後奏を聴きましょう2010年03月06日 11時37分25秒

「国立音楽大学×サントリーホール オペラ・アカデミー特別公演」と謳った《コジ・ファン・トゥッテ》、とても良かったと思います。管弦楽、合唱、裏方の学生たちはすごく勉強になったはずですし、公演自体を楽しまれた方もたくさんおられたことでしょう。

さて、当夜のキャストは、文屋小百合(フィオルディリージ)、小野和歌子(ドラベッラ)、折河宏治(グリエルモ)、櫻田亮(テノール)、鷲尾麻衣(デスピーナ)、増原英也(ドン・アルフォンソ)というものでした。6人とも、とても良かった。独走する人はひとりもなく、一定の抑制を利かせた上でアンサンブルを取りに行っていて、それぞれの持ち場の責任を、見事に果たしていました。オペラ・アカデミーで、いい勉強をされたに違いありません。

彼らは本番へのカバーの歌い手なので、普通は、準備しただけで終わってしまいます。それがこのように公演でき、高い水準の力量を示し得たわけですから、彼らにとっても、本当にいい一夜だったと思います。おめでとう。

ところで、アリアや二重唱への拍手は、後奏が響き終わってからにすべきではないでしょうか。シューマンの歌曲には意味深長なピアノの後奏の付くことが多いですが、こうした場合に、歌が終わったところで拍手する人はいませんよね。オペラでも同じだと思うのです。アリアや二重唱の最後をどう美しく終えるかにモーツァルトは心血を注いでいるので、最後の音まで聴いてあげてこそ、感動は倍加するはずです。

歌い手が心を込めて歌ったことに拍手したい気持ちはわかりますが、モーツァルトより自分を聴いて欲しいという歌い方をした人は、この日はひとりもいませんでした。誰か叩き始める人(多分業界人)がいると周囲もそれに追随して、そこで終わりになる場面がいくつかあったのが、残念です。