誕生日の心境2008年04月30日 21時38分54秒

今日誕生日を迎え、62歳になりました。

父がこの年齢の頃は、かなり衰えていたのではないかと思います。今はこの年でもそれなりに仕事ができるのですから、ありがたいですね。60代なんて、以前は想像もつきませんでした。しかし別の人生に入るような変化は、どうやらないようです。学生さんたちとの距離も、思ったほど遠くなった感じはしません。むしろ、対人関係は、楽になったように思います。

野心や欲は、前以上になくなってきました。好きなことを好きなようにやりたい、しかしやる以上は、自分に恥じない仕事をしていきたい、という心境です。できるだけ、正直でありたいと思います。

「腹を決めて」で触れた批評は、月曜日(28日)の毎日新聞夕刊に出ました。対象をぼかしていましたが、ザルツブルク音楽祭制作のオペラ《フィガロの結婚》です。ドイツ人演出家、クラウス・グートの演出は私にとって絶対に受け入れることのできないものでしたので、そのことをはっきり書き、理由を示しました。受け取り方はさまざまでしょうが、私自身は、さっぱりした気持ちです。ちなみにデスクの付けたタイトルは、「自らの着想に惚れ込む演出」というものでした。

そのことをここで再び論じることはいたしませんが、批評の最後の文章は私の信念に相当する部分なので、引用させて下さい。「こうした演出はたしかに、いま世界で脚光を浴びている。だが流行は、かならず古くなる。いつまでも新しいのは、ささやかであっても、まじめに本質を追究する営みである。そのようにモーツァルトに向かっている人は、私の周囲にもたくさんいる。」