「3」で斬る《ドン・ジョヴァンニ》2011年08月23日 13時08分12秒

コンサートの後半は、例年のごとく、管楽アンサンブル伴奏によるオペラのハイライトです(足本憲治さん編曲)。「3」という数をもとにモーツァルトのオペラにどうアプローチできるか、考えました。

三重唱を並べるだけでは、コンサートになりません。《魔笛》には3が活躍しますが、3が単位になるのは、脇役ですよね。そこで気づいたのが、《ドン・ジョヴァンニ》です。このオペラには、三重唱場面が複数あるのみならず、アリアや二重唱に、「事実上の三重唱」になるものがある。ドンナ・エルヴィーラのアリアには脇からジョヴァンニとレポレッロがからみますし、墓場でのジョヴァンニとレポレッロの二重唱には、石像の返事が入ります。そこで、アリアは2曲のみとし、あとは広義の三重唱を並べて、次のようなプログラムを作りました。

騎士長の死の場面→エルヴィーラのアリア→〈カタログの歌〉→〈シャンパンの歌〉→エルヴィーラ、ジョヴァンニ、レポレッロの三重唱(私のいちばん好きな曲)→墓場の二重唱→フィナーレ(ジョヴァンニとレポレッロの食事の場面ですが、途中でエルヴィーラが入り、彼女と入れ替わりに石像が入る)。要するに、男声三重唱によって始まり、男声三重唱によって終わることになります。

マニアックといえばその一語に尽きるでしょうが、3人のバスがまったく違うイメージで使われていることがよくわかり、この角度から眺める《ドン・ジョヴァンニ》もとても面白いと思いました。なにしろキャストが、黒田博(ドン・ジョヴァンニ)、久保田真澄(レポレッロ)、長谷川顯(騎士長/石像)プラス澤畑恵美(ドンナ・エルヴィーラ)という、日本を代表する顔ぶれ。管楽器にも教授陣をはじめとする名手がずらりと揃っており、こんな顔ぶれでレクチャーコンサートができるなんて、ありがたいかぎりです。

というわけで、圧倒的な盛り上がりとなった福岡のコンサートですが、第1部で登場した地元の在学生・卒業生の演奏がレベルも集中度もたいへん高かったことも、貢献として忘れることができません。中でも、在学中親しかった方が立派に歌われたシュトラウスの《万霊節》には、涙を禁じ得ませんでした。6年間に、いろいろな思い出を作った同調会コンサート。これで終わりです。ご協力いただいたすべての方々に感謝申し上げます。

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック