ドイツ旅行記2013(11)--なつかしのヴォルフェンビュッテル2013年07月01日 23時50分39秒

訪れたとき、ドイツは猛暑でした。ライプツィヒが、35度。湿度が低いから、夕方になると涼しくなると思っていると、そうではないのですね。午後4時でも太陽は高く、カンカン照り。夕方5時から6時にかけて、最高気温になるのだそうです。知りませんでした。

ところが、途中から一変して、寒風吹きすさぶ世界に。私は気温の変化に強いのですが、敏感な人だったら、たいへんだったろうと思います。ライプツィヒからブラウンシュヴァイクを経て、なつかしのヴォルフェンビュッテルに到着しました。


20年前、私はここに通って、著作『マタイ受難曲』のために、バッハ時代の神学書を研究しました。久しぶりに降り立つヴォルフェンビュッテルは、駅の南側が開発されたほかは昔のまま、清潔な町並みです。この日は閲覧手続きと資料の予約をし、昔泊まったホテル「バイエリッシャーホーフ」で、夕食を摂りました。ウェイターさんが昔世話してくださった方とよく似ているので「お父さんですか」と訊いてみると、自分のではなく受付にいた女性のパパであるとのこと。20年の歳月を噛み締めながらの食事となりました。


 翌25日(火)は、朝からアウグスト大公図書館(上)で、17世紀神学書の研究。いちいち昔を思い出しますが、バッハの歌詞に慣れたためか、読むのはずっとはかどります。パソコンが持ち込めるので、重要なテキストの抜き書きに没頭しました。こういう研究をする人はあまり多くないようで、とても丁寧に対応していただきました。特別な発見をしたわけではありませんが、多くを学ぶことができました。

 勉強を一区切りした夕方、ゴスラーに足を伸ばしてみました。ブラウンシュヴァイクを出てヴォルフェンビュッテルで下車する列車は、ゴスラーまで行くのです。それで気になっていました。ゴスラーは、ハルツ地方の中心地。行ってみると、想像を超えていいところでした。中世以来の歴史的な建造物がたくさんある上、町並みが軽井沢風に洒落ているのです。ドイツ旅行の穴場として、お勧めします。






ドイツ旅行記(12)--ハンザ都市に驚く2013年07月02日 23時58分21秒

個人旅行の方は、簡潔に報告させていただきます。「順調な旅行じゃないの。面白くないよ」とおっしゃるあなた。最後にもう一山ありますので、お待ちください。

26日(水)。夕方近く、図書館で一通りの目的を果たした私は、一路、ベルリンに向かいました。ベルリンは予定外でしたが、疲れてもきていたので、慣れた街で日本食でも食べよう、と思い立ちました。

ベルリン中央駅(ハウプトバーンホーフ)でICEを降りようと準備しましたが、ふと、疑念が。それは、ベルリンに中央駅なんてあったっけ、ということです。着いてみると、そこにあったのは、何層にも立体化された大きな駅。どうやら私が最後に訪れた後にできたらしく、私としたことが、どこに行ってどうしてよいやらまったくわからずに、しばらく呆然として、ウロウロしてしまいました。

やっとの思いで旧チャーリー・ポイント近くのホテルに入りましたが、ベルリンの中央部はいたるところ工事中で、殺風景。旧東地区が美しくなるには、まだ時間がかかりそうです。結局、西地区の玄関だったクーダムのあたりまで、夕食に出かけました。エッティンガー・ホテルの夕食は、良かったですよ。 

今回の目的として新たに加わったのは、オルガンのある教会を見て回りたい、ということでした。放送で「何教会の何オルガン」という紹介をしますので、できるだけ実感をもちたい、と思ったからです。となると、北ドイツに行かなくてはなりません。そこで、ベルリンから比較的近い旧東のバルト海岸まで、行ってみることにしました。地図の右上、メクレンブルク=フォーアポメルン州に相当します。

