《マタイ受難曲》、感動の富山初演(5)2015年02月28日 23時50分01秒

目の色を変えて字幕の操作をしていたわけなので、演奏について、観察者としての報告をすることはできません。しかし、ひしひしと迫ってくるものがあったことは、間違いないです。終始ひたむきな演奏で、一体感があり、作品に向かう姿勢が、一貫して貫かれていました。誰がどうというのではなく、全員が等しく演奏に貢献していたという感じがあります。たいてい、あそこはよかった、ここはちょっと、という感想になるものなので、これは珍しいことだと思いました。

この真摯な一体感はなにより、アンサンブルを代表として牽引され、自らエヴァンゲリストを歌われた東福光晴さんの献身的ながんばりに由来する、というのが、衆目の一致する事実のようです。堂々たるイエスを歌われた佐々木直樹さんらの声楽、古楽器のガンバから朗々たる響きを引きだした平尾雅子さんらの器楽など、皆さんが、ベストを尽くした演奏でした。津田雄二郎さんは、沈着冷静に要所を押さえ、音楽としてのステイタスをしっかり確保してゆく、プロの指揮。曲ごとのつながりと流れを重視されたことが大きな効果を挙げており、コラールの表現もつねに内容に即していて、感心しました。

往復に乗った「はくたか」号は、新幹線の開通と共に廃止されるとか。いいタイミングでの、富山旅行でもありました。最後にホール近くの公園で撮った北アルプスの写真を載せますが、あいにく夕闇が迫っていて、この程度です。富山の方々、ありがとうございました。



コメント

_ T ― 2015年03月02日 13時32分18秒

初めて投稿させていただきます、バッハアンサンブル富山のTと申します、
レセプションで先生のご著書にサインを頂戴した者です。
リハーサルの時の先生の笑顔や、
本番前、舞台袖で聴かせていただいた先生のプレトークにも励まされ、
歌っている間中、とても充実した時間を過ごすことができました。
その間、先生が字幕操作で大変な思いをなさっていたとは・・・
しかし、聴きに来てくれた知人からも、
字幕があってとてもわかりやすく、楽しめたという感想をいただいています。
本当にありがとうございました。
3月の新幹線開通で、東京からの交通の便も良くなりますので、
またぜひお越しください、お待ちしています。

_ I招聘教授 ― 2015年03月03日 11時27分48秒

新幹線で富山ファンが増えるといいですね。また伺うのを楽しみに。

_ 縄文 雅use ― 2015年03月04日 05時51分25秒

  今回の演奏会で先生が一体感を持たれたのは、たぶん字幕に関わって下さったからだと思います。指揮者と出演者と字幕者が渾然一体となって有機的に結びついたので、今回の演奏会が素晴らしいものになったのでしょう。

 我が団の代表について言えば、牽引していると言うより一人で突っ走ってしまうので皆でブレーキをかけて抑えている感じですが、B.E.T.(バッハアンサンブル富山)は、B.B.B(バッハ、馬鹿、ばっかり)集まった不思議な団体であり、毎週の練習と共に年に1回演奏会をする事を楽しみにしています。

 ただ、演奏会が良かったと言う事は演奏が上手だったと言う事だけではなく、バッハが当時の聴衆である隣人に伝えたかった癒しと励ましのメッセ-ジを一人一人が受け取り、信者ではなくてもおのれを浄め,俗を追い出し、イエスを心に受け入れるようになること(第65曲)が大事だと思っています。そう言うメッセージが込められているからこそ、バッハの曲は神道と仏教の日本でも普遍的に愛され歌われているのではないでしょうか?

 先週、能越自動車道路が七尾まで開通したので、高山右近が晩年過ごしたらしい七尾の本行寺へ行ってきました。バテレンが追放されてからも真宗王国の北陸でキリシタンが潜んでいた事も驚異ですし、千利休の茶の湯にキリシタンが影響したとも言われています。富山は金沢に比べて地味ですが逆に観光地が近く便利で生活はし易いので、この恵まれた富山でバッハを歌いながら仏教と交わり、神仏の栄光に満たされる事を願ってやみません。また、高岡にも泊まりにいらして下さい。

_ I招聘教授 ― 2015年03月04日 08時14分13秒

メッセージが伝わったからこそ、というのは本当にそうですね。仏教を大切にしながら高山右近の存在によってキリスト教も浸透していたという土地柄のお話を伺い、たいへん興味深かったです。富山だからこその発信、ということでしょうか。

_ 杉本 ― 2015年03月11日 23時38分39秒

合唱団員としてバスを歌っていました。アルトのアリアSehet, Jesus hat die Hand あたりから終曲へ向けて一つのアリアが終わるごとにイエスの贖いによって魂が浄化されていくような展開を味わいました。
マタイ受難曲は25年間CDで頻繁にきいていたのですが、まったく理解していなかったのだと思います。演奏に加わったことでようやく作品がすこしわかったような気がしています。先生の6月の講演がなければ、美しいアリアがたくさんある大曲という印象でやり過ごしていたと思います。ありがとうございました。Lebet, lebet, sterbet のところは本当にいいですね。
バスパートなので前半終曲ではゴルゴタの丘に輝かしくそびえ立つ十字架を描くつもりで歌いました。本番では終曲になってもずっと冷静でいたのですが、なぜか冒頭曲のリピエーノが歌うコラール旋律だけは練習中からうるうるきてしまいました。

_ I招聘教授 ― 2015年03月12日 12時11分23秒

いいご感想をありがとうございます。演奏に参加して初めてわかることも少なくないということですね。文章から、作品が伝わってきます。

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