ミケランジェリ ― 2009年04月25日 23時28分29秒
今月から、毎日新聞のCD推薦欄に、DVDが加わりました。まずCDから選び始め、ファビオ・ルイージ指揮、ドレスデン・シュターツカペレのシュトラウス・シリーズから、《アルプス交響曲》と《4つの最後の歌》を入れることを決定。《アルプス交響曲》は、かつては映画音楽などと言われましたが、とてもいい曲だと思います。アルプスの自然の描写力は卓越したものですし、登山と人生の重ね合わせには、いつも心に響くものを感じます。それ以上にこのCDでは、アニヤ・ハルテロスの歌う《4つの最後の歌》が、「広やかに幻想を湧き上がらせて」(←自分の引用)見事です。
これと、有田正広ご夫妻の「フリードリヒ大王の宮廷音楽」(浜松市楽器博物館の「クヴァンツ・フルート」を使ってもので、さすがの味わい)を決めた上で、DVDの選考に入りました。手持ちが少なかったので、立川のショップで購入。最後に残ったのが、ベネデッティ=ミケランジェリが1962年にイタリアの放送局で録画したライヴ「ミケランジェリRAI1962」でした。
ミケランジェリというピアニストにはもともとたいへん関心がありましたが、最晩年の実演の印象は、いいものではありませんでした。閉鎖的、という一語に尽きるように思われ、周囲からは、人間性を喪った演奏だ、という批判もきこえてきました。
で、久しぶりに、画面で全盛期のミケランジェリと対面。ベートーヴェン、ショパン、ドビュッシーがまとまったアルバムで、分売もされています(デノン)。
いや、すばらしかった。最初のベートーヴェンの最後のソナタは若干違和感がありましたが、あとは、ピアノの通念をはるかに超える名演奏が並んでいます。「信じがたいほどの透明な響きで本質のみを弾くことにより、すべての作品が、端正な古典へと高められてゆく」(引用)。ベートーヴェンの巻に収められたガルッピ、スカルラッティが最高だと思いますが、ショパンの、感傷をいっさい省いたアプローチからかえって引き出される高貴な悲しみにも心を打たれました。本当の芸術家だと思います。
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