足が映る2015年03月23日 15時25分58秒

連休の週末は、大阪と郡山でした。21日の春分、そしてバッハの誕生日は、いずみホールで、バッハのオルガン全曲シリーズその6。案内役を円滑にこなすためにはリハーサルをまるごと体験しておく必要がありますので、朝の5時45分に家を出ました。新幹線も新大阪駅も、相当な混雑でした。

多くのお客様に来ていただいているこのシリーズ。今回は完売で、大入り袋が出ました。オルガニストは、リューベック聖マリア教会のオルガニスト(=ブクステフーデの後継者)、ヨハネス・ウンガー氏、まだ30代の方です。

今回はハ長調を中心としたプログラムで、ペダルが活躍します。ウンガーさんが「いいプログラムですね、ヴォルフさんが作られたのですか」とおっしゃるので、僭越ながら「私です」と返答。ウンガーさんによれば、ハ長調はオルガンが美しく響く調であることに加え、オルガンの最低音を響かせられるので効果が大きい、とのことです。なるほど、ペダルの活躍は、ハ長調と無関係ではないのですね。

ペダル演奏はどこからも見えませんので、今回特別に、足の活躍が映し出されるスクリーンを設置しました。ツマ先やかかとまで駆使されるその秘術は、たいへん面白い見物。同時に、音楽が、とてもわかりやすくなります。ペダルを見ることでバス・パートの動きを耳がキャッチすることになり、音楽の成り立ちが手に取るようにわかるからです。後半に演奏されたドイツ語テデウムBWV725に、その効果がとくに発揮されたと思います。

この曲は、古来の旋律に和音を付けるだけで10分ぐらい演奏する、めずらしい趣向のもの。ばくぜんと聴くと退屈になりかねませんが、バスを意識することによって、変化する和声の面白さが逐一伝わってきたのです。これを受けて、演奏効果という点ではバッハのオルガン曲中1,2を争う《トッカータ、アダージョとフーガ》が大きな盛り上がりで演奏され、客席は最高潮に。アンコールとして《G線上のアリア》の演奏されたことが、よきサービスとなりました。

心に残るコンサートはいくつもありますが、今回ほど、周囲のお客様からたくさん声をかけていただいたのは初めてです。先の長いシリーズなので、この調子を保っていきたいと思います。好評の「足が映る」装置、今回だけと思っておりますが、ご要望もあり、迷うところです。左、ヨハネス・ウンガー氏。




不思議な光景2015年03月26日 08時02分44秒

日曜日は郡山へ。{ウィーン・フィル&サントリー音楽復興祈念賞」の委員をしていますので、助成を差し上げたコンサートを聴き、贈賞セレモニーに出席するのが役割です。

対象は京都フィルハーモニー室内合奏団のコンサート。「音楽でつながろう!福島~京都~ウィーン」と題されています。この日のために、ウィーン・フィルから5人のメンバーが来日しました。朝着いてリハーサル、翌日コンサートを終えて空港へ、という超過密日程だそうで、重要公演の合間を縫って飛んできてくれたのには、驚くやら、感心するやら。演奏における存在感、被災地への激励効果も、並外れたものでした。

後半、《第九》の第4楽章には、地元郡山の中学生が、声楽、器楽の双方に、大挙出演しました。いかにも日本的な、おとなしい少女たち(少年もいます)ですが、演奏レベルはたいしたもの。音楽で出会う、つながるというのはこういうことなんだなと思い、不思議の感に打たれました。

ただ往復するのはつまりませんので、宇都宮で下車し、餃子を正味。新幹線に乗り直すと、なんと同じ車両の同じ列に、いつも仕事をご一緒している作曲家の西村朗さんがおられるではありませんか。一駅の間談笑しましたが、こういうことが起こること自体、福島県が音楽王国であることの証明だと思います。

