メンズ館2016年04月07日 10時40分56秒

定職を離れたし、世間のモードも簡素化されているし、ということで、長いこと洋服を買いませんでした。必然的に着古したものをいつも着ていることになるわけですが、おりおりステージに立つ身としてそれではまずいのではないかという反省が生まれ、じつに久しぶりに、洋服(スーツ)を買うことにしました。買う場所は決まっていて、伊勢丹のメンズ館です。

しかし、問題が発生。私はブランドを選ぶほどの知識も才覚も根性もありませんから、着るものはイギリスの安心ブランド☓☓☓☓、と決めていました。ところがそのブランドが、伊勢丹を撤退してしまったのです。さあ、どこに行くか。軒を連ねるブランドの数は多く、どれが自分に向いているか、まったくわかりません。

考えているうちに、凶暴な気持ちが生まれてきました。どうぜ買うのは一着。一生に一度ぐらいは有名ブランドで購入してみようか、というひらめきが浮かんだのです。

私は勇を鼓して、○○○○○という自分でも知っているお店に行き、私のような者でも着られるものはあるでしょうか、と尋ねてみました。長身の垢抜けた店員さんが、もちろんですと、相談に乗ってくれました。

品物を見ると、やはりいいのですね、これが(笑)。しかし、すぐわかるようには値段がついていない。そこで勇を鼓して、選択肢の1つについて、値段を訊いてみました。金額は、☓☓☓☓で買うとき用意する額の1.6倍ほどでした。それならまあ射程内と、私はほっとした気持ちになりました。

さんざん迷った末に、買うものを決定。すると長身の垢抜けた店員さんが、何かコーディネートするものは、とおっしゃいます。私は、どんなジャケットがあるのか見ておきたい気持ちになっていたので、その旨を告げました。するともってきてくれた候補が・・・すばらしいのですね、また(笑)。

勇を鼓してその値段を訊いてみると思ったより安く、スーツの金額と、いくらも変わりません。しかしジャケットとスーツの値段がいくらも違わないのは不合理に思え、問いただしてみると、何たること!私が購入を決めた選択肢は、値段を訊いた選択肢よりもずっと高く、☓☓☓☓で用意する額の2.4倍ほどの価格であることが判明したのです。さまざまな値段のモデルが、混じり合って並んでいたのでした。

私は激しく動揺しましたが、なにぶん一流店に入っていますから、ここで動揺を悟られては立場がありません。そこで、自分でも感心するほどの演技力で、鷹揚に対応しました。長身の垢抜けた店員さんは上客と思われたようで、しごく丁重に扱ってくださいました。

皆様にぜひお伝えしたいのは、このお店を出てから私が襲われた、いわく言いがたい高揚感です。そのあと近くのマッサージ店に行ったのですが、いつものようにリラックスせず、目がらんらんと光っている。血の循環がいいせいか、凝りもいつもほどではない、とのご判定です。

そこで先生(女性)に体験を話し、有名なメンズ・ブランドというとすぐ思い浮かべるところはどこか、と訊いてみました。すると先生はしばらく考えて、「○○○○○とか?」とおっしゃるではありませんか。正解なのです!

治療が終わり、受付にいる快活な女性に、同じことを尋ねてみました。その人もしばらく考えて、「○○○○○とか?」と、同じ答。正解です!ますます気分が高揚して、家路についた私でした。

じつは今日、その洋服が出来上がってくるのです。私の年齢、私の体型でそれが似合うかどうかという、大きな問題がまだ残っています。