記憶を語るシンポジウム2013年06月10日 08時13分25秒

15学会の協力による藝術学関連学会連合第8回公開シンポジウム「芸術と記憶」が、6月8日(土)、大阪の国立国際美術館で開かれました。立派な美術館ですね。地下に降りてゆく建物ですが、採光も申し分ないですし、広々とゆとりのある展示は、日本とは思われないほどです。

セッション2つ、パネリスト各4人の、なかなか大がかりなシンポジウムになりました。日本音楽学会からは沼野雄司さんがパネリストとして参加されましたが、この第2セッション、「記憶と創造」が、出色の面白さでした。沼野さんの「前衛音楽における形式と記憶」という発表は、音楽における記憶の役割の基礎論から始まり、前衛音楽におけるその変容と発展に議論が及んで、記憶の本質論と照らし合わせつつ締めくくられる、という白眉のもの。高度な内容がぎっしり整理して展開され、一語ももらさず傾聴して、勉強になりました。進んで発表を買って出てくださり、少しも誇るところのない沼野さんのお人柄に、感銘を受けました。

桑木野幸司さん(美術史学会)の「初期近代西欧の芸術文化における創造的記憶」という発表も独創性と大局観を兼ね備えていてすばらしく、山﨑稔惠さん(服飾美学会)の「服飾における触覚の記憶-『ユルスナールの靴』をめぐって-」という機微に分け入った発表には、じーんと感銘を覚えました。

終了後、新装なったフェスティバル・ホールのお店で打ち上げ。おいしいワインがあり、楽しく盛り上がりました。まだあまり知られていないシンポジウムですが、たいへん意義があると思いますので、役職のある間、協力を惜しまぬつもりです。