意識改革2010年06月14日 09時38分15秒

後奏で拍手が起こったことについては、私の責任もあります。この日はどうしても演奏曲が多くなってしまい、極力無駄がないように運ばなくてはなりませんでしたので、歌い終わった登場人物は、後奏の間に即退場するように設定していたのです。結果として、退場が拍手を誘発しました。歌い手も後奏を聴いてから動くようにしておけば良かったわけですよね。心に留めておきたいと思います。

前話で「歌い手の言い分」という言葉を使ったのは、学生指導の機会に、意識改革を求めているからなのです。自分のパートを歌うのに精一杯で、ピアノや合奏を聴いていない人が、あまりにも多い。たとえ自分のパートをしっかり覚えたとしても、ピアノがどうなっているか、和声がどう進行しているかがまったく把握されていなければ、作品の演奏が、いいものにならないことは当然です。作品の全体を見ることが、大きな意味をもつからです。

高度なことを最初から要求するわけではありませんが、とにかくピアノを聴き、ピアノといっしょに音楽を作ることを心がけるだけで、演奏の力は二倍にも、三倍にもなります。ピアノが主役としてきらめく場も歌の曲にはたくさんあり、そんなとき歌い手が意識して引き立て役に回ると、音楽はとても引き立ちます。

そんなことを考えるようになってから、私の音楽の聴き方も、ずいぶん変わりました。世界的な歌い手にも、ピアノやオーケストラを聴いている人といない人がおり、聴いている人のすばらしさを痛感する昨今です。