音楽祭の格2015年08月02日 07時08分36秒

ワーグナーの映像も数は増えてきましたが、かならずしも厳選されておらず、日本語がめったに付いていないのも残念。しかし少しは見ておかなくては、ということで、グランドホーン音楽祭2011の《ニュルンベルクのマイスタージンガー》を買ってみました。演奏はウラディーミル・ユロフスキ指揮のロンドン・フィル、演出はデイヴィッド・マクヴィカー、ザックスはジェラルド・フィンリーが歌っています。

これが予想をはるかに上回ってすばらしく、すっかり感心。客席1150という劇場なので本来ワーグナー後期には小さすぎるはずなのですが、それを逆に生かし、スリムな編成とじつに芸の細かい演出で、室内楽的と呼びたいほどにクリアなステージを作り上げているのです。

見た目にも耳にも細部までしっかり完成されていて、統一性がある。これはかかわった人個々の能力の総和という以上に、音楽祭の伝統であり格というべきではないか、と思います。私、まだ行ったことがないのですけれど。

歌い手たちがひじょうによく勉強していて、空間に合わせた声(!)で歌っています。そう、これなんですよね。ワーグナーだからいつでもどこでも大声で、という根強い思い込みを一から見直しているのには、脱帽。新奇なことをやっていないのに、これまで見たこともない新鮮な《マイスタージンガー》だ、という印象が与えられます。これは、参考になる事実ではないでしょうか。

ザックスが「心配性」と呼びたくなるような奉仕型の人物に造形されていることには若干違和感がありましたが、これも主張でしょう。オーケストラがたえず感興をたたえてとうとうと流れているのもよく、すっかり気に入りました。日本語字幕、欲しいですね。

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