明暗2013年04月13日 23時55分11秒

古典をなるべく読もうと決心した流れで、夏目漱石の『明暗』を読んでみました。漱石は明治の人、という印象ですが、世代的にはマーラーよりちょっと後ぐらいになるのですね。文豪の誉れ高い漱石。でも私は、若い頃からなんとなく苦手に思っていました。久々の挑戦で自分がどう思うか、興味がありました。

最初は、別世界に触れるようで、とても苦痛。新聞小説のため区切りが短く、それを救いとして読み進めました。慣れるにつれて面白くなり、非凡さを実感。文章は用語法に古さを感じますが、会話はいまとそう変わりませんね。面白さは何より、心理描写、心理分析の徹底にあります。しかし妙に入り組んでインテリじみていて、さして共感は覚えません。このへんは、もちろん好みの問題です。

最後の小説で未完といえば、最前、カフカの『城』を読んだばかり。未完の作品が読まれ続けるというのも、興味深い現象です。音楽には補筆完成という手がありますが、小説ではそれができませんものね。読了後不完全燃焼のまま漱石の生涯をたどってみたら、胃潰瘍で何度も倒れる人生であったことを知りました。ここに至り、ようやく親近感が湧いてきました。もっとも私は十二指腸潰瘍で、現代医学の恩恵を受けられたわけですが。

〔付記〕水村美苗さんという方が続編を書き、賞も取っておられるのですね。知りませんでした。