を届けてもらったのですが、78歳での録音にもかかわらず、明晰かつ若々しい演奏にびっくり。一聴に値すると思い、2位にしました。「ブリッジ」というレーベルです。

オノフリとヂパング・コンソートのライヴもすばらしかったのですが(とくにコレッリ)、1位がバロックなのでこれはあきらめ、3位には、「ある旅路で」と題するドイツ・リートのCD(含むリストのイタリア語歌曲)を入れました(フォンテック)。茶木敏行というテノール歌手、ご存知でしょうか。言葉が生き物のようにすっと入ってくるのに魅了され、聴き通しました。詩を慈しむ姿勢が、手に取るように伝わって来るのです(目の不自由な方だそうです)。ベートーヴェンからシュトラウスまで、というと定番のプログラムが思い浮かびますが、そういう曲はほとんど含まれておらず、じつに渋い選曲。そこにも求道精神を感じます。

崎川晶子さんによる『アンナ・マクダレーナ・バッハのためのクラヴィーア小曲集』を、西原さんが2位、梅津さんが3位に挙げておられました。私は解説者なので、申し合わせにより選外としています。