古楽100%の《ヨハネ》 ― 2008年03月05日 23時46分15秒
2月25日、紀尾井ホールで、ヨス・ファン・フェルトホーヴェン指揮、オランダ・バッハ協会合唱団・管弦楽団による《ヨハネ受難曲》を聴きました。「合唱団」とあるが、リフキン方式により、「合唱」は4人のソリスト(コンチェルティスト)と、4人の補充歌手(リピエニスト)のみ。弦も1本ずつで、考えられるかぎりの小編成です。旧知のピーター・デュルクセン(オルガンを弾いていた人)による1724年初演バージョンが使われましたが、これはしっかりした研究に基づくものでした。
リフキン方式の可能性を探る意味でも注目した公演ですが、声楽・器楽ともにこれだけレベルが高いと、貧弱な感じは受けません。冒頭合唱曲も、抜けるように透明な協和音と鋭くきしむ不協和音の対比によって、立派に大きさを出していました。しかし追求されるのはあくまでも室内楽的なコンセプトで、きめ細かさ、統一性の高さは、たいしたものです。
ずらりと並んだ合唱団による演奏にはもう戻れないなあ、などと感心しつつ聴きましたが(客席も大いに沸きました)、にもかかわらず感動できないのはなぜだろう、という疑問も、ずっと心から離れませんでした。申し分のない、古楽様式。しかし主役は、「イエスの受難」ではなかったようです。
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