JJ(イエスよ、助けたまえ)2010年03月01日 23時00分05秒

今日は、3つの会議のあと、『魂のエヴァンゲリスト』の初校を編集者に渡しました。4月10日の出版を目標にしているようです。夜は、明日収録の「バロックの森」原稿書き。私、本当に最近よく働きます。

今日、《偽の女庭師》の新聞批評が出ました。そういえば、もう3月に入りましたね。2月のCD/DVD選のことを書いていませんでした。2月は、談話室でご紹介した《ロ短調ミサ曲》(ネルソン指揮)と《メサイア》(クレオベリー指揮)のDVDを1位、2位とし、3位にフォン・オッターとウィリアム・クリスティの共演による「愛する人の影~フレンチ・バロック・アリア集」を選びました。ちょっと偏りましたが、それによって取れるバランスもあると思い、このようにさせていただきました。

この3月も予定目白押しですが、弟子たちのコンサートが中旬に並んでいるのが楽しみです。またご案内します。

追加の話題。『エヴァンゲリスト』の図版をいくつか入れ替えるのですが、いい発見をしました。バッハはしばしば楽譜の冒頭に「JJ」(=Jesu juva、イエスよ助けたまえ)、終わりに「SDG」(=Soli Deo Gloria、神にのみ栄光あれ)と記入します。この記入はルター派の教会音楽に限らない、と本文で記述しているのに、図版には《マタイ受難曲》のそれを使っていました。しかし大学の所蔵するファクシミリを調べ、世俗カンタータ《心地よきヴィーデラウよ》BWV30a冒頭に、「JJ」を発見。これと、《平均律第1巻》の「SDG」を使うことにした次第です。バッハがジャンルを問わず、同じ気持ちで五線紙に向かっていたことがわかります。

今日のNHK2010年03月02日 23時23分24秒

今日のNHK収録は、「バロックの森」の3/31、4/1分でした。3/31は、私の好きなコラール《心からあなたを愛します、おお主よ》の特集。プレトーリウスのモテットを導入とし、スウェーリンクのオルガン変奏曲、トゥンダーとブクステフーデのカンタータとつなげ、最後を、バッハのオルガン・コラール(BWV1115)と、《ヨハネ受難曲》の最終コラールで構成しました。以前iBACHのコンサートでやった企画の、拡大版です。

このコラールとその編曲については、私の弟子でいま研究室の助手をしている佐藤麻衣さんが修士論文で研究しており、今回も、相談に乗ってもらいました。4/1分は、ヘンデル特集。桐山建志さん、大塚直哉さんのソナタ集から3曲使い、大塚さんのパーソナリティ登場の宣伝も添えておきました。他は、ゼフィロの二重協奏曲と、《シバの女王》です。2人の女性スタッフが本当にきめ細かいサポートをしてくれますので、安心して仕事ができます。いまは客観的な解説スタイルでやっていますが、慣れてきたら、いっしょに楽しむような砕けたスタイルを研究してみたいと思います。できるかどうか、わかりませんが・・・。

いくら慣れていても、収録は緊張します。終わった後渋谷をぶらつき、遅い昼食を摂るのが楽しみ。渋谷のぶらつきは、駒場時代から重ねてきたことで、なつかしい感じがあります。

夜は、尊敬するメソ・ソプラノ歌手、小山由美さんに捧げる文章の準備。《パルジファル》のすばらしい映像を見て、アイデアが湧いてきました。サントリー音楽賞の記念ですから、心をこめて書きたいと思います。

3月/ひなまつり2010年03月03日 22時36分01秒

3月のイベントのご案内をしなくてはなりませんが、とりあえず、至近のものを。5日(金)18:00から、国立音楽大学の大ホールで、モーツァルト《コジ・ファン・トゥッテ》の公演があります。これがいわくつき。サントリーのホール・オペラを先取りし、カバーの歌い手さん(オール日本人)たちによって上演しよう、というものなのです。まったく同じ舞台ではなく、オケも学生ですが、ラヴィーア演出のコンセプトは共通ですし、ルイゾッティもフォルテピアノで出演します(指揮はフィンチ)。1500円なら、一見の価値ありではないでしょうか。

今日ゲネプロを見ましたが、みんなすごいテンションで圧倒されました。オペラって、こうやって作っていくんですね。一応私が、導入のトークをします。

今日はひなまつり。当家発信の画像をお楽しみください。オスですけど。


博士研究コンサートのご案内など2010年03月04日 23時13分00秒

今日は久しぶりに在宅。まず小山由美論を仕上げ、それから音楽研究所の論文集に掲載すべく書いているモテット《イエスよ、私の喜び》論に集中しました。ほとんど完了。もう演奏が終わっていて後の祭りなのですが、いろいろなことに気づきました。やはり論文を書くことで研究者は勉強するのだと、つくづく思います。

私の一番嫌いなニュース、子供の虐待が、続けて報道されていますね。母親が何とか止められなかったのか、と思っていたら、いま見たニュースでは、虐待の6割が実母なのだそうです。お腹を空かせている子供に食事を与えないという一点が、すでにして、とうてい信じられません。世の中には、本当にいろいろなことがあるものですね。かわいがれば、犬だってかわいくなるのに・・・。

金曜日のオペラのチケットがもうないそうで、案内が遅すぎる!とお叱りをいただきました。ごめんなさい。そこで、「大学院博士後期課程研究コンサート」の、ご案内第一弾です。14日(日)、16:00から国立音大講堂小ホールで、1年次5人のコンサートがあります。紙面の都合上、私の弟子のみのご案内で申し訳ありません。ソプラノが3人です。

トップバッターは阿部雅子さんで、『雅歌』にこだわるバロック音楽のプログラム。グレゴリオ聖歌に始まり、グランディ、モンテヴェルディ、メールラ、そしてバッハのカンタータBWV49と140からです。

次は高橋織子さん。専門とするシュトラウスの歌曲で、 op.10とop.27から。 op.10には、有名な《献呈》や《万霊節》が含まれています。須坂の方、お出でになれませんか?

最後が川辺茜さんで、シェーンベルクとベルクの歌曲です。3人とも実力がありますから、ぜひいらしてください。直弟子ではないですが昵懇の今野哲也君の作品発表もありますよ。

【付記】今日のオペラ、当日券が若干出るようです。16:45から発売とのことでした。よろしく。

後奏を聴きましょう2010年03月06日 11時37分25秒

「国立音楽大学×サントリーホール オペラ・アカデミー特別公演」と謳った《コジ・ファン・トゥッテ》、とても良かったと思います。管弦楽、合唱、裏方の学生たちはすごく勉強になったはずですし、公演自体を楽しまれた方もたくさんおられたことでしょう。

さて、当夜のキャストは、文屋小百合(フィオルディリージ)、小野和歌子(ドラベッラ)、折河宏治(グリエルモ)、櫻田亮(テノール)、鷲尾麻衣(デスピーナ)、増原英也(ドン・アルフォンソ)というものでした。6人とも、とても良かった。独走する人はひとりもなく、一定の抑制を利かせた上でアンサンブルを取りに行っていて、それぞれの持ち場の責任を、見事に果たしていました。オペラ・アカデミーで、いい勉強をされたに違いありません。

彼らは本番へのカバーの歌い手なので、普通は、準備しただけで終わってしまいます。それがこのように公演でき、高い水準の力量を示し得たわけですから、彼らにとっても、本当にいい一夜だったと思います。おめでとう。

ところで、アリアや二重唱への拍手は、後奏が響き終わってからにすべきではないでしょうか。シューマンの歌曲には意味深長なピアノの後奏の付くことが多いですが、こうした場合に、歌が終わったところで拍手する人はいませんよね。オペラでも同じだと思うのです。アリアや二重唱の最後をどう美しく終えるかにモーツァルトは心血を注いでいるので、最後の音まで聴いてあげてこそ、感動は倍加するはずです。

歌い手が心を込めて歌ったことに拍手したい気持ちはわかりますが、モーツァルトより自分を聴いて欲しいという歌い方をした人は、この日はひとりもいませんでした。誰か叩き始める人(多分業界人)がいると周囲もそれに追随して、そこで終わりになる場面がいくつかあったのが、残念です。

陸のこと2010年03月08日 00時21分51秒

愚犬、陸のことでご反響をいただき、ありがとうございます。マルチーズとヨークシャー・テリアの雑種で、見かけより大きく、7キロぐらいあります。

初めて雑種を飼いましたが、雑種が絶対お薦めであることがわかりました。体が強く、健康なのです。頭も、いままで飼った内で一番いいです。たいていのことは覚えていて、先回りされてしまいます。

初めての、オスでもあります。しかし犬の性差というのが、もうひとつわからない。今までのメスに比べてキカンボの暴れん坊であることは確かで、妻は、ボール遊びをいつまでもやるとか、欲しいものを万難を排して探し出すといった特徴をとらえて、男の子ってこうなのかなあと思う、と言います。今までメス犬ばかり飼っていたので、なでられるのが好きとか、甘えて鼻を鳴らすというのはメスだからかと思っていたのですが、鼻を鳴らして甘えるという意味では、今までのメス犬以上。ただ、違うことが一点あるのです。いままでの犬は、抱かれるのが好きだったのですが、陸は、自分から飛び乗ってくるのは大好きなのに、つかまえて抱かれるのはいやがります。この能動性がオスの特徴かなと、まあ事例が少なすぎますが、想像しています。


家に来て1年経ちましたが、子犬時代より、格段にかわいくなりました。犬は、かわいがればかわいがるほどかわいい顔になると、断言できます。毎月トリミングに行くのですが、そのお店がいつも写真を撮り、大きく焼いてお土産にしてくれるので、家の中が、陸の写真だらけ。今回は「プロのカメラマンが撮ってくれる」イベントがあり、喜んで参加しました。いくらなんでも、自宅にひなまつりのセッティングをして撮影したりしませんよ(笑)。どっち似か、というご質問がありましたが、どうでしょうね。私は犬に似ている、と昔から言われていますが・・・。今後とも、ごひいきにお願いいたします。


博士誕生!!2010年03月09日 11時08分32秒

今日発表があり、国立音楽大学始まって以来の、博士号をもつ学生が誕生しました。メゾソプラノ歌手の、湯川亜也子さんです。おめでとうございます。

湯川さんは、フォーレの歌曲《エヴァの歌》の研究で、博士号を取られました。コツコツと積み上げる本当に勤勉な方で、ドクターの3年目で、別人のように伸びてきました。私も驚くほどの、研究の発展でした。

私は本来、指導でできることはほんのわずかだ、と思っています。私の一番弟子はいま東大のドクターにいる堀朋平君ですが、このぐらい優秀になると、指導とは関係なく、伸びていきます。指導は、せいぜい参考程度です。

にもかからず、湯川さんの場合は、自分が育てた初めての学生だ、という感じがするのです。もしかすると失礼な感想かもしれないのですが、感動を込めて、そう思います。一緒に、いい勉強ができたということではないでしょうか。

最短距離で第一号の博士誕生というのは、論文指導した教師として、望外の喜びです。学生に恵まれることがいかに嬉しいことか、痛感しました。その意味で、今日は、最良の日でした。

同時に、博士課程の合格発表。14人が5人の椅子を争う激戦でしたが、合格は2人になりました。iBACHコレギウムのコア・メンバーである高橋幸恵さん(メゾソプラノ)が合格されましたが、さまざまな要素を兼ね備えた優秀な方なので、楽しみです。

バロックの森その32010年03月11日 13時29分39秒

火曜日、「バロックの森」の3回目の収録をしました。4月2日(金)、3日(土)の放送分です。

4/2は今年の聖金曜日ですので、バッハの《マタイ受難曲》をぶつけました。普通の演奏、普通の抜粋ではつまりませんから、CDは、ジョン・バット指揮、ダニーデン・コンソート&プレイヤーズ(英)のものを使いました。これの売りは、リフキン方式であることと、1742年頃とされるバッハ最後の上演を復元していることです(第2グループの通奏低音にチェンバロを使っているとか、ガンバを第2グループにも含めているとか、まあ部分的な違いです)。第一級の演奏とまではいきませんが、面白いと思います。

《マタイ受難曲》では2つのグループの応答する楽曲に重要なメッセージが込められている、というのが私の作品理解ですが、今回の抜粋では、対話曲ばかり集めてみました。一度やってみたかったことです。1つのパースペクティヴには、なるかと思います。

