今月の「古楽の楽しみ」2016年03月03日 18時16分00秒

今月は、バッハの《マタイ受難曲》です。この番組7年間やって来ましたが、《マタイ》を通して取り上げるのは初めて。このところ初稿の演奏・録音が盛んなので、初稿BWV244bをメインにしてみました。ちょっと、凝りすぎたかもしれません。

7日(月)は、リチャード・エガー指揮、エンシェントの2014年新録音で、第1部のゲツセマネの園の場面(第20曲のテノール・アリア)まで。エヴァンゲリストのギルクリストとアルトのコノリー、いいですね。その前に、ヤーコプス指揮(2012年)で、改訂稿の冒頭合唱曲を聴きました。

8日(火)は、同じエガーの演奏で第1部最後まで。初稿は短いコラールで終わってしまうので、ヤーコプス盤で第29曲を補いました。この曲、本当にいいなあと思うようになっています。

ここで演奏をシーモア~ヨークシャーの2013年に変え、第2部の第30曲から第40曲までを。これはリフキン方式によるもので、ソリストを2グループ使っています。

初稿は、第2部最初のアルト・アリア(30)がバス・アリア(!)になっているのが驚きです。そこで9日(水)は、30をアルトでまず聴き直しました。演奏は2009年のクイケン(これもリフキン方式)、アルトはノスカイオヴァーです。それからシーモアに戻り、56のバス・アリア《来るのだ、甘い十字架よ》までを。初稿はリュート伴奏ですが、音型としてはリュートはぴったりです。歌い手がリュートにしっかり合わせなくてはなりませんが、ハーヴィーなのでばっちりでした。その後に、お馴染みのガンバ伴奏の稿を補いました。ガンバは弟の方のクイケン、バスはクラッベンです。

10日(木)は、シーモアの演奏を、〈ああゴルゴタ〉から最後まで。エヴァンゲリストのダニエルズが弱いのがかなり残念です。最後に、改訂版のゴルゴタ以降を、ヤーコプスからの抜粋で聴いて終わりました。

初稿は必ずしもお薦めできませんが、話の種に、どうぞよろしく。