年齢も芸のうち2010年11月13日 23時22分55秒

年齢の話が続きましたが、なんとなく思っていて、ここに至り、明確に意識したことがあります。それは、指揮者にとって年齢は大きな価値だ、ということです。

考えてみると、最近、80代の指揮者ばかり聴いている。新聞批評でやったのが、アーノンクールとプレートル。今日やっていた今月のCD選でぶっちぎりなのが、シマノフスキのヴァイオリン協奏曲と交響曲第3番を指揮している、ブーレーズ。そしてブルックナーがDVDになった、スクロヴァチェフスキー。80代の人たちが、すごい演奏を続けているのです。ギュンター・ヴァントの最晩年も、思い起こされます。

いろいろな理由があると思いますが、主な理由は、2つでしょう。1つは、演奏家と違って指揮者は自分だけでは練習できないので、キャリアを積むことで勉強が加速される。ようやく統率できるようになった、と実感するのも、かなり年が来てからに違いありませんし、その頃にはおのずと、周囲の信頼も増してきています。

もうひとつ、同じぐらいに大きいのではないかと思うのが、高齢になることによって、世俗的な関心から離れるということです。若い人はなかなか喝采とか格好良さから離れられないと思いますが、ある程度高齢になると、本質的なことだけを追求するようになる。結果として、受け狙いの高齢指揮者、というのは存在しません。そんな追求の喜びがあるためでしょうか、80代の指揮者の方々、皆さんお元気ですよね。足元が多少おぼつかなくても、長大な交響曲を精力的に指揮して、危なげがありません。電車で座席を譲られるのかどうかは、存じませんが。