日本の学会2008年02月13日 23時38分07秒

11日(月)には、日本音楽学会の全国委員会が開かれました。学会は東北・北海道支部、関東支部、中部支部、関西支部の4つに分かれて運営していますが、全支部の代表者が集まる会議が、年2回あります。そのひとつが例年この日に開かれるもので、新年度の活動について審議します。

宣伝を兼ねて、学会のお話をしておきましょう(詳細は学会のホームページをご覧ください)。会員の紹介があれば、どなたでも入会できる、開かれた組織です。年会費は9000円。最新の論文を載せた機関誌が年2回送られてくるほか、各支部の例会(研究会)、年1度の全国大会、内外の著名人を招いての特別例会などに参加できます。もちろん、そこでの研究発表に手を挙げることも可能です。

学会の機能は、音楽研究者同士の情報交換や親睦、イベントの開催といったことにあるわけですが、究極の存在意義は、「業績」を培う場だ、というところにあるのだと思います。研究者としてポストを得ていくためには、学会で研究発表をし、学術論文を積み重ねていくことが、どうしても必要です。それは、昨今の大学行政で、ますます強く要求されていることでもあります。

こう書くといかにも敷居が高いように思われるかもしれませんが、われわれは、そんなことは少しもないつもりでやっていますし、常に、新しい意欲的な研究を求めています。学会とは別のところで高度な研究をしておられる方のお力も、学会は、ぜひお借りしたいと思っています。とはいっても、学術論文として認められるためにはどんなことが必要か、ということも、私なりに申し上げるべきかもしれません。近いうちに、述べる機会を設けたいと思います。

なぜ5日間更新しなかったか2008年02月18日 12時58分29秒

他山の石としてお読みください。

始まりは、ゲーム画面のフリーズ。立ち上げ直し、Adobeのバージョンアップが終わったところで、Windowsが動かなくなりました。ウィルスにやられたな、と思い、「システムの復元」を一通りやってみましたが、全部ダメ。どうやら、再インストールしかないようです。

私は、XPがプリインストールされたパソコンをアップグレードさせる形で、Vista Businessを使っています。そこでVistaの再インストールを試みましたが、無限ループのようになって、画面が出てきません。仕方がないので、XPにダウングレードさせたところ、画面は出るが、最低の解像度しか出ず、ディスプレイも認識されていない。VistaとXPを往復してみましたが、同じことになります。

おそらくグラフィックスカードの故障、と見当をつけました。転んでもただでは起きないのが私の流儀ですから、この機会にレベルアップさせることにし、Ge-Force7600に代えて、8600を購入。画面は、みごとに復活しました。その後も、IEが止まってしまってダウンロードできない、XPにするとそもそも接続できない、といったトラブルがいろいろありましたが、ともあれ、根幹部分の再構築には成功しました。

しかし、その過程で、じつに恐ろしいことが起こったのです。再インストールをしては失敗するという行程を繰り返している最中に、何度かフォーマット付きのオプションを選択しました。当然、Cドライブをフォーマットしているつもりだったのですが、なんと、命より大事なDドライブもフォーマットされ、Windowsファイルの残滓が並んでいるではありませんか!血走った目でエクスプローラを見ると、不思議なことに、Windows関連のファイルのみという大きなドライブが、次にもうひとつある。これはなんじゃい、と思って調べてみると、なんとそれは、バックアップをとっている、外付けのハードディスクだったのです!!!これでは、家が火事になったのと同じではありませんか。

ブログを更新しようにも、メールが削除された結果、ID番号がわからなくなっています。今年になってからかなり環境の構築を進めていましたから、それを1からやりなおすのは大変。やっぱり、環境自体をバックアップしておかないとダメですね。もちろん、バックアップしたドライブをフォーマットしたのでは、意味がないが・・・。

え、それなのになぜ更新しているのか、とおっしゃるのですか?ブログの開始とほぼ同時期に、メールをG-Mailに転送して保存するようにしておいたのが幸いし、ID番号を見つけることができました。また、作成したファイルのうち主要なものは、ジャストシステムのインターネットディスクに上げていますので、セーフ。スケジュールも、グーグルに上げておいたものはセーフでした。

そんなわけで、しばらくは環境の再構築です(汗)。

本領発揮2008年02月19日 21時49分24秒

高貴なるおおぐま様、ご来訪ありがとうございます。充実したブログ、拝見しました。コメントのハンドルネームをクリックすると飛べますよ。

入学試験の帰り、同僚の先生方と、国立の名店、杏仁坊に寄りました。ちょっと不便ですが、たいへんおいしい中華料理で、大勢で訪れるのにも最適なお店。重宝に、使わせてもらっていました。このお店なくしては、私のオフ会は考えられません。