勝ち負け2015年03月28日 10時41分28秒

勝負事が好きな性格は昔からですが、将棋も、勝ち負けにこだわって見ています。最終第7戦までもつれ込んだ王将戦では、郷田真隆九段の強さに感嘆。棋王戦で羽生さんを3連勝で退けたキレキレの渡辺王将を、がっぷり四つで寄り切ってしまったのですから。長考で強靱な構想をまとめ、それを貫いていくという、意志的な将棋と拝見しています。

イケメンと呼ばれる郷田さんですが、口べたというか、ずいぶん控え目な方のようですね。44歳での王将は初めてと言われてびっくり。最近では、40代の男性が子供のように見えますので(笑)。

勝ち負けと言えば、大塚家具の「骨肉の争い」も、社長様の抜きんでたイメージに惹かれて、ずっと見てしまいました(笑)。それあればこその、あれだけ大量の報道でしょう。テレビのコメンテーターなど、ぴったりではないでしょうか。教訓として、かねてから思っていたことを再確認しました。それは、一方的な批判は応援を増やすよりは減らすものであり、その傾向は感情的なものになればなるほど加速する、というものです。

そして、プロ野球!私はCSで全試合が観られる体制を採っていますが、1チーム命というわけではないので、チャンネルを回すのが忙しい。でもそれだと、試合をじっくり楽しめませんね。昨日の勝敗には納得していませんが、まあ、これからです。

今月の空き時間は、モーツァルトのピアノ協奏曲の研究に注いでいました。日曜日の講演が、ピアニストの方々相手であるためです。モーツァルトと言えば、ヴォルフ先生のモーツァルト本の翻訳を宣言していますよね。共訳をお願いした越懸澤麻衣さんのがんばりで、早くも日本語が上がってきています。なにぶんの名著なので、早く皆様にお届けできるよう、時間を見つけて取り組みます。

4月のイベント2015年03月30日 14時42分17秒

4月のご案内です。新年度に入りますが、今年の大学出講は、聖心女子大、ICU、國學院大學の3つ(1つ増えました)。4月からさっそく、聖心(月)と國學院(木)が始まります。テーマは、聖心が「聖母マリアの音楽史」、國學院が「オペラの歴史」(前期)です。

朝日カルチャーは継続です。新宿校は隔週水曜日。「ワーグナー徹底研究」(10:00~1200)は3月から《マイスタージンガー》に入っており、1日は第1幕の2回目、15日から第2幕となります。「リレー演奏で楽しむバッハ」(13:00~15:00)は、1日が管弦楽組曲第2番、15日がカンタータ第140番《目覚めよ》です。横浜校は第4土曜の13:00~1500で、モーツァルト講座の継続。今月は28日。テーマは「最後のピアノ協奏曲と子供の歌」です。

早稲田大学エクステンションセンターの中野校で、計5回のバッハ講座をもたせていただけることになりました。タイトルは「バッハの仕事場を覗く」。毎週木曜日の15:00~17:00、23日から始まります。テーマは23日が「自筆楽譜は何を語るか」、30日が「バッハの環境、バッハ家の伝統」です。どうぞよろしく。

楽しいクラシックの会(たのくら)も、新テーマ「オペラ・プロジェクト」になります。18日(土)10:00~12:00は「21世紀の《オルフェオ》」と題してモンテヴェルディをやりますが、2ヶ月かけて1曲を扱い、違う映像を見たり、詳しいお話を加えたりする余裕をもとうという計画です。

すざかバッハの会(長野県須坂市)は、新年度のワーグナー企画がすでに始まっています。26日(日)14:00~16:30(須坂駅前シルキーホール)は、《タンホイザー》を取り上げます。

有名ですがご縁のなかった「モーツァルト協会」からも、講演の機会をいただきました。17日(金)14:00~16:30が全3回の第1回で、最近研究していたピアノ協奏曲をテーマにお話しします。5月、6月と併せて、このジャンルの全貌を浮き彫りにできたらと思います。今月は、幼児期の試みから話を始め、ザルツブルク時代のコンチェルトを取り上げる予定です。お申し込みは以下へ。日本モーツァルト協会 Tel(03)5467-0626 Fax(03)5467-0466  info@mozart.or.jp