円熟の極み、アーノンクール!2010年10月24日 11時37分46秒

久々の生放送。行く前はもうあまり緊張することはしたくないな、と思っているのですが、始まってハイになると、やり甲斐に動かさている自分に気がつきます。《ロ短調ミサ曲》の作品と演奏に対するコメントですから、どんな方向から振られてもだいたい大丈夫だと思っては臨みましたが、そこはナマの恐ろしさ。何が起こるかわかりません。

放送でも申し上げましたし、批評にもまとめますが、80歳のアーノンクールが長身をステージにあらわしただけで、客席の姿勢が改まりました。たいへんな存在感です。演奏は、従来の観念を改めるようなものでした。情報量極大の雄弁なスタイルが後退し、聴き手が静かに耳をそばだてるような、奥行きの深い、滋味豊かなものになっているのです。円熟をさらに極めたアーノンクールの指揮によってバッハの究極の作品を聴く、忘れがたい一夜でした。

なかなか完璧の期しがたい生放送で反省もいろいろ残りましたが、NHKの方々が感動的な放送だったと真顔で言ってくださったので、ありがたくいただいて帰宅しました。もちろん、名演奏あってこそなしえたことです。いずれにしろ、《ロ短調ミサ曲》の存在が、私にとって、日に日に大きくなってきています。この曲の研究と上演を、これからの課題としたいと思います。

コメント

_ Clara ― 2010年10月25日 13時08分32秒

夕べ3階席で聴いておりました。左手の放送席が目に入り、あの奥でI先生の解説がされているのかなと想像しました。はじめて生で聴くアーノンクール、ソロも合唱も含め、素晴らしい演奏で感動しました。11月終わりには、NHKハイビジョンで放映されるとのこと、楽しみです。

_ 只今追っかけ中 ― 2010年10月25日 14時52分46秒

美しい音楽はこれ程までに人を動かすのだと改めて感じたロ短調ミサ曲でした。沢山のロ短調ミサ曲を聴いてきましたが、厳格な美しさに圧倒されることが多かったのが、昨夜はあくまでもそのままを受け入れ包み込む抱擁のように感じられ驚きました。

宗教で言う救いとはそういうことなのだろうかと最近考えます。バッハが私の「呼吸する」リズムに合っているのでしょうか。涙が溢れるまま、最終の新幹線で京都へ戻りました。

蛇足です:ほぼ最前列に近い席で聴きましたが、出来れば今回もIホールで聴きたかった・・・です。(いつも良いプログラムをありがとうございます。楽しみにしています)

_ Halumi ― 2010年10月25日 22時28分09秒

はじめまして。
昨夜はラジオで先生のお話を聞かせて頂きました。先生が感動され声を詰まらせていらっしゃったのが、素晴らしい演奏とともに心に残りました。
私は先生の講座に伺う機会がなく、唯一「バロックの森」で先生のお話を聞くのを楽しみにしております。(選曲も最高です!)
あの番組は曲の解説ですので、昨夜のようにお話しになる先生は私にとって初めてで新鮮でした。今回の公演は迷った末「天地創造」に行く事にしてしまいましたが、先生をあのように感動させた「ロ短調」にいくべきだったかと思いました。でも、これが見納めかもしれない、カリスマ・アーノンクールを楽しみにしています!
I先生の今後のご活躍をお祈りしています。

_ I教授 ― 2010年10月27日 05時45分26秒

じつは今ひじょうに忙しく、あまり寝ないまま起き出したのですが、3人の方々のコメントを読んで、感動してしまいました。音楽のつながりですね。ご投稿ありがとうございます。これからもがんばります。

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