え?そのお店、つぶれないの、とおっしゃるんですか?帰り際に店長が挨拶に来られ、今月一杯で閉店されるとのことです。このお店までなくなってはどこに行ったらいいの、と、呆然と立ち尽くす私でした。これからは、皆様お薦めのお店に行くほかはなさそうです。

有田夫妻、神品のフルート・ソナタ2008年02月21日 22時21分07秒

ご案内した今年度の「バッハの宇宙」第2回レクチャー・コンサートが、14日の木曜日、相模大野グリーンホールで開かれました。「偽作の復権--フルート・ソナタの今」と題し、有田正広・有田千代子ご夫妻が出演されました。

1963年に新バッハ全集のフルート曲の巻(シュミッツ校訂)が鳴り物入りで出版されたとき、変ホ長調BWV1031、ハ長調BWV1033、ト短調BWV1020の、それなりになじみ多き3曲が省かれていたことに、当時われわれは(←私もフルートをやっていた)衝撃を受けたものです。それ以来、この3曲はレコード録音にもコンサートにもめったに登場しなくなりましたから、偽作のレッテルは、やはり重かったのでしょう。

真偽論争自体は、しかし尾を引きました。旧全集にも付録として載っているBWV1020はともかくとして、BWV1031、1033の2つは、息子のエマーヌエルが「J.S.バッハの作」として楽譜を遺しているのですから、バッハらしくないので偽作だよ、といって済ますわけにはいかないのです。

この2曲は、2004年に、駆け込みのような形で、新全集の本巻に含めて出版されました。ただしそれは、真作説が認められた、ということではない。重要なのは、次のようなことです。

新全集は、初期においては、真偽判定をしっかり研究して自作のみを収録し、それによって、バッハの音楽とはいかなるものかの輪郭をはっきりさせたい、という意向を掲げていました。しかし刊行と研究が進むにしたがって、バッハが他者の作品をたくさん筆写・演奏したこと、編曲をほどこしたものが少なからずあることがわかってきたのです。そしてその重要性が、認識された。たとえば、ペルゴレージの《スターバト・マーテル》にドイツ語歌詞を振った詩篇曲(BWV1083)がありますね。そうした曲もバッハ・ワールドに位置づけていかないと、バッハは正しくとらえられない、と考えられるようになってきたのです。疑わしきは排除せず--新全集半世紀の、認識の深まりです。

そこで、「偽作の復権」というコンサートを企画したわけですが、なにより、演奏がすばらしかった。音も技巧も桁違いの有田さんを、かつてはヴィルトゥオーゾのように思っていたこともあります。でも、今は違いますね。自分を抑制して、作品を生かす方です。それも、徹底している。BWV1031や1020は、フルートとチェンバロの右手が掛け合う、トリオの形で書かれていますが、その掛け合いが、今まで経験したことがないほど、絶妙に生きた。有田さんがフルート(モダン楽器使用)の響きを抑え、さらに抑えると、千代子さんのチェンバロが思いがけぬ強さと積極性で、輝く。そしてすぐ、その逆になる--そうそう、こうあるべき作品なのです。

有田千代子さんは、私の大学でも教えていただいていますが、平素はやさしく、控えめな方です。その方が気迫に満ちた、引き締った音楽を展開しておられるので、平素とはずいぶん違う印象だが、とマイクを向けてみました。すると、「バッハがそう求めていますので」との、驚くべきお答え。脱帽です。

チャペルでオルガンを2008年02月23日 07時29分11秒

「バッハの宇宙」、「偽作の復権」の次は「番外編」で、オルガン・コンサートです。青山学院大学相模原キャンパスのチャペル(横浜線淵野辺駅下車)にお邪魔します。出演者は同チャペル・オルガニストの筒井淳子さんで、下記のように、たいへん魅力的なプログラムになっています。楽器とその演奏法については、筒井さんにインタビューしながらご説明する予定です。

このコンサート、1000円という安さもあり、あっという間に売り切れてしまいました。しかし私の手持ち分に数枚、余りがあるのを発見しましたので、いらして下さる方、ご連絡ください(TX3T-ISYM@asahi-net.or.jp)。昼間です。お間違いなくどうぞ。

