今月の「古楽の楽しみ」2016年01月07日 23時49分05秒

今月は、バッハのカンタータ特集です。カンタータはおりおりやっていますが、なにぶん傑作の森ですから、やっていない曲の方がはるかに多い。たとえばもっとも有名な第147番は、温存しているうちに今に至ってしまいました。これが、今回の切り札。第182番も初めてで、既出の作品は第1番だけです。

147、182を含むテーマとして、「マリアの祝日」を設定しました。しかしバッハ時代のマリアの祝日は、計3日しかありません。1日足りないので、ヨハネの祝日を組み合わせることにしました。演奏は曲ごとに変え、なるべく新しいものを使います。カンタータの新しい録音は結構あるのに、国内では紹介されないままになっているからです。

11日(月)は、ヨハネの祝日用カンタータ。第167番をガーディナーで聴き、そこで使われているルターのコラール《われらの主キリスト、ヨルダンの川に来たり》をオルガンと合唱で取り上げた後、このコラールに基づく第7番を、ローランド・ウィルソンの新録音で聴きます。リフキン方式(ソリスト4人が合唱も担当する)による演奏ですが、そのシェアはますます増加しています。

12日(火)は、お告げ(受胎告知)の祝日用作品。第182番、第1番は、どちらも著名作に属するものです。第182番には、スイスのザンクト・ガレン・バッハ財団の演奏を使いました。ルドルフ・ルッツの指揮のもと、急ピッチで全曲録音を行っているグループです。そのきびきびした演奏は、一聴に値すると思います。第1番には、次世代のエース、ハンス=クリストフ・ラーデマン指揮のドレスデン室内合唱団とベルリン古楽アカデミーを選びました。これは2011年のライプツィヒ・ライヴです。

13日(水)は訪問の祝日特集。ここに第147番、そして第10番(ドイツ語マニフィカト)を置きました。第147番の演奏は、マグダレーナ・コンソートの最新録音です。バスのピーター・ハーヴィーが指揮を執り、エリン・マナハン・トマス、ダニエル・テイラー、ジェイムズ・ギルクリストというそうそうたる顔ぶれで、重唱(リフキン方式)が組まれています。「今」にふさわしい、いい演奏です。第10番は、ローラント・ビューヒナー指揮のレーゲンスブルク大聖堂聖歌隊で。ソプラノのリュデーンさん(←旧知なので)が、さすがの歌唱を聴かせてくれます。

14日(木)は、清めの祝日。一番有名なのは第82番ですが、それはもう取り上げましたので、第83番、第125番を選びました。演奏は第83番がBCJ、第125番がヘレヴェッヘです。これのみ1900年代の演奏です(とてもいいと思います)。両曲に出てくるシメオン・コラールを合唱とオル、ガンで聴きますが、オルガンにはヴァルヒャのモノラル録音を使ってみました。しみじみと心に迫ります。

どうぞお楽しみください。

コメント

_ 久美 ― 2016年01月09日 11時11分35秒

今回も勉強のため 心して聞かせていただかねばなりません。実は、白状しますが、今さらですが、バッハを聞いていますと「コラール」のことがいつもいまひとつわかりません。
何ですか?「アリア」「レチタティーヴォ」「コラール」みたいなひとつのジャンルですか?形式ですか?合唱ですか?賛美歌ですか?いったい何なんですか?(涙)もちろん「コラール」のところもバッハが作曲してるんですよね!?と、ふつふつ疑問(愚問)がつのります。先生からごらんになると、ほんと愚かでしょうけれど。好きなんです「コラール」、わからないくせにです。

_ I招聘教授 ― 2016年01月09日 21時14分04秒

「コラール」というのは、ドイツ語の讃美歌のことです。バッハ以前に作られたものですが(ルターも作っている)、ルター派の礼拝ではつねに使われますから、誰にも親しまれていたものでした。バッハはそこに和音を付けたり、装飾を付けたりして使っています。

_ 久美 ― 2016年01月10日 18時07分16秒

先生、ご親切にお教えいただきありがとうございます。疑問の霧がいくぶん晴れました。ルターは歌詞だけと思っていましたが作曲もしたんですね。「コラール」はみんなが歌えたっていうのはそういう意味なんですね。
明日からは4日間うれしい朝です。

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