シフ、神業の《パルティータ》 ― 2008年03月04日 22時24分34秒
いまいずみホール(大阪)で、アンドラーシュ・シフによるバッハ《パルティータ》全曲を聴き終わったところです。6曲を黙々と弾き続けて、終了9時半。満場熱狂の幕切れになりました。
9年ぶりの、シフの公演。《パルティータ》全曲ではチケットが売れないのではないか、と危惧するスタッフもいました。ところが発売即売り切れで、争奪戦の様相に。やはり皆様、よくわかっておられます。前半に第5番、第3番、第1番、第2番の4曲。後半には第4番、第6番が並べられ、わかりやすい第1番が、絶妙のタイミングで登場しました。シフの頭には全部の曲が完璧に入っており、配慮の届かない音符は1つもなかったと思います。
ピアノで弾くバッハの最高峰は、という問いに、現在ならシフ、と言下に答える私ですが、そのことが立証されるコンサートでした。《パルティータ》では、バッハ特有の線的ポリフォニーが、かなり複雑に絡み合います。そのすべての声部に、血の通った生命力がゆきわたっている。そして、端然と息づくポリフォニーの中から、思いがけない旋律が、音型が、花開くごとくに浮かび出てきます。さまざまな発見に満ちた、新鮮な演奏なのです。アーティキュレーションも理にかなっており、古楽の耳でも、違和感なく聴ける。構成力も卓抜で、曲尾のジーグが、《平均律》のフーガさながらに盛り上がりました。
自由度が最高に達した第6番が、当夜の白眉。こういう演奏を、ピアノの方々に、たくさん聴いていただきたいですね。ちなみにシフの足はペダルから遠く離れて置かれ、ただの一度も、そこに触れることはありませんでした。
コメント
_ <柴> ― 2008年03月06日 00時21分21秒
_ a_o ― 2008年03月07日 00時12分02秒
_ N市のN ― 2008年03月07日 06時58分36秒
言葉にできない、素晴らしい演奏会でした。
自由な線と線が紡ぎ出すアンサンブルの中から、豊かなハーモニーが流れ、常に心地よく自然に変化する演奏でした。暖かな風を感じたと思うと、涼しい風が吹き、又、上質な濃い味わいの後に、爽やかな口あたりのものが来る、といったように、人間が心地よいと感じる、普遍的な美の典型が2時間30分の間、絶え間無く流れていました。
あえて、ピアノの楽器の大きな武器である、ペダルを封印することにより、旋律の透明感を聴き手に強く印象付けると同時に、制約の中から、より強い緊張感を、与えていたように思います。
曲の順序もdur、moolと交互に配列するだけではなく、内容的な対比も面白かったです。3番から1番と2番の対比、4番と6番の対比等さすがでした。
最後に、本当に素朴な疑問が残りました。
何故あんなことができるのでしょうか?(笑)
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シフのパルティータですか。聴いてみたくなりました。シフのバッハのCDはほとんど持っているはずだと思ってひっぱり出してみると、これ1984年の録音なんですね。ほとんど四半世紀前ですね。最近の録音はないのでしょうか。これだけ経っていると、考え方もスタイルもけっこう変わってきそうですが、やはり演奏はかなり違うのでしょうか。
また寄らせていただきます。あ、後で別のところにもコメントさせていただきます。