ヨーロッパ真摯の旅2015(6)ーーヴィスワの流れ2015年06月16日 23時25分18秒

バルバカン、聖マリア教会、ヴァヴェル城と続くクラクフ旧市街を歩きながら私が思い浮かべていたのは、バッハの領主である「強王」アウグストの、ポーランド王戴冠式の情景でした。おