今月の「古楽の楽しみ」2013年07月08日 23時55分05秒

ドイツ旅行のおり、また各地での講演のさいにも、「古楽の楽しみ」への出演が、自分を広げていることに気がつきます。この番組、昨年バッハの「秋のカンタータ」という特集をやりましたが、今年は「夏のカンタータ」を特集しました。6月から8月にかけて初演されたカンタータから、名作を選んだ企画です。

15日(月)は第21番《私には多くの憂いがあった》。ご存じ、初期の大作です。これ1曲でほとんどを占めてしまいますが、わずかに残った時間で、第9曲に出るコラール〈神にすべてを委ねるものは〉の、オルガンと合唱、計3バージョンを流しました。カンタータの演奏はヘレヴェッヘです。

16日(火)。第45番《お前に告げられている、人よ》と、第105番《主よ、裁かないでください》。テキストは教訓的な傾向ですが、音楽的にはどちらも充実したカンタータです。演奏は第45番がレオンハルト、第105番が鈴木雅明。両曲に含まれるコラールの別バージョンを、月曜日同様に--没後、弟子と息子により編纂された《4声コラール集》から--流しました。

17日(水)は世俗カンタータ。第205番《鎮められた風の神》の全曲と、第207番a《いざ、陽気なトランペットの調べよ》から。演奏は前者がアラルコン(西風役で櫻田亮さんが出演)、後者がベルニウスです。どちらもまことに壮大な作品で、再評価への一石となれば幸いです。

18日(木)は、DVDにもなっているガーディナーの名演奏から、第199番《私の心は血の中を泳ぐ》と第179番《心せよ、神を畏れることが偽善とならぬように》をまとめました(プラス、マーク・パドモアの歌で、第113番のテノール・アリア)。メゾのマグダレーナ・コジェナーがソプラノを歌い、「ファリサイ人と徴税人」の説話(ルカ福音書)による深い内容をもったカンタータを、感銘深く聴かせてくれます。

バッハの音楽のすばらしさを少しでも広く知っていただきたいと思って日頃活動していますが、カンタータだと、とりわけ力が入ります。器楽曲ほどは知られていない、と感じることがままあるからです。その意味でとても印象的だった7月7日松本でのコンサート、写真が揃ったところでご報告いたします。