古典の価値2010年10月21日 11時20分14秒

モンテヴェルディ《ポッペアの戴冠》の研究を進めるためにはセネカの研究が不可欠だと思うに至り、少しずつ始めています。

立川北駅(モノレール)そばにあるオリオン書房は近郊屈指の書店で、諸分野の全集など硬派の本を、広いスペースに並べています。そこからローマ古代やルネサンスに関する本をまとめて買ってきましたが、ローマ古代の文献は主として、岩波文庫の復刻から手に入れることになります。

セネカにしろキケロにしろ、ひもといて思うのは、先達の方々の翻訳が、じつに立派なことです。古代の書物の翻訳には多大の困難が伴うに違いありませんが、それらがみな、詳細な訳注とともに、わかりやすい日本語になっている。こういう仕事をされる方々は膨大な勉強を積み重ねておられるはずですが、時流に乗る性質のものではありませんし、年月をかけた成果も、大衆的な書物の洪水の中でアップアップしている、というのが現実ではないでしょうか。

翻訳というのはこういうものをこそやらなくてはいけないのだなあと思ううち、古典が忘れられていく知の現状を憂える気持ちが生まれてきました。