鈍行で2時間半を費やし、世界遺産の都市、シュトラールズントに到着。先日のオルガン・シリーズで、聖マリア教会のオルガンを紹介したところです。駅からの最初の散策で見つけたのがこの教会ですが、大きいのなんの。ドーンと屹立するその偉容に、ハンザ同盟都市の繁栄は半端なものではなかったんだなあ、と実感しました。


内部のオルガンも、堂々たるもの。リューベックの製作者、シュテルヴァーゲンによる楽器です。

旧市街を一通り見たあとは港に出て、穏やかな海(←内海の、そのまた内海)を眺めながらお昼を食べました。ドイツにおいて、海の景観はやっぱり貴重です。

ベルリンに往復も惜しいので、西に向かい、このあたりの中心都市、ロストックへ。巨大な建物にかつての繁栄を伝えるという点では、ここもまったく同じでした。写真は聖マリア教会。中心教会がマリアの名を伝えるのは、いずこも同じ伝統のようです。


ドイツ旅行記(13)--こ、この人たち、誰?2013年07月03日 23時26分19秒

海外旅行をしていると、時間のめぐりがゆっくりになります。あまりに日が経たないので、帰国に備えて曜日を数え直すことも、しばしば。帰国便にだけは乗り遅れるわけにいきませんから、私もナーバスになっていました。

帰国便は、土曜日の午前、ライプツィヒから飛び立ちます。空港に8時に着くと、ちょうどよさそう。だとすると、残りの1泊をどこにするのがいいか、思案しました。ライプツィヒに戻るのももったいないし、離れた街もこわいので、選んだのはほどほどの距離にある、マクデブルク。今回、ハレ、ケーテン、ツァイツを訪れ、ザクセン=アンハルト州の土地勘を得ましたので、その州都、マクデブルクへの関心が増大していました。

ベルリンからいったんマクデブルクに着き、荷物をコインロッカーに預けて、ツェルプストを往復。ここも昔宮廷があり、バッハがかかわりをもっていた町です。町は整備されていましたが昔の建物はほとんどなく、夕立にも見舞われ、訪問は、はかばかしい成果なく終わりました。

マクデブルクに戻り、ネットから予約しておいた四つ星のホテル、マリティムへ。設備といい客扱いといい抜群のホテルで、皆様にもお勧めです。ここで、驚くべきことが。ロビーにパーティの準備がしつらえられ、ものすごく着飾った美女たちが、続々とやってくるではありませんか。まさに、有名映画祭そのままの雰囲気なのです。この人たちは何者だろう、このあたりの人とは思えないがどこの国から来ているのだろうか、と深刻な疑惑を抱きつつ、横目でちらちら見ながら、街の散策へと出発しました。

見どころが多い街ですね。たくさんの教会があり、大聖堂の壮大さは、北の諸都市に劣りません。


旧市街を歩くと、テレマンのプレートがありました。そう、ここはテレマンの生まれた街なのです。


マリティム・ホテルのディナーも良かったですよ。最後の夜も更け、徐々に緊張が高まってきました。汽車の時間を調べ、モーニングコールも頼んで、就寝。映画祭(?)パーティも、遅くまで盛り上がっていたようでした。

ドイツ滞在記2013(14)--最後の一山2013年07月04日 22時57分18秒

29日(土)。空港に早く着かなくてはならないので、緊張して起床しました。マクデブルクのホテルをチェックアウトする際、「昨日のパーティは何だったのですか」と聞くと、耳を疑うような答えが。ギムナジウムの修了記念パーティだ、というのです。え、あの豪華ドレスの女性たちが(男性もいましたが目に入らず)、ドイツ人?!普通の、そのへんの高校生?!とうてい信じられない私は、これまでなにか、大きな勘違いをして過ごしてきたのでしょうか。

