進化した《ポッペアの戴冠》2011年11月28日 06時13分40秒

11月27日(日)、一橋大学(国立市)の由緒ある兼松講堂で、渡邊順生指揮、ザ・バロック・バンドによるモンテヴェルディ《ポッペアの戴冠》が上演されました。私が仕切った2つの公演(須坂、国分寺)の延長線上にあるものですが、今回私は直接関与せず渡邊さんにおまかせし、プレ講演2回と字幕、そして当日の解説のみを担当しました。

準備を覗いたのも、ゲネプロの第3幕だけ。したがって当日の気分にも一定の距離感があり、客観性をもって鑑賞したつもりです。しかしそんな眼で見ても、公演はすばらしかったですね。終演のステージに呼んでいただき、スタンディング・オベーションというものを初めて目の当たりにしました。一橋大学OBの力をお借りして今回大きな発展があり、ささやかな試みのように始まったものが、外に出せる成果に達したと思います。

発展の内容は、3つ。1つは従来省略してきたナンバーがかなり復元されて、ストーリーの生起を切れ目なくたどれる、全曲に近い形になったこと。とくに、アルナルタ(押見朋子)、ヌトリーチェ(布施奈緒子)の2人の乳母が喜劇的な彩りを添えたことが、オペラの世界をバランスよく広げたと思います。第2は、若手演出家の舘亜里沙さんが起用されそのスタッフが参加したことで、舞台面が引き締められ、効率的に進行したこと。もう1つは、器楽がずっと拡充され、2本ずつのコルネットとリコーダー、バロック・ハープ、3台の鍵盤楽器、ガンバに加えてのチェロの参加によって、初期バロックにふさわしい多彩な響きが実現できたことです。楽器のレベル向上は、本当に隔世の感があります。

iBACHの歌い手たち(阿部雅子、内之倉勝哉、高橋織子、湯川亜也子、安田祥子、葛西賢治、狩野賢一。あ、押見さんもiBACHです)も3度目ですから、習熟度が格段に高くなり、みな見事でした。加うるに、セネカに起用されたバス歌手、小田川哲也さんの歌唱が圧巻。この役柄の重要性がいかんなく示されました。初参加の櫻田智子さん、長尾譲さん、西村有希子さんもそれぞれ適役でした。

みんなが燃えたのは、つまるところ、作品がすばらしいからです。上演するごとに発見されるそのすばらしさには、ただ感嘆するのみです。