《ワルキューレ》今昔 ― 2008年02月26日 23時38分54秒
ワーグナーの作品の日本初演には、けっこう立ち会っています。《ワルキューレ》のそれは1972年ですから、私は美学の大学院生。火の玉のような勢いの演奏に驚き、日本でもこれだけのワーグナーができるのか、と舌を巻いたことを覚えています。クールな渡辺護先生(←指導教授)も、「良かった!」と興奮しておいででした。
同じ二期会による、今年の《ワルキューレ》(2月20日)。初演時にブリュンヒルデを熱演した曽我榮子さんが公演監督になられたことに、時代の推移を、そして二期会の継続性を感じます。正式の批評ではないので、気楽に感想を。
第1幕は低調で、初演時の意気込みはもう過去のものなのかなあ、と思っていました。しかし第2幕の中程から、急激に盛り上がってきた。初演から36年を経て、飯守泰次郎さんにはいまや、大家の風格があります。作品を知悉した人が指揮を執っている、という安心感が、弾いている方にも聴いている方にもある。日本のワーグナー公演の、偉大なる中心ですね。オーケストラ(東フィル)も、重量感こそ未だしですが、正確に美しく弾けていて、安心できるレベルに来ています。8人のワルキューレたちのホールを揺るがすような声の響きにも、今昔の感を覚えました。
キャストでは、横山恵子さんの、凛とした正攻法のブリュンヒルデに、すっかり感心。小森輝彦さん(ヴォータン)には内面性がありましたし、小山由美さんの、知性と風格を備えたフリッカには、世界の水準を実感しました。
というわけで大いに楽しみましたが、6時に文化会館に転げ込み、全力で帰宅して12時過ぎ、というのはきつかった。バイロイトでは観客も1日がかりで取り組むわけで、作品の大きさが、日常生活の枠組みを超えているのです。それでも上演され、聴きに行くわけですから、さすが、超名曲。
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