永遠の領域~オルガン音楽 2月27日(水) 13:00開演 ウェスレー・チャペル(青山学院大学 相模原キャンパス内) 曲目  トッカータ、アダージョとフーガハ長調BWV564  コラール《目覚めよ、とわれらに呼ばわる物見らの声》BWV645  トリオ・ソナタ第3番ニ短調BWV527  コラール《いと高きところにいます神にのみ栄光あれ》BWV662  パッサカリア ハ短調BWV582

松本清張2008年02月24日 22時35分50秒

推理小説が好きで、しばしば現実とミステリーを混同します。けっして幅広く読んできたとは言えませんが、絶対これ、と思うのは松本清張。長編はすでにほとんど読んでしまい、短編に読み残しがある程度です。歴史物は、何となく波長が合わず、ほとんど読んでおりません。

作家多しといえども、清張が群を抜いているのは、人間の悪意への洞察です。そしてそれを容赦なく文章にする徹底性、勇気。悪意を描くというのは、いい子になろうとする人には、絶対にできないことだからです。

清張は社会派とされ、社会の悪を描くところに本質があったかのように言われていますが、私は、個人の悪を描くことにこそ、彼の本領があったと思う。もちろん、それは社会の悪とつながり、混じり合って描かれるわけですが。悪いのは個人ではなくて社会だ、というような人権主義(?)は、清張にはないように思います。

その意味では、最初に犯人が登場し、だんだん犯罪が露呈して追い詰められていく、というタイプ(倒叙もの)の方が、未知の犯人を推理していくタイプより、ずっと面白い(と思う)。犯罪者の心理描写が中心に置かれるからです。悪意の変遷が追跡されれば、最後に犯罪を犯す、という形でもいい。主人公が大学教授ともなると、もう最高です(笑)。

というわけで私が推薦するのは、長編なら『落差』『黒い福音』『わるいやつら』。短編なら『カルネアデスの舟板』あたりかな。でも、学者、評論家、学会は、悲しいぐらい、ほとんど悪役です。ほんとは、そんなに悪い人ばかりじゃないんだけど(笑)。

CD選2008年02月25日 22時57分00秒

毎日新聞の夕刊に、「今月のベスト3」というCD選をやっています。その月に送られてきたCD(市販されるもの全部、というわけではありません)の中から新譜優先で3つ選び、軽くコメントする。評者は3人なので適宜分散されますから、私としては、日本人の演奏家のいいものに比重を置きながら選んでいます。

今月は、原稿を送る直前に、「たのくら」(楽しいクラシックの会)の例会がめぐってきました(16日)。候補が4つあり、3つに絞りかねていたところでしたので、会に持参して、少しずつ聴いていただいた。ひとり2票の挙手付きです。選考をゆだねたわけではありませんよ!ファンの方々がどう聴くか、興味があったのです。ちなみに「たのくら」には、筋金入りのクラシック・ファンの男性が、何人もおられます。

皆さん面白かったようで、目の色が変わりました。投票結果は私の個人的セレクションの順序とぴったり一致しましたが、これは気の合う仲間が集まっているということなのか、それとも私の洗脳が効いているのか(笑)。ちなみに1位はマゼール~ニューヨーク・フィルのラヴェル《ダフニス》第2組曲、ストラヴィンスキー《火の鳥》組曲他。2位はゼフィロのモーツァルト《ディヴェルティメント》。3位はエマールのバッハ《フーガの技法》です。マゼールって、78歳なんですね。とても信じられません。

講演をすると一所懸命説明モードになってしまう、ということを以前書きました。でも「たのくら」だけは別で、リラックスし冗談を交えながら、楽しくお話しできます。これはやっぱり、歴史の厚みのたまものでしょう。終了後はいつものデニーズで、宇宙の歴史や人類の進化をめぐる、理系の話に花を咲かせました(もちろん私は聞き役です)。

夜は、今年指導した大学院のクラスで、打ち上げ。オペラ科の論文指導が私の担当で、今年はソプラノが5人でした。みんな慣れない論文をよくがんばり、かなり、成果があった。「ドルチェ」の二次会で座が大きく盛り上がってきて、中腰になる人があらわれた。カラオケに行こう、というのです。

そこで、まだ看板だけはある「夢工場」(←かつてのオフ会で必ず流れていたスナック)に偵察にいってもらったところ、もうバーは店じまいして、歌唱指導教室になっているとのこと。ここもか。私のせいですね。そこで普通の店に流れ、久しぶりに歌いました。プッチーニを得意とされる方の歌唱力は、さすがにすごかったです。

