市民オペラ!2011年03月06日 11時54分00秒

尊敬する友人、慶応大学教授の三宅幸夫さんが、5日(土)、最終講義をなさいました。シューベルトの《白鳥の歌》から〈影法師〉の分析を中心に話されたというのはいかにも「らしい」と思いますが、私はどうしても時間が空けられず、夜の懇親会に駆けつけるという形になりました。締めのユーモラスなスピーチも、優秀な方にふさわしい、冴えたものでした。これからますます活躍されると、確信しています。

6日(日)は、東大和市民合唱団10周年記念+同市ハミングホールの開館10周年記念イベント「華麗なるオペラ」へ。私の役割は、《魔笛》の抜粋公演にナレーションを行うことです。いわゆる「市民オペラ」に参加するのは初めての経験でしたが、皆さんは「市民オペラ」なるものについて、どのようなイメージをお持ちでしょうか。少なくとも私は、自分の中にあった概念を、完全に覆されました。これは、書いておかなくてはなりません。

市民合唱団のものすごい熱意と、それに協力を惜しまなかった方々によって、公演がまれに見るほど盛り上がったこと。それは事実です。だがそれが可能になったのは優秀な指揮者が統率していたからで、逆に言えば指揮者が優秀で全力投球されれば、市民オペラの可能性はじつに大きい、ということです。その指揮者は時任康文さんのだったのですが、この方の人間性と力量には、感嘆を覚えました。

オーケストラやソリストを揃えての練習時間は、当然、限られています。その中で、感じよく、無駄なく練習を進め、本質的なところに絞ってわかりやすい指示を出して、演奏の質を、目に見えて向上させる。高い集中力と威厳を保ちながら、配慮にあふれていて、スマート。みんなが眼の色を変えてついてくるのも、当然です。日本ニューフィルハーモニック管弦楽団の向上度合いも、眼に見えるほどでした。

ソリストは、ザラストロ 志村文彦、夜の女王 佐藤優子、パミーナ 横山美奈、タミーノ 土崎譲、パパゲーナ 白木あい、パパゲーノ 小林昭裕、モノスタトス 葛西健治という顔ぶれ。初めての方がほとんどだったのですが、皆さん、相当な力量です。若手にチャンスを与え、クラシック音楽の啓蒙の場にもなるという意味で、市民オペラというのは本当に大事なイベントなんだなあということを肝に銘じる、この1日でした。

コメント

_ T.K. ― 2011年03月08日 19時00分05秒

三宅先生、最終講義ですか。月日の経つのは速いこと、そして時の流れの速さに反して、自分が努力を怠ってきたことを思います。
私は三宅先生のドイツリートの講義に接し、シューベルトの素晴らしさを初めて知りました。もともとは理工系の御出身でいらっしゃる三宅先生の論理的かつ精緻な講義にもまして印象深かったのは、先生の弾くピアノでした。背筋に電流が走った感動を今でも忘れません。
独チュービンゲンではバッハの論文で学位を取られたと記憶しています。ワーグナーにも大変造詣が深い三宅先生の、今後の御活躍と御健康を御祈り申し上げます。

_ I教授 ― 2011年03月09日 00時07分58秒

まったくその通りで、すばらしいピアノをお弾きになります。逆立ちしてもかないません。というわけで尊敬申し上げる私ですが、ご趣味の野球の話題で接近しようとするたびに、失敗するのです。アンチ巨人と巨人ファンの典型的な関係が、ここにあります(笑)。

_ T.K. ― 2011年03月09日 22時25分43秒

Ik教授も素晴らしいですよ。私は今日三省堂書店に行って、I教授の文庫化された学術新書「魂のエバンゲリスト」の‘あとがき’を読んで感動しました。特に駒場時代に受けた杉山好先生の講義の件りは、旧版同様に良き師との出会いの大切さを余すところなく伝え、感動的です。杉山先生の名訳は、私も大好きでした。
三宅先生は三宅先生で、本当に素晴らしい稀有な存在だと思います。しかし、I教授も負けず劣らず素晴らしいと思います。ただ、ちょっとタイプが違うのでしょうか?
それは巨人ファンとアンチ巨人の差…とでもいうべきでしょう。埋められないと思います。埋める必要もありませんが。
アンチ巨人の私は両先生の講義の恩恵に浴せたことを感謝するのみです。御二人の先生が御健康を護られ、今後とも益々御活躍されることを自身の励みにさせていただきます。

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