至福の2時間2011年11月20日 22時38分53秒

豪雨の土曜日。午前中立川の仕事を済ませ、お昼も食べないまま文京福祉会館に駆けつけましたが、そういう日は、いいことがありますね(←ツキの理論)。おそらく今年、もっとも濃密な2時間を過ごしました。

この日は、東京バロック・スコラーズ(指揮は三澤洋史さん)の主催で進行中の《マタイ受難曲》講座の2回目。日本の新約聖書研究の中心で、かねてから尊敬していた佐藤研先生に、聖書と受難についての講演をお願いしました。専門違いということでたいへん緊張され、謙遜される中でほほえましく始まった講演会。しかしすばらしい内容のお話であることは、すぐに明らかになりました。

短いレジュメの中にさえ膨大な研究の蓄積が垣間見えることは当然とも言えますが、なにより印象的なのは、識見が選びぬかれた言葉で、たえず良識の反省を含みながら、慎重に、正確に伝えられていくことでした。このようにして信頼性が確立されると、学術的な講演ほど面白いものはありません。後半ではご自身の最近のお考えを熱を込めてお話くださり、私も合唱団の方々も、イエスとその受難について、「目からウロコ」のように認識を深めることができました。《マタイ受難曲》のテキストに関する佐藤さんの私見も、じつに参考になるものでした。

福音書はなんと面白く、日本におけるその研究が、なんと進んでいることでしょう。お話を聞いていて涙の出ること再三でしたが、資料に公平な立場を採られる聖書研究者の方が学問と信仰をどう両立させているのだろう、というかねてからの疑問は、すこしわかってきたようにも思います。受難曲やカンタータを演奏される合唱団の方々、こんな勉強の機会をお作りになってはいかがでしょう。