今月のCD2016年04月22日 09時26分59秒

今月のCD選、すでに紙上に出まして、taiseiさんのコメントが入りました。そこで、経緯をご説明したいと思います。

今月手元に寄せられた新譜は数が少なく、いいものも最近、あるいは何度か取り上げたアーチストのもの。そこで、たくさん集めている古楽の新録音から、いいものを紹介するチャンスだと考えました。

できれば《ロ短調ミサ曲》をと思い、ガーディナー、ラーデマンの2015年録音を候補に考えました。ガーディナーの新録音は本サイトのコメントで教えていただいていましたが、手に入れたのは最近です。

《ロ短調ミサ曲》ほどの曲ですから、名演奏はたくさんあります。しかし、決定盤が出るとすれば、それはガーディナーの新録音にちないない、と私は考えていました。「偉大な作曲家たち」という伝記映像の中でも、モンテヴェルディ合唱団の歌っている《ロ短調ミサ曲》はすごいですから。

ところがいざ鳴らしてみて、「えっ、これ、どうしたの?」と思ったのですね。精彩に欠ける印象で、合唱にも緩みがあります(バスが飛び出たりする)。録音にも問題がありそうだが、私の耳もおかしいかな、と思って、翌日聴き直してみました。しかし感想変わらず。そのまた翌日も、そう思いました。

一方の、ラーデマン。これはドレスデン筆写譜(パート譜)に基づく新校訂版使用(ライジンガーによるカールス版)を売りにしており、DVDには、パート譜の美麗な画像が収録されています。スコアとの有名な相違は、〈ドミネ・デウス〉の二重唱がスコアではフルートが2本ユニゾン(神人一体の象徴)であるのに対し、パート譜ではソロ。しかも逆付点リズム使用が示唆されています。

この二重唱にフルート・ソロを採用し、逆付点で吹かせている演奏は、ままあります。しかし新盤では声楽も逆付点で歌っていて、なんとノリのよいこと。〈クォーニアム〉のはつらつ狩猟モードがその延長線上にあり、厳粛な宗教音楽の枠を超えています。

では〈グローリア〉だけが売りかというと、その先がいい。曲ごとに集中力が高まってきて、じつに立派です。そこで、こちらを推薦しようと決心しました。

ラーデマンは日本でまだ知られていませんが、ドレスデン室内合唱団とともにシュッツの合唱作品全曲を初録音した実力者です。彼がゲヒンゲン聖歌隊とフライブルク・バロック・オーケストラを指揮した《ロ短調ミサ曲》は、まさに、昨年の「ライプツィヒ・バッハ音楽祭」のトリを摂ったもの。私は聴きませんでしたが、すばらしかったと聞いています。

新旧交代という言葉がちらりと頭をよぎりますが、どうなんでしょうか。