生命と音楽のかかわり ― 2008年12月21日 23時35分24秒
理系の頭がないものですから、科学の本を手に取るのはいつもはばかられます。それでもこの本を買って新幹線に乗ったのは、「新書大賞、サントリー学芸賞ダブル受賞!」という謳い文句に惹きつけられたから。読んで納得。ダブル受賞は伊達じゃありません。すばらしい本で、生命科学の基本とその発見史が、わかりやすく、味わい深く、感動豊かに綴られています。文章といいその構想といい、傑出した書き手です。
読み進めるうちに、電子顕微鏡の突き詰める生命とは、音楽に酷似している、と思うようになりました。音楽が人間の時間的生命を充実させるものだとの趣旨を、私は音楽美学概論でつねに述べているのですが、その趣旨と響き合う記述が、随所に見られるのです。たとえば最後にある文章。この主語を、「生命」から「音楽」に入れ替えても、大筋で通るのではないでしょうか。
「生命という名の動的な平衡は、それ自体、いずれの瞬間でも危ういまでのバランスをとりつつ、同時に時間軸の上を一方向にたどりながら折りたたまれている。それが動的な平衡の謂いである。それは決して逆戻りのできない営みであり、同時に、どの瞬間でもすでに完成された仕組みなのである」(福岡伸一『生物と無生物の間』より)。
この本が、講談社の雑誌『本』に連載されたものに基づいているというのも驚きでした。私もときどき書かせていただく媒体ですが、こんなにすごい連載があったことを見過ごしていたからです。
明日は6時前に出て、福岡に向かいます。
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