列車は、駅に張り出されている一覧表で調べておきました。7時10分のローカル列車に乗ると、ケーテン、ハレと経由して、8時5分に空港に着きます(ライプツィヒはその先、終点)。コインロッカーから荷物を出し、詰め替えて出国審査をしても、ちょうどよさそうな目算です。そこでドイツ鉄道の新兵器、ナビゲーター機能をもつ自動販売機で、空港行きのチケットを買おうとしました。すると、到着時間が9時23分と表示される上、妙に値段が高いのですね。変だなあ、と思いましたが、時間が迫っていたのでとにかくチケットを買い、列車を待ちました。

すると放送が、今日はケーテンとハレがなんとか、と言っています。そのなんとかが聴きとれないうちに、ライプツィヒ行きの列車が到着。しかし鈍行ではなく、急行(IC)です。変だと思ったが、目的地は一緒だし、ハレのような主要駅は必ず停まるだろうからそこで乗り換えてもいいと思い、そのまま乗り込みました。

しばらくして、検札が来ました。念のため、「ハレで停まりますよね」と尋ねたところ、なんと、「停まりません、次は ラ イ プ ツ ィ ヒ です」というではありませんか!私は驚きのあまり、髪の毛が逆立ってしまいました。ドイツの鉄道は、遅れはしょっちゅう、直前のホーム変更はしょっちゅう。しかしハレや空港のような重要駅を「今日は」飛ばしてしまうような変更をするとは、あんまりです。そうか、自動販売機は、ライプツィヒから戻ってくることを想定して、高い値段と遅い到着時間を提示していたわけか。

しかしどこにも停まらないのでは、手の打ちようがありません。私も人様を喜ばせるために旅行をしているわけではないので、飛行機に遅れた旅行を飛行機に遅れて締めくくる、なんていうのはひどすぎです。ともあれ最善を尽くそうと、ライプツィヒ駅ではまなじりを決して走り、タクシーに駆け込んで、空港を指定しました。

空港着。しかしビルが2つあり、コインロッカーが見つからりません。2つのビルを走って往復し、ようやくロッカーを発見。しかし何日も滞納していますので、開かないという事態も考えられ、ダヴィデヒデさんの尊顔が、頭をよぎりました。だがここは無事に開いて、荷物の詰め替えを行いました。

私にとって(皆様ではなく)幸いだったのは、ライプツィヒの空港がローカルで人が少なく、手続きに時間がかからなかったことです。なんとかフランクフルト行きに間に合い、乗り継ぎにも成功して、日本に帰って参りました!全14回(←バッハの数)の連載にお付き合いくださった方々、ありがとうございました。

今月のイベント2013年07月05日 23時58分46秒

連載が長引き、肝心のご案内が遅くなりました。もう済んでしまったもの、直前に迫っているものもありますが、取り急ぎ、ご案内させてください。

朝日カルチャー新宿校は、7月から新サイクルに入りました。隔週水曜日の13:00~15:00枠で、「《マタイ受難曲》徹底研究」を継続しています。3日は終了しましたが、17日、31日が残っています。ようやくアルト・アリア〈わが頬の涙〉に到達しました。次回、次々回は、受難コラールを経て、ゴルゴタへの道行きがテーマになります。バス・アリア〈来たれ、甘き十字架よ〉が登場します。

朝日カルチャー横浜校は、第1土曜が「超入門」、第4土曜が「魂のエヴァンゲリスト」講座です(いずれも13:00~15:00)。「超入門」、6日に迫ってしまいましたが、ラヴェルの《ボレロ》を題材に楽器の紹介をしよう、という趣向。変奏ごとに楽器がどう使われていくかの一覧表を作成しましたが、面白いですね。チェリビダッケの映像を使用予定。27日の「エヴァンゲリスト講座」は、チェンバロ協奏曲を取り上げます。ご好評をいただいた放送のナマ版、というところです。

