芸術への敬意2008年03月24日 23時07分01秒

3月12日、16日と、ヴィオラ奏者坂口弦太郎さん(N響)の出演が続きました。16日(日)のプログラムはシューマンの《アダージョとアレグロ》、日本の歌3曲、シューマンの2つの歌曲 op.91、そしてシューベルトの《アルペッジョーネ・ソナタ》でしたが、この方ならではの心にしみる音色と歌心にあふれたカンタービレを楽しみました。ヴィオラって、いいですねえ。

最近しばしば述べている「音楽には神様がいる」というテーゼに確信を抱くのは、こういう音楽に立ち会った時です。立川駅から離れた小さな公民館(地域学習館)の、体育館同然の講堂。ごくごくわずかな予算。ふらりと寄られた、地域のお客様たち。こうした条件にもかかわらず、坂口さんや、ベルリン在住のピアニスト元井美幸さん、アルト歌手の北條加奈さんがベストを尽くしたコンサートとやってくださるのは、やはり、音楽の神様に尊敬を捧げているからではないでしょうか。ありがたいことです。

芸術への敬意は、演奏家にとって、必ず必要なものです。そうしたものに欠ける人は、ヴィルトゥオーゾにはなれても、芸術家にはなれないと思う。研究にとっても同じことで、対象に対する尊敬がなければ、何のための研究かと思います。芸術に関する素朴な敬意は、どの分野でもいま、なくなりつつあるように思えてなりません。そうしたものを愚直に育てられないものか、と思案する昨今です。