まつもとバッハの会コンサート報告2013年07月14日 23時44分49秒

7月7日、七夕の日に、松本で手作りのコンサートを開きました。ご尽力いただいた方々への感謝を込めて、ご報告申し上げます。

今回は、「バッハの仕事場を覗く」と題する、6回シリーズの最終回。連続講演をコンサートで締めるというのは、つねに理想的です。関心と問題意識を共有してきた受講生の方々が聴衆となって、熱い感動で盛り上げてくださるからです。講演とコンサートでは本来予算が大きく異なるため、三方一両損のような形で実施せざるを得ないのですが、その手作り感が、かえってコンサートの魅力ともなっているように感じられます。

今回は、オール・バッハのプログラムとし、古楽器、アンサンブル、カンタータという3本の柱を立てました。準備はチェンバロの調達から始まりますが、穂高クラヴィーアさんから楽器の準備、運搬、調律まで丁寧なサポートをいただき、広沢麻美さんの優雅で潤いのある響きが会場を満たして、コンサートは始まりました。曲目はフランス組曲の第5番です。


まず印象づけられたのは、会場となった深志教育会館(私がステージから転落したところ!)の響きと品格が、古楽器にまことにふさわしいこと。地元の名手、塩嶋達美さん(この方がいらっしゃるのでコンサートができます)のフルート・ソナタホ短調も、若手ガンバ奏者品川聖さんの協力を得て、アンサンブルの魅力を発揮しました。


予算上、声楽はアルト(高橋幸恵さん)に絞り、カンタータのアリアを歌っていただくことにしました。調べてみると、アリアの名曲はオブリガートの大半がオーボエ・ダモーレです。尾崎温子さんに実力を発揮していただくには、絶好の場ができました。


もちろんフルート、ガンバも使って、多彩なオブリガートを組みました。


右上のトンボが、松本深志高校の校章です。アリアには、時間をかけて字幕を用意しました(中央のスクリーン)。ところが、歌が始まるとお客様の視線が高橋さんに集中してしまい、字幕は無用の長物に(笑)。操作しているまさお君も、おそらくは無用の長物でした。人気を集めた高橋さん、バッハへの適性を感じさせました。


アンコールの一部として、当日演奏された曲からリクエストしていただくことを企画しました。おそらく、演奏効果に富む第214番のアリア(《クリスマス・オラトリオ》のフルート付きテノール・アリアの原曲)が選ばれるだろうと思っていたのですが、支持が集まったのは意外や、死を瞑想する長大な第125番のアリア。深く聴いてくださったんだなあと、感動。演奏がよく準備されていたことは確かですが、「お客様から力をいただく」形ができていたことも、確かだと思います。最後、《ゴルトベルク変奏曲》最後のアリア(広沢さん演奏)が「魂鎮め」として深い余韻を残し、コンサートが終わりました。

帰りの列車が、「鹿と先行列車が衝突して救出に手間取っている」という理由で1時間40分遅れ、ツキの余剰分をしっかりお返ししました(笑)。