立川の「楽しいクラシックの会」は、12日(金)に親睦旅行をしますが、講座は20日(土)の10:00~12:00。テーマはワーグナー《ワルキューレ》の第2幕です。あ、親睦旅行の目的地は、長瀞です。8月にはビヤパーティもあり、楽しみの多い会になっています。

まつもとバッハの会の連続講演「バッハの仕事場を覗く」は、最後の回にコンサートをやりたい、という願いが、皆様のご協力で実現できることになりました。7日(日)の14:00から。松本深志高校教育会館(←ステージから落下したところ)にチェンバロを持ち込み、本格的なバロックの響きをお届けします。プログラムはフランス組曲第5番(チェンバロ:広沢麻美)、フルート・ソナタホ短調(トラヴェルソ:塩嶋達美、ガンバ:品川聖)、カンタータ第76番のシンフォニア(オーボエ・ダモーレ:尾崎温子)、そしてカンタータのアルト・アリア、第147番など数曲(アルト:高橋幸恵)となっています。演奏者ともじかに触れあえますので、近くの方々、ぜひお越しください。

月末にもうひとつ特記すべきコンサートがありますが、それは別枠でご案内します。どうぞよろしく。

いずみホール年間企画20132013年07月06日 23時56分12秒

5日(金)、大阪で、いずみホールの今年の年間企画に関する記者発表をさせていただきました。

今年は、モーツァルトです!昨年で「ウィーン音楽祭in Osaka」を一区切りにしましたので、とりあえずウィーン頼みを克服することが課題だったのですが、久々のモーツァルト企画をそれに当てました。すなわち、ウィーン以前のモーツァルト、ザルツブルクにおける最後の5年間に焦点を当て、もろもろの体験を克服した上に実現された、たくましい大人の音楽家としてのモーツァルトの名作を、「未来へ飛翔する精神」として聴いていこう、という企画です。コンサートは10月末日から始まります。

詳細はいずみホールのホームページ(http://www.izumihall.co.jp/)におまかせし、近くなったらご案内したいと思いますが、企画は「溢れ出る管弦楽の力」(協奏交響曲、ポストホルン・セレナード)、「パリの青春」(フルートとハープのための協奏曲、《パリ交響曲》他)、「二重奏&ソロの光と影」(ヴァイオリン・ソナタ、ピアノ・ソナタをフォルテピアノで)、「オペラで勝負する」(《イドメネオ》の演奏会形式上演)、「室内楽はのびやかに」(フルート四重奏曲、オーボエ四重奏曲、ディヴェルティメントニ長調)の5つのコンサートと、そこに到達するまでのモーツァルトの成長を鍵盤楽器3種とお話でたどるレクチャー・コンサートによって構成されています。レクチャー・コンサートが露払い役となり、9月5日(木)開催。ご出演は久元祐子さんで、私が聞き役を演じます。

構想についてはもちろん私からお話ししたのですが、演奏者がお二人、助っ人で同席してくれました。《イドメネオ》で主演される福井敬さんと、ハープ・ソロで第2回に出演される福井麻衣さん(パリ在住)です。

職業柄、こんなときに内容のある意欲的なお話をしていただくと、その方に対する尊敬と、コンサートに対する意欲が湧いてくるもの。この日の福井敬さんが、まさにそうでした。洞察力のある密度高いお話を伺ううち、自慢のキャストを揃えた12月14日の《イドメネオ》が、ますます楽しみになってきました。林美智子さん、幸田浩子さん、並河寿美さん、中井亮一さんらが出演されます。

今月の「古楽の楽しみ」2013年07月08日 23時55分05秒

ドイツ旅行のおり、また各地での講演のさいにも、「古楽の楽しみ」への出演が、自分を広げていることに気がつきます。この番組、昨年バッハの「秋のカンタータ」という特集をやりましたが、今年は「夏のカンタータ」を特集しました。6月から8月にかけて初演されたカンタータから、名作を選んだ企画です。

15日(月)は第21番《私には多くの憂いがあった》。ご存じ、初期の大作です。これ1曲でほとんどを占めてしまいますが、わずかに残った時間で、第9曲に出るコラール〈神にすべてを委ねるものは〉の、オルガンと合唱、計3バージョンを流しました。カンタータの演奏はヘレヴェッヘです。

16日(火)。第45番《お前に告げられている、人よ》と、第105番《主よ、裁かないでください》。テキストは教訓的な傾向ですが、音楽的にはどちらも充実したカンタータです。演奏は第45番がレオンハルト、第105番が鈴木雅明。両曲に含まれるコラールの別バージョンを、月曜日同様に--没後、弟子と息子により編纂された《4声コラール集》から--流しました。

17日(水)は世俗カンタータ。第205番《鎮められた風の神》の全曲と、第207番a《いざ、陽気なトランペットの調べよ》から。演奏は前者がアラルコン(西風役で櫻田亮さんが出演)、後者がベルニウスです。どちらもまことに壮大な作品で、再評価への一石となれば幸いです。

18日(木)は、DVDにもなっているガーディナーの名演奏から、第199番《私の心は血の中を泳ぐ》と第179番《心せよ、神を畏れることが偽善とならぬように》をまとめました(プラス、マーク・パドモアの歌で、第113番のテノール・アリア)。メゾのマグダレーナ・コジェナーがソプラノを歌い、「ファリサイ人と徴税人」の説話(ルカ福音書)による深い内容をもったカンタータを、感銘深く聴かせてくれます。

バッハの音楽のすばらしさを少しでも広く知っていただきたいと思って日頃活動していますが、カンタータだと、とりわけ力が入ります。器楽曲ほどは知られていない、と感じることがままあるからです。その意味でとても印象的だった7月7日松本でのコンサート、写真が揃ったところでご報告いたします。

モンテヴェルディやります!2013年07月10日 11時14分40秒

7月30日(火)19:00に迫ってきたモンテヴェルディのコンサート、私としては今年の最重点課題の1つなのですが、ドイツ旅行2週間とその前後のしわ寄せで、なかなか向き合うことができませんでした。なにしろ場がサントリーホールのブルーローズ、出演者は一流の方々ですので、これからしっかり作品研究と対訳を準備しなくてはなりません。コンサート誕生の経緯についてはチラシの文章に言い尽くされていますので、以下に引用させていただきます。

「昨年の7月、渡邊順生さんのサントリー音楽賞受賞記念コンサートで演奏されたモンテヴェルディ《聖母マリアの夕べの祈り》は、今でも私の脳裏に、新鮮な感動をもってよみがえってきます。こんなすばらしい作品があったんですね、といろいろな方に言っていただきましたし、古楽演奏のレベルが高くなっていることに驚かれた方もいらっしゃいました。こんな機会を1回で終わらせたくない!そんな一念から、当日は裏方役だった私が音頭を取って、サントリーホールにおけるモンテヴェルディ第二弾を企画しました。《夕べの祈り》で声楽の取りまとめにあたられ、自らも水際立ったテノールを披露された櫻田亮さんのご協力を得て、勇気百倍です。
 今回取り上げるのは、小編成のアンサンブルによる宗教声楽曲と、世俗マドリガーレです。両分野における珠玉の作品、ヴァイオリンを伴う親しみやすい作品を厳選しましたが、前半は聖母マリアへの賛美、後半は愛の神との葛藤をテーマとして、初期バロック特有の『愛の二態』を描き出そうというのが、プログラムの構想です。エキスパートの仲間たちが集まってくれました。私は字幕と解説で応援したいと思います。」

