今月のCD2015年12月28日 08時37分37秒

いつも月末にやっているこのコーナーは、毎日新聞の特選盤コーナーのために選んだものを、少し幅を拡げてご紹介しているものです。原則、送っていただいている国内盤の中から選びますが、世に広くお薦めするものなので、好事家向けのものや、入門的なアルバムは避けています。レパートリーや演奏者はなるべく散らしていますが、選者が3人いますから、古い方を少し厚くさせていただいています。

自分の選び方を観察していて思うのは、新しいコンセプトで取り組む演奏家に共感する度合いが高い、ということです。ただしそれは新奇を求めるという意味ではなく、作品の本質に迫るために過去の常識をカッコに入れ、独自の探究を通して、作品を新しい光の下に提示するということです。

そんな観点から、二度目になりますが選んだのは、クルレンツィス指揮、ムジカエテルナによるラモーの《輝きの音》。同時発売で《春の祭典》のめざましい演奏がありますが、ラモーにしたのは、《春の祭典》を選んだことが過去に複数回あることと、ラモーのオペラこそ、これから輝くべき作品群である、という思いからです。

これはラモーのオペラ・バレから舞曲を並べて構成したもので、上記の「入門的なアルバム」に該当するのですが、アリアも上手に挟まれていて密度が高く、じつに見事な「いいとこ取り」になっています。ここから、たとえば前に月に出たビション指揮の《カストールとポリュックス》全曲盤に進まれるのも、いいプランです。

対抗馬として考えたのは、イーゴル・レヴィットが、《ゴルトベルク》、《ディアベリ》、ジェフスキ《不屈の民》の3変奏曲をセットにしたもの(同じくソニー)。こんな大きな企画をこなすほどに、進境著しいという印象を受けます。「どれもが骨太の構成力と現代感覚によって貫かれ、自分の音楽になりきっている」からです。

《ゴルトベルク変奏曲》のラッシュが続いていますが、瀬川裕美子さんの録音も楽しめました。演奏にもエッセイにも、多彩なイメージが豊かに詰まっています。