ドイツ旅行記2013(9)--農民カンタータの上演跡2013年06月29日 12時42分05秒

23日(日)。ライプツィヒ・バッハ祭の最終日です。バッハの足跡探索、事前解説のおりにあれこれと報告していましたら、お仲間の中に、行きたい、という人が出て来ました。そこで「農民カンタータを初演したクラインチョッハーの荘園」という形でご案内し、9名の探検隊が出発。引率者になり、気持ちが引き締まりました。

駅前から、路面電車の3番に乗り、20分ほどで、現地着(ペッツォルトの『バッハの街』インフォーメーションの項に4番とありますのでご注意を)。市街地郊外の閑散としたあたりを少し歩くと、不釣り合いに大きな教会が出現しました。バッハ時代の後に建てられたものです。ちょうど礼拝が始まるところだったので、案内されるままに、中へ。楽譜が配布され、オルガニストと、3人の女性奏者(フルート、オーボエ、ファ
ゴット)が演奏の用意をしています。

礼拝は瞑想と歌唱を基本にしたもので、地域の女性たちが自主的に運営しているように思われました。ひとつの聖歌を何度も繰り返して歌ってゆくのですが、そこに楽器が入ってくると一種エキゾチックな効果がして、不思議な雰囲気。時代に合わせての平明な感覚を取り入れた、なかなか好ましい礼拝でした。

ペッツォルトの本には「屋敷と庭園は常時公開。教会の見学は要予約」とあります(本文ではなくインフォーメーションの項)。教会の見学が首尾よくできましたので、礼拝を途中で抜けさせていただき、屋敷を探しました。いかにも穏やかな老夫婦が歩いていたので尋ねてみると、大戦中爆弾が近くに落ち、屋敷が飛ばされてしまって残念だ、とのこと。プレートだけ が、ひっそりと佇んでいました。バッハは1742年に、新しい荘園領主フォン・ディースカウの着任を祝って、例のカンタータを捧げたのです。当地の徴税責任者 だったピカンダーの、自虐的なテキストが愉快です。


老夫婦は今日が結婚60週年だそうで、ほのぼのムード。遺された公園はすばらしいもので、古い巨木が美しい枝葉を茂らせていました。散策しながらふと振り向くと、教会が立派な姿を見せています。


近くに、これまた唐突に思えるほど立派なホテル兼イタリア・レストランがあり、そこで昼食をすることに。店名が「ドン・ジョヴァンニ」で、仕切っているお兄さんが精力絶倫のイメージとはできすぎです。そこでも老夫婦に遭遇しました。

というわけで、意外性のある、とても楽しい遠足でした。著名な観光地を外れたところに、地域の良さはあるものです。