作品は、前半が《サルヴェ・レジーナ》《マニフィカト》など5曲、後半が《ニンファの嘆き》《西風が帰り》など7曲。演奏はモンテヴェルディ・アンサンブル。メンバーは声楽が阿部雅子、渡邊(西村)有希子、上杉清仁、櫻田亮、谷口洋介、小笠原美敬。器楽が天野寿彦・渡邊慶子(ヴァイオリン)、平尾雅子(ガンバ)、渡邊順生(チェンバロ)。全席自由、前売り4000円(当日4500円)です。めったに無い機会ですので、ぜひぜひお出かけください。コメントでご予約くださっても結構です。アドレスをご記入くだされば、ご連絡を差し上げます。

旅行記補遺--ドイツの鉄道2013年07月11日 23時54分52秒

今回もずいぶん鉄道を利用しました。その感想です。

昨年はお仲間の方々とジャーマン・レイルパスを購入して便利をしましたが、今年は、予算を計上してあったにもかかわらず、購入しませんでした。それは、既述の通り、自動販売機が進化したためです。たくさんの項目を選択するようになっているので最初は面食らうと思いますが、目的地、等級、列車の選択など必要事項はわずかなので、慣れれば便利に使えます。窓口はたいてい行列になっていて、時間がかかります。

優さんから、カードを使ってトラブルが起こったという書き込みがありましたね。私はすべて現金を使い、問題ありませんでした(どの紙幣が使えるか、画面で指示されるので注意する必要あり)。チップに必要な小銭作りにも、自販機が役に立ちました。自販機は乗り継ぎも指示してくれますが、その場合は書き留めておかないと、あとでわからなくなる可能性があります。

かならず一等車がついていますから、余裕のある方には、利用をお勧めします。二等車が混んでいても、一等車はガラガラで、気兼ねせずに済むからです。ひとりで何人分もの席を占領している人など向こうではざらですから、割り込む勇気のない人は、一等車です(笑)。

一等車には、「静かな席」という区分があります。それは、ケータイ禁止のゾーンです。ということは、ケータイを許容しているということですね。しかし全員がケータイ/スマホとにらめっこ、という風景は、ドイツではお目にかかりませんでした。

最大の感想。それは、ドイツの列車は遅れる、ということです。ドイツ人はきちんとしているから遅れない、と思う方もいらっしゃるでしょうが、少なくとも旧東は、全部遅れると思ってください。マクデブルクからツェルプストに行ったときなどは、女性車掌がホームで話し込んでいて、5分後に悠然と発車する光景を目撃しました。

遅れるとどうなるか。出たとこ勝負で、発着ホームが変わるのです。ふと気がつくと、ホームで待っていた人が誰もいない。来るはずの列車が離れたホームに停まっている、ということが起こります。この臨機応変は、旅行者には大敵です。

ロストックからベルリンに戻るときには、自販機で買った切符の乗り継ぎを窓口で確認し、プリントアウトしてもらった時間割で、列車に乗りました。シュヴェリーンと、ルートヴィヒスルストで乗り換えることになっていました。ロストック~シュヴェリーン間でまず遅れが発生し、乗り継ぎ列車のホームが直前に変更されて、別のホームへと急ぐ羽目に。そうしたら、目前でドアが閉まってしまったのです。ショックを受けましたが、発車ではなかったので、開いて乗ることができました。

この列車からは、ルートヴィヒスルストで、ICEに乗り換えることになっていました。しかし時間割を見ると、乗り継ぎの時間が4分しかないのです。しかし列車は、10分以上遅れている。これはまずい、と焦り始めたときに、検札の女性車掌がやってきました。

私が乗り継ぎは大丈夫か、と尋ねると、ダメだ、この列車は遅れている、というのです。ICEが遅れている可能性もあるのではないか、と言うと、いや、それはない、というキッパリ返事。乗り継げるというから買った切符だ、それならルートヴィヒスルストで降りて次の列車に乗るべきか、この鈍行に乗り続けるべきか、と尋ねたところ、どこかに電話をかけ、「非現実的な乗り継ぎだ」云々と、強い口調でしゃべっています。結局、乗り継げる列車はないので、このまま鈍行でベルリンまで行くべし、という話になりました。夜の10時着が、11時になってしまう。一応「すみません」という言葉は出ましたが、実感はこもっていませんでした。

あきらめて、窓からルートヴィヒスルストのホームを眺めていました。乗り継ぎ時刻より、15分遅れています。するとホームがあわただしくなり、なんとICEが入ってきたのですね。もちろんあわてて荷物をまとめ、乗り換えました。このように、遅れるから困ることもあれば、遅れて助かることもあるのが、ドイツの鉄道です。

こういうところで過ごしましたので、戻ってきた日本が、別世界のようです。すべての列車が、事故のない限り正確に運行され、そのために、万全の配慮が払われている。秩序の維持も行き届いており、日本人はなんと優秀なのだろう、と心から思った次第です。

まつもとバッハの会コンサート報告2013年07月14日 23時44分49秒

7月7日、七夕の日に、松本で手作りのコンサートを開きました。ご尽力いただいた方々への感謝を込めて、ご報告申し上げます。

今回は、「バッハの仕事場を覗く」と題する、6回シリーズの最終回。連続講演をコンサートで締めるというのは、つねに理想的です。関心と問題意識を共有してきた受講生の方々が聴衆となって、熱い感動で盛り上げてくださるからです。講演とコンサートでは本来予算が大きく異なるため、三方一両損のような形で実施せざるを得ないのですが、その手作り感が、かえってコンサートの魅力ともなっているように感じられます。

今回は、オール・バッハのプログラムとし、古楽器、アンサンブル、カンタータという3本の柱を立てました。準備はチェンバロの調達から始まりますが、穂高クラヴィーアさんから楽器の準備、運搬、調律まで丁寧なサポートをいただき、広沢麻美さんの優雅で潤いのある響きが会場を満たして、コンサートは始まりました。曲目はフランス組曲の第5番です。


まず印象づけられたのは、会場となった深志教育会館(私がステージから転落したところ!)の響きと品格が、古楽器にまことにふさわしいこと。地元の名手、塩嶋達美さん(この方がいらっしゃるのでコンサートができます)のフルート・ソナタホ短調も、若手ガンバ奏者品川聖さんの協力を得て、アンサンブルの魅力を発揮しました。


予算上、声楽はアルト(高橋幸恵さん)に絞り、カンタータのアリアを歌っていただくことにしました。調べてみると、アリアの名曲はオブリガートの大半がオーボエ・ダモーレです。尾崎温子さんに実力を発揮していただくには、絶好の場ができました。


もちろんフルート、ガンバも使って、多彩なオブリガートを組みました。


右上のトンボが、松本深志高校の校章です。アリアには、時間をかけて字幕を用意しました(中央のスクリーン)。ところが、歌が始まるとお客様の視線が高橋さんに集中してしまい、字幕は無用の長物に(笑)。操作しているまさお君も、おそらくは無用の長物でした。人気を集めた高橋さん、バッハへの適性を感じさせました。


アンコールの一部として、当日演奏された曲からリクエストしていただくことを企画しました。おそらく、演奏効果に富む第214番のアリア(《クリスマス・オラトリオ》のフルート付きテノール・アリアの原曲)が選ばれるだろうと思っていたのですが、支持が集まったのは意外や、死を瞑想する長大な第125番のアリア。深く聴いてくださったんだなあと、感動。演奏がよく準備されていたことは確かですが、「お客様から力をいただく」形ができていたことも、確かだと思います。最後、《ゴルトベルク変奏曲》最後のアリア(広沢さん演奏)が「魂鎮め」として深い余韻を残し、コンサートが終わりました。

帰りの列車が、「鹿と先行列車が衝突して救出に手間取っている」という理由で1時間40分遅れ、ツキの余剰分をしっかりお返ししました(笑)。