楽しいインタビュー2010年06月13日 00時42分51秒

今日は東京都現代美術館で、藝関連のシンポジウム。「清澄白河」というところを初めて知りました。シンポジウムについて思ったことは、また別途書くことにし、今日は、かものはしさんのたいへんありがたいコメントに乗って、「レインボウ」がらみのことを若干付け加えます。

かものはしさんが言及してくださっている「私と出演者の掛け合い」について注釈します。ナビゲーター役の私は、ストーリーの解説をしなくてはなりません。しかしオペラのストーリーはこんがらかっていることが多く、時間もごく限られていますから、なかなか、行き届いた解説は望めません。抜粋となるとなおさらです。

そこでいつしか、インタビュー方式を採るようになりました。劇中の人物に私がインタビューし、その人物について、また彼・彼女がこれから歌う歌について、イメージを焼き付けてもらう、という作戦です。そうしたら、これが案外面白い。歌い手の方は芸達者が多く、しかも皆さん、いい意味で目立ちたがりですから、上手にやってくださるのです。最近は前もって台本を作り、それに沿ってやっています。

《コジ》では、第2幕初めのセレナードを終えたところに、インタビュー・コーナーを設けました。求愛が功を奏するか否か、という大詰めで、それぞれの心境を語ってもらうことにしたわけです。姉妹の性格の違いや、男二人の置かれた状況の違いを印象づけることを主眼として、台本を書きました。こうしてお客様にドラマの中に入ってきてもらい、後半の名曲を二倍楽しんでいただこう、という作戦です。

《魔笛》では逆に、音楽の始まる前に、3人にインタビューしました。パミーナに「向上する愛」への理想を語っていただき、それには応えるべくもないパパゲーノに自分なりの願いを語らせ、こわーいモノスタートスから、愛への秘められた思いを引き出すという構想です。パミーナにはパパゲーノ流の愛を否定するせりふを用意し、それをパパゲーノが立ち聞きしている、という設定だったのですが、私が引き出す質問を忘れてしまい、高橋織子さんが立ち往生される結果になりました。

〉この間,ラジオのクラシック番組でパーソナリティの歌手の方が「素晴
〉らしいという気持ちがわきあがったら拍手していいと思います」とコメントされていたのを思い出しました。

私、この考え方には絶対反対です。これははっきり言って、歌い手の言い分です。歌が終われば音楽は終わり、という考えが根底にある。作曲者が心を込めて書いた後奏、それを心を込めて演奏するオーケストラやピアノ。その全体が、音楽なのです。典型は、《魔笛》のパミーナのアリアです。後奏がまさに、音楽のエッセンスになっている。バッハのカンタータやシューマンの歌曲ならそうする人はいないでしょうが、オペラでも、事情はほとんど同じだと考えます。

最後に。足本君の貢献にご評価をいただき、ありがとうございました。本当に、彼あっての公演です。喜ぶと思います。