今月の「古楽の楽しみ」2012年05月09日 22時15分44秒

今月は5月21日(月)~24日(木)の4日間です。比較的珍しい領域に目を向けてみました。

バッハのカンタータを少しずつ、時期に合わせて紹介したいと思っており、いつも、放送の当日に初演された作品がないかどうか、調べています。すると、5月21日に、2曲あるのですね。第44番《彼らはあなたがたを追放するだろう》(1723年)と、狩のカンタータからのパロディで知られる第68番《神はかく世を愛された》(1724年)。加えて1747年には、フリーデマンがハレで第34番《おお、永遠の火よ》を演奏しているのです。この第34番は、サンクトペテルブルクでの資料発見によって、1727年の初演であることが判明した作品。そこでそのことに触れながら、3曲でプログラムを組んでみました。演奏はガーディナーのライヴです。

22日(火)は、音楽理論家として知られるティンクトーリスの作品。30歳前後の頃、皆川達夫先生の主宰する中世ルネサンス音楽史研究会に入っていて、皆川、金澤、高野といった先生方とご一緒に、『音楽用語定義集』の翻訳にたずさわりました(1979年出版)。そこに収録されている「ヨハネス・ティンクトリスとルネサンスの音楽理念」という論文は、私のごく初期の仕事の1つです。

そのティンクトーリスの作品を収めたCDを、最近入手しました。恥ずかしながら、聴いたのは初めてです。でも予想を超えて美しかったので、放送することにしました。《エレミヤ哀歌》からの抜粋と3つのモテットです。ハンガリーで活動したストーケムの作品をこれに組み合わせ、デュファイ、ジョスカンもちらっと。

23日(水)はハンガリーからチェコに視点を移し、ルドルフ2世時代のプラハの宮廷音楽を特集しました。フィリップ・デ・モンテ、ルニャール、ライトンによる、後期ルネサンス様式の音楽です。

24日(木)は、17世紀から18世紀始めにかけてのウィーン宮廷の音楽を特集。いつぞやCDコーナーで紹介した『ウィーン流儀で』のCD(ル・ジャルダン・スクレ演奏)を使って、憂いに満ちた諸作品を並べました。短調の曲ばかりです。登場する作曲家は、レオポルト1世、シュメルツァー、フローベルガー、シェンク、ドラーギ、サルトーリオ、フックスです。

というわけで地味なのですが、知られざる曲の発見があるかもしれません。どうぞよろしく。