《ワルキューレ》今昔2008年02月26日 23時38分54秒

ワーグナーの作品の日本初演には、けっこう立ち会っています。《ワルキューレ》のそれは1972年ですから、私は美学の大学院生。火の玉のような勢いの演奏に驚き、日本でもこれだけのワーグナーができるのか、と舌を巻いたことを覚えています。クールな渡辺護先生(←指導教授)も、「良かった!」と興奮しておいででした。

同じ二期会による、今年の《ワルキューレ》(2月20日)。初演時にブリュンヒルデを熱演した曽我榮子さんが公演監督になられたことに、時代の推移を、そして二期会の継続性を感じます。正式の批評ではないので、気楽に感想を。

第1幕は低調で、初演時の意気込みはもう過去のものなのかなあ、と思っていました。しかし第2幕の中程から、急激に盛り上がってきた。初演から36年を経て、飯守泰次郎さんにはいまや、大家の風格があります。作品を知悉した人が指揮を執っている、という安心感が、弾いている方にも聴いている方にもある。日本のワーグナー公演の、偉大なる中心ですね。オーケストラ(東フィル)も、重量感こそ未だしですが、正確に美しく弾けていて、安心できるレベルに来ています。8人のワルキューレたちのホールを揺るがすような声の響きにも、今昔の感を覚えました。

キャストでは、横山恵子さんの、凛とした正攻法のブリュンヒルデに、すっかり感心。小森輝彦さん(ヴォータン)には内面性がありましたし、小山由美さんの、知性と風格を備えたフリッカには、世界の水準を実感しました。

というわけで大いに楽しみましたが、6時に文化会館に転げ込み、全力で帰宅して12時過ぎ、というのはきつかった。バイロイトでは観客も1日がかりで取り組むわけで、作品の大きさが、日常生活の枠組みを超えているのです。それでも上演され、聴きに行くわけですから、さすが、超名曲。

山田耕筰のオペラ2008年02月27日 22時58分33秒

《ワルキューレ》から1日おいた2月22日、新国立劇場で、山田耕筰のオペラ《黒船》を観ました。日本最初のグランド・オペラとされる作品で、1940(昭和15)年に初演されています。太平洋戦争の始まる前の年、ということになります。若杉弘指揮、東京交響楽団による今回の上演は、序景付きの完全版としては世界初演にあたる、とのことでした。

ワーグナーのあとだし、単調かな、とも思って、勉強のために行ったのですが、どうしてどうして、たいへん面白かった。抒情歌あり、祭り囃子あり、民謡あり、尺八ありと変化に富んでいて、相当長いのに、聴き手を飽きさせない。とりわけオーケストレーションが秀逸で、さすがに山田耕筰は一流だったのだなあ、と再認識しました。

唐人お吉が主人公。釜洞祐子さんが、いつもながら役柄の化身となった熱演でした。舞台装置も美しく、いい公演でしたが、もっと明晰で、もっと自然な日本語を歌に乗せてほしいと、何人かの方にはお願いします。

これだけの作品がほとんど演奏されないのでは、宝の持ち腐れです。日本の作品に、もっと目を向けていきましょう。

どこへ行った?2008年02月29日 22時34分00秒

つい数日前、外付けHDを含めて全ドライブ初期化という快挙をなしとげた、不肖私。これを貴重な学習と割り切り、バックアップをしっかりする環境作りを始めました。メジャーどころのツールを導入し、まずCドライブをバックアップ。すぐDドライブに行ってもよかったのですが、中途半端な段階でやっても、と思い直し、データ・ドライブとしての再構築を優先することにしました。

三日前のこと。ゲームを立ち上げてみますと、キャラクター作りの画面が出ます。ん、育成したキャラはどこだ?見あたりません。メーラーを立ち上げてみると、入っているメールが妙に少ない。どうも変だと思って気がついてみると、な、なんと、Dドライブがなくなっているではありませんか。その代わり、なかったはずのEドライブという、広大な領域が出現しています(旧Dのファイルはなし)。

管理ツールから記憶域を調べ出してみると、C、Eの次に、未使用領域というのが出てきている。これが今は亡きDドライブなのではないかという見当を付け、名前を復活させました。ところが開けず、フォーマットを促されます。

どのみちフォーマットして数日のドライブですから、再フォーマットをしても傷は浅いのですが、再発防止のためにも、原因を知りたい。どなたかお教えいただけませんでしょうか。Dドライブ主義というやり方も『日経パソコン』で勉強しましたが、その利点は、Cドライブのトラブルに巻き込まれないことだったはずです。ドライブが丸ごとなくなってしまうのでは意味がないと、考え込んでいるところです。