今月の「古楽の楽しみ」2012年04月07日 23時39分33秒

一ヶ月間違え、大慌てで作りなおした、今月の「古楽の楽しみ」。本当は、ドイツ・バロックの受難曲特集を計画していました。期日を合わせられれば一番良かったのですが、今年の聖金曜日は昨日。復活祭もいいかげん過ぎたタイミングの放送になってしまいますが、待ちきれず、計画通りやらせていただだきました。

今年度から、放送が週4日になっています。23日(月)は、17世紀後半の受難曲の急速な発展を、シュッツの《ルカ》、ウプサラ筆写譜(作曲者不詳)の《マタイ》、ローテの《マタイ》、ブラウンス(伝カイザー)の《マルコ》という、4つの作品でたどりました。もちろん抜粋せざるを得ませんので、冒頭と最後は全作品を聴き比べ、他に、聖書場面から、特色のある部分を1つずつ選ぶ、という形にしました。ちなみにブラウンスの《マルコ》は、バッハが筆写譜を作成し、ライプツィヒでも演奏した作品です。ですから、バッハが影響を与えられた既存の受難曲を、代表しているわけです。

24日(火)は、ブクステフーデの7部から成る連作受難カンタータ《われらがイエスの身体》を、第2部省略で。演奏は、ヤーコプスのものを選びました。25日(水)、26日(木)は、バッハの《ヨハネ受難曲》です。第2部の前半を少しはしょったぐらいで収録することができました。それ以前の作品もそれなりに味わいがありますが、やはりバッハは桁外れですね。歴史をたどればその先に自然にバッハがある、というわけではないことがわかります。歴史を受容しながら歴史を断ち切ったのが、バッハの《ヨハネ受難曲》なのです。

演奏には、ガーディナーの2003年のライヴ録音(独ケーニヒスルッターでの録音、最近市場に出たもの)を選びました。ほとばしる勢いと熱い盛り上がりのある、すばらしい演奏です。その後、アーノンクールのDVDを見ました。これも迫力のある演奏で、テルツ少年合唱団のソリスト(ボーイ・アルト、ボーイ・ソプラノ)が大健闘しています。しかし壮年時代のアーノンクールの劇的・刺激的なスタイルが作品の宗教性を減殺しており、本当の感銘には至っていないように思われました。

《ヨハネ受難曲》の本を、というお勧めを、以前からいただいています。新バッハ全集の再校訂版をヴォルフ先生が担当されることになりましたので、先生のお仕事を拝見しながら考えてみようかな、と思っています。

コメント

_ T.H ― 2012年04月08日 05時12分33秒

NHKの音楽番組(クラシック関係)がここ十年くらいでだんだん減ってきているように思います。特に最近は。朝、昼とあったクラシックの放映が朝だけになりそして今年度は月~金までと一日少なくなってしまいました。
大変残念に思っています。私だけでしょうか?

_ taisei ― 2012年04月09日 01時11分11秒

NHKについちゃあ私もそう思っているところです。
ところで、今日はいずみホールでのバッハコレギウムジャパンの特別演奏会=マタイ受難曲を聴いてきました。マタイの実演は数年前のシンフォニーホールでの確か「コルボ=ローザンヌ」だったかの演奏で聴いて以来2度目です。CDではガーディナーとメンゲルベルク!を持っていますがちゃんと聞いてなくて…。今回の演奏会に向けても結局時間がなくてちゃんと聴きとおせず、また教授の「マタイ受難曲」も読むだけではよくわからず読みとおせずで、結局今日は教授の「マタイ受難曲」を片手にホールに向かい演奏中もページをめくりめくり聴く始末。でしたが、やっとマタイがちょっと分かったような気がしました。演奏の良しあしを云々するレベルでも余裕もありません。が、知力と聴力をフル稼働した3時間半でした。終わった時にはさすがに疲れましたが充実感が一杯でした。

_ taisei ― 2012年04月10日 00時15分55秒

ヨハネ受難曲は、6月の大フィル定期でヴィンシャーマン氏の指揮で取り上げられます。それに向けて今、BCJのCDで聴き始めてますがあの緊張感のある出だしといいマタイと比べても遜色ない名曲だと思えるのですが。扱いがあまりに違いすぎませんかね。ヨハネの本教授に是非!

_ I招聘教授 ― 2012年04月10日 01時32分34秒

たしかに、《マタイ》の陰に隠れる部分はあるかもしれませんね。しかし、演奏頻度は《マタイ》より上でないですか。《マタイ》は編成が大きいのでおいそれとできませんが、《ヨハネ》は合唱団がずいぶん取り上げていると思います。

_ taisei ― 2012年04月10日 08時12分13秒

そうでしたか。それは知りませんでした。確かに規模が違いますね。長さもCD2枚ですし。これからまた聴きこんで行きます。適当な解説書・参考書がありましたらご紹介願えませんでしょうか?

_ I招聘教授 ― 2012年04月12日 00時36分26秒

《ヨハネ》の本はないんじゃないでしょうか。『ヨハネ福音書』の本をお読みになるのも、遠回りなようで、近道だと思います。

_ taisei ― 2012年04月13日 01時20分09秒

ありがとうございます。って大変じゃないですか!でも、王道ですね。わかりました。「検討します」(笑)
今日の「今昔の感」。「今時の学生め。I教授の講義を受けられることがどんだけ素敵なことか分からないか!こっちは関西で受けたくてもできないのに」と憤慨したり羨んだり。でも普段は金払ってでも聴きたい人ばかりの相手で静かなのが当たり前から「単位のために仕方なく来てやってんだよね~」っていう学生相手こそ講義が本当に面白いのか内容・進め方・話術も含めて試されるんですよね。教授も試練ですね
その中からひょっとして教授の講義をきっかけにバッハファンクラシックファンが出てくる「かも」知れないので是非頑張ってください。って人ごとなので言えますが・・・。
明日は大フルの定期でブルックナーの7番・尾高忠明指揮&モーツァルト23番のP協です。よく聞く曲ですしバッハとブルックナーこりゃもう直接結びついてますから予習なしでもOKです。ゆっくり楽しんできます。で、日曜はフルマラソン。4時間何を聴きながら走れば好記録が出るか?今検討中。ロ短調を最後の100分に。その前がブルックナーの3番か4番で60分。あと80分を初めに何を聴いて走りだすか。思案中

_ NAK-G ― 2012年04月13日 12時55分17秒

お邪魔いたします。
 
寡聞にして知らず、カイザーのマルコは他者の作品だったのですね。するとカイザーの真作受難曲はブロッケスだけということでしょうか。
 
I先生のヨハネの本、期待しています。

_ I招聘教授 ― 2012年04月15日 00時02分38秒

メナンテス作詞のものなど何曲がありますが、かなりの曲が失われています。CPOというレーベルから「カイザー/受難音楽」というCDが出ており、《ルカ受難曲》の断片を含む、3曲が収録されています。カペラ・オルランディ・ブレーメンの演奏です。

_ NAK-G ― 2012年04月15日 19時03分46秒

ありがとうございました。CPOのCD、ぜひ聞いてみたいと思います。そういえばブロッケスもCPOでした。

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