啓発しあう二重奏2013年12月08日 11時19分28秒

6日(金)いずみホールにおける、シュタイアーと佐藤俊介さんのモーツァルト/ソナタ演奏会(ヴァルターのフォルテピアノとバロック・ヴァイオリン)。驚きの連続でした。

まず、若手ヴァイオリニストの中でもヴィルトゥオーゾである佐藤さんが、ここまで古楽の真髄に入ってこられていることにびっくり。音量も音色もフォルテピアノにぴたりと合わせ、徹底して、重奏を取りに行くのです。ザルツブルク時代のヴァイオリン・ソナタはまだ鍵盤優位ですから、フォルテピアノの弾く旋律にヴァイオリンが下をつけるということも多いのですが、佐藤さんは見事な抑制でその役割を果たし、シュタイアーを引き立てます。それは同時に、モーツァルトの音楽を引き立てるということです。

ヴァイオリンに主役が移ると、こちらも二倍集中して、耳を澄ます。両楽器を行き来するうちに必ず出てくるのが、両楽器が親密な対話をやりとりする部分。そこが、断然面白いのです。ヴァイオリンと鍵盤楽器がこんなに調和し、響きあい、相互に啓発しあう二重奏を聴いたことは、これまでありませんでした。ホ短調ソナタは本当に美しく、ニ長調ソナタのフィナーレには幸福感がありました。

音量は小さく、地味といえば地味なコンサートなのでしょうが、お客様の拍手は温かく、長く続き、伝わったものの大きさを物語っていました。

一般化できると思うのは、演奏において聴き合うことがいかに大切か、ということです。演奏の勉強をしておられる方は、相手を聴く、響きを聴くことのハードルを少しずつ上げていかれると、得るものが大きいと思います。聴いているつもりで聴いていない、ということも、よくありますので。

コメント

_ hajime ― 2013年12月08日 20時21分31秒

 〈ホ短調〉、まさに絶品でした! 〈ニ長調〉では、突っ走り気味のピアノをコントロールしていたのかも。すごい青年ですね。
 モーツァルトの「ピアノ+ヴァイオリン・ソナタ」を再認識し、堪能した一夜でした。

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック