《マタイ受難曲》、感動の富山初演(3)2015年02月26日 10時47分40秒

私のメイン・ジョブは、字幕の操作です。字幕のプロ、幕内さんがきれいに整形されたファイルが送られてきていて、それをiPadで操作するよう、現場は設定されていました。どうやら、Windowsの環境には移せないようです。

私は反マック陣営で過ごして来ましたので、iPadにはさわったことがありません。ここにまず、不安があります。また、私は字幕が好きだといわれていますが、操作を自分でやったのは、松本の《ロ短調ミサ曲》だけ。熟達しているわけではまったくありません。《ロ短調》と比べれば《マタイ》はるかにテキスト量が多く、人物や群衆の会話も錯綜している。操作は大忙しです。

整形されたプロの字幕には、強いフェードがかかっていました。ゆっくりと立ち上がって、ゆっくりと消えていく。その効果はたしかにいいのですが、タイミングを取るのがたいへん。歌の入りに、少しずつ先行しなくてはならないからです。

あまりにも失敗するので、これは困ったという焦りが出てきました。なにしろ字幕の作りが内容の伝達にこだわっていて、操作の困難を無視している。文句を言いたくなりましたが、作成者はあいにく、私自身です。今まで操作された方、さぞ苦労なさったことでしょう。なんとか少しずつ慣れ、あとは本番に集中するのみと、気持ちを切り替えました。

さて本番。4階のブースに籠りました。指揮者津田雄二郎さんの身振りをモニターで見ながら、iPadにタッチしてゆきます。リズムに乗り、流れが出てくると、演奏者の一人になったような気持ちがして、楽しい。それにしても、《マタイ》はなんと、いい曲が次から次へと出てくるのでしょう。

少しずつミスをしましたが、まあ、大勢に影響ない部分であったので引きずらないようにし、後半へ。しかし事実上のシロウト作業で3時間を完遂できるほど、字幕は甘くありません。落とし穴が待っていました。(続く)