初版とは ― 2008年12月28日 23時48分08秒
「ジュンク堂」という本屋さん、有名なのでしょうが、私は行ったことがありませんでした。ところが、福岡店を訪れて驚嘆。圧倒的な品揃え、合理的な売り場構成、これはたいしたものです。
文庫も、じつによく揃っている。丹念に見ていくと、だいたい読んだつもりの松本清張に、『遠い接近』という未読書があるのを見つけました。これを帰路に読みましたが、無駄のない辛口の展開は、やはり面白い。この小説には、戦争中の軍隊や戦後の闇物資時代の生活のリアルな記述が、満載されています。それを読みながら、戦争を生き、戦後の混乱の中で私を育ててくれた両親のありがたさを、あらためてしみじみと思いました。今の人生、なんと楽なんでしょう。
併せて買ったのが、夏樹静子の『茉莉子』。私が夏樹ファンであることはすでに書きましたが、最近はどういうものか本屋さんの棚で見かけることが希になり、寂しく思っていました。さすがジュンク堂で、新しい文庫を見つけたわけです。
この小説は女子大生舞妓を主人公に、人工授精の問題を扱いつつ母の探索という謎解きをからめてあるのですが、「命」への愛にあふれていてすばらしく、車内で涙ぐんでしまうこともしばしばでした。そこで奥付を見ると、2001年出版の、初版なのです。丁寧に美しく綴られた良書なのにどうして読む人が少ないのか、考えてしまいました。飛ぶように売れているが中味はない、という本も多いだけに、不思議であり、残念でもあります。もちろん、個人的な感想ですが。
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