音量への疑問2011年12月12日 23時04分35秒

過去に、ホールの大小の別なくフル・ヴォイスで歌われる声楽家が多いことに、疑問を呈したことがあります。小さな空間では音量を抑え、その分、より繊細な表現を目指す選択肢はないのか、と。

そう思っていたところへ、考えさせられる新しい実例に遭遇しました。私の出かけたイベントは、ビルの小さな一室。蓋を外したスタインウェイが中央に置いてあり、お客様は、その時点で20人ぐらい。全部入っても、4~50人でしょうか。プログラムは現代曲でした。

登場されたピアニストは、上手な方でしたが、たいへんな力演。耳を聾するばかりのフォルテシモを駆使して、演奏されたのです。作曲者が自然に耳を澄まして作曲したはずの曲だということもあり、私は、スタインウェイが発する轟音に接しながら、考えこんでしまいました。小部屋にふさわしい、聴き手の耳にやさしい演奏を求めることはできないのか、と。

いくつかの筋道が考えられます。演奏はスタインウェイのピアノに対してなされるもので、その響きを最大限に発揮するべきものであり、部屋の大きさ、小ささは二次的なことである、ということだろうか。あるいは、ポピュラーのライヴや小部屋でさえマイクを使うような増幅全盛の世の中のしからしむるところとして、大方のお客様に、大音量の違和感はないのであろうか。

私はやっぱり、小さな部屋でも耳を澄まして音楽を聴く体験をもちたいと思います。これって古い感覚なんでしょうか。

コメント

_ はかせ ― 2011年12月13日 12時23分02秒

 私も、限界を越えた大音量による演奏は苦手です。アマチュアでは、どの楽器でも小さな音量で演奏できるのは上手な人だけというくらいのものです。
 演奏中に自分がどのくらいの音量を出しているか、バランスはどうなのかが、楽器によってはわかりくいように思います。多くの演奏者は、指揮者や共演者に注意されて自分の音量を制御するようになってきたのではないでしょうか。そういう訓練の結果、その会場での響きを推し量って適切な音量で演奏するようになっている人が多いと思います。でも、ピアノの場合は一人で弾く人が多いですから、注意された経験が少ないかもしれませんし、声楽のソリストも同じかもしれないと考えているのですが、いかがでしょうか。

_ I教授 ― 2011年12月14日 10時09分48秒

なるほどそれはひとつあるでしょうね。音量を身につけるというのは、楽器であれ歌であれ、プロになるための重要な道程です。その道をどんどん歩み、いつの間にか調節が効かなくなっている、というケースがありそうです。

_ 院で先生の音楽美学の授業を受けました。 ― 2011年12月16日 17時41分08秒

先生のこの記事を読んで、はっと思い出しました。
私が海外で受けたコンクールで、お部屋は小さいのに、大音量でガンガン熱く弾かれた方を。一刻も早く逃げ出したいような音楽だったのですが、終わってみたら、聴衆の大半が熱狂していました。審査員も皆喜んでおられました。
結果その人がWinnerでした。
私には本当にショックな体験でしたが、とても勉強になりました。プログラミングにしても、響きの調整にしても、非常に考えさせられました。

先生の、耳を澄まして音楽を聴くというのは私の理想です。
そのお言葉を大事にしたいと思いました。

_ I教授 ― 2011年12月17日 00時42分58秒

受けましたさん、情報ありがとう。私もこの話題をなにかと問いかけているのですが、ある方の曰く、ピアニストは学校の狭い練習室などで弾きまくっているので、狭い部屋で大音量というのには慣れているのだ、と。現実的には、そうかもしれないですね。

_ おおぐま ― 2011年12月17日 01時55分26秒

ピアノ弾きの中には、如何に大音量を出せるか=上手い、という人たちがいるようです。
確かに、それが必要な部分はありますが、如何に弱音で聴かせることが出来るか、というのも大切だと思います。
音量を落とすと、音楽が死んでしまう(表現が無くなってしまう)人も多いですよね。

_ N市のN ― 2011年12月18日 00時22分30秒

弱音のコントロールが出来てこそのフォルテだと思うのですが...
ピアノは単音では余程ブッ叩かない限り、差程うるさくないものだと思います。

やかましく聞こえるのは、バランスのコントロールが上手くいっていない場合で、たとえば縦に5つの音が同時に鳴っている場合それぞれの音を相応しい音量と音質で鳴らせば、(良い方を代えれば、相応しい倍音で)美しく響くと考えます。
またフレーズの中(横のバランス)も同様で、相応しい抑揚(時間的及び音質・音量のコントロール)で、その流れが自然であれば心地よく聞こえるものだと思います。うるさく聞こえるのは、性急で頂点のポイントが曖昧な場合だと思います。
つまり、縦にも横にも弱音のコントロールの中に肝になる音を生かすよう考えると良いと思うのですが...(すなわち抑制)

上手い演奏家は、楽器のすぐ近くで聴いていても全然うるさくないですよ(笑)

_ N市のN ― 2011年12月18日 00時37分44秒

補足させていただきます。
私が上手いと思う演奏家は、ソロだけでなく、リートの伴奏が巧みな人が多いです。

_ I教授 ― 2011年12月18日 01時02分59秒

すばらしいご意見ですね。本当にそうだと思います。伴奏が巧みということは、音楽が第一、ということですよね。たしかに、敬愛するピアニストの演奏は、私も至近距離で聴いて、まったく違和感がありません。

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