4/3は復活祭を先取りしました。教会暦の原則からするととんでもないことでしょうが、日曜日は放送がありませんので、フライングさせてもらいました。曲は、ビーバーの《ロザリオのソナタ》の第11番と、シュッツの《復活祭オラトリオ》です。

ビーバーはトラジコメディアとマンゼのどちらにしようか考え、トラジコメディアを選択しました。こちらの方が、通奏低音が多彩に編成されているのです。それと、オルガニストのモロニーの解説が面白く、それを紹介しました。モロニーによれば、第1楽章の〈ソナタ〉は日曜日の朝の美しい日の出であり、第3楽章のアダージョは、イエスがマグダラのマリアに出現する、神秘的な場面であるというのです(第2楽章は古い聖歌〈キリストは今日よみがえった〉によるもので、これは楽譜に明記されています)。ひとつの読み方ですが、演奏者自身によるものなので、紹介する価値があると考えました。

シュッツは、フレーミヒ、ベルニウス、ヤーコプスを比較して、ヤーコプスに決めました。

というふうに楽しくやっていますが、なかなか時間がかかります。雨模様のNHKを出て大学に行くと、雪に変わっていて驚きました。

今月のイベント(2)2010年03月12日 23時07分25秒

「博士研究コンサート」の1日目はご紹介しましたね。翌日、すなわち15日(月)の18:00から、2年・3年次のための2日目があります。私の弟子で出演するのは山崎法子さん(ソプラノ)で、ヴォルフの《スペイン歌曲集》から。もうひとり、ウィーン帰りの葛西健治君(テノール)は、ベートーヴェンの愛の歌曲ばかりという、「濃い」プログラムです(彼らしい?)。他に、日本音楽コンクール優勝の中辻小百合さん(作曲)の新作発表と、やはりウィーン帰りの期待のピアニスト、和田紘平君のバッハ《パルティータ第6番》とベートーヴェンの第30番のソナタその他があります。よろしく。

16日(水)は18:30から、修了生から選抜された「新人コンサート」です。iBACHのコア・メンバーでリフキンの《マタイ》にも出演してくれた狩野賢一君が出演します。研究報告を指導していたオペラの部門からも、3人が出演。どちらも入場無料、国立音大の小ホールです。

29日(月)には19:00から立川アミューで、立川市と大学の提携による「モーツァルトの美意識を探る」のシリーズがあります。今回は「響き合う友情と愛」というテーマで、二重奏、二重唱の世界を探究します。ヴァイオリン・ソナタト長調K.379、2本のホルンのためのデュエット、あとはオペラからで、《コシ・ファン・トゥッテ》と《魔笛》から二重唱を集め、そこに、メゾとクラリネットの二重唱というべき《ティート》のアリアを加えたプログラムです。

このコンサートの自慢は顔ぶれです。声楽は、高橋薫子(S)、加納悦子(Ms)、大間知覚(T)、黒田博(B)という豪華版で、ピアノの久元祐子さん、ヴァイオリンの大関博明さんなど、国立音大の誇る音楽家が出演します。これで1000円とは、安い!

じつはもうひとつあるのですが、深刻なダブルブッキングが発覚しました。解決してからご案内します(泣)。

4月のイベント(3)2010年03月13日 11時19分55秒

フーッ、ダブルブッキングが解決し、ご案内です。

27日(土)は、10:00からが「たのくら」の例会。年度最後で、《ロ短調ミサ曲》で締めます。談話室でもご紹介している、ネルソン指揮、ノートルダム聖歌隊の演奏でいきたいと思います。

同日午後14:00から、毎年3月に開催している「錦まつり」。会場を借りている立川市錦町の学習館が主催者となって、コンサート・シリーズを継続しているのです。今年は、「サクソフォーンって、面白い!」。国音の下地啓二先生以下、教室の学生さんが大挙して出演されます。にぎやかで楽しいコンサートになりそう。入場無料ですから、皆さん、ぜひお出かけください。

え、ダブルブッキングの犠牲者は、ですって?それは朝日カルチャー横浜校です。いつもよくしていただいているだけにたいへん申し訳ないのですが、関根敏子さんに代講をお願いしました。しかしラモーのオペラ《ボレアード》を取り上げるので、私より適任ではないかと思います。こちらもよろしくお願いします。13:00からです。