手に汗握る体験談2008年04月10日 22時52分47秒

9日(水)は基礎ゼミ最後のイベント。皆様ご存じの大テナー、小林一男先生が「私のヨーロッパ・オペラ武者修行」と題する講演をなさいました。

小林さんが話題豊富な座談の名手であることは、私も先刻承知。企画者として唯一の不安は、話題が広がりすぎて時間内に収まらず、いいところで打ち切り、となってしまうことでした。まあそれでもくつろいだお話を楽しく伺えれば、と思い、開始前に控え室に挨拶に行きました。

すると棚の上に、原稿が乗っています。1時間半のお話が、すべて原稿化されている。そしてところどころに赤で、「10時59分」「11時13分」という1分単位の指定で、時間が書き込まれているのです。驚いて引き返した私が、手伝いに控えておられた中村敬一さん(演出家)にその旨を伝えると、その原稿は何稿目かのものだ、との由。準備に準備を重ね、時間の計測も繰り返して、このように練り上げられたようなのです。

ピアノの河原忠之さんを伴い、スカルラッティの軽妙なアリアを披露して始まった講演は、こなれた日本語で(←原稿が完全な話し言葉になっている)、背景写真も交えつつ進んでゆきます。途中、一度ブレイクがあり、代わりに登場された河原さんが、プッチーニ《マノン・レスコー》の間奏曲をピアノで演奏。むせび泣く弦合奏を聴くような、情感にあふれた演奏でした。続いてトスティの《四月》が、きめ細かな美声に情熱を込めて歌われ、後半のお話へ。終了が12時00分であったのには、あっけにとられてしまいました。

武者修行のお話は、波瀾万丈、手に汗を握りました。遠慮して失敗談ばかり話す方もおられますが、やはり学生に夢を与えるのは、苦労や努力の背景をたっぷり折り込んだ、成功談です。しかし、言わなくても済むような挫折の体験も率直に盛り込まれ、お話の幅を広げていました。

昔の写真よりずっとすてきな先生とワインを飲みながら楽しく語り、夜を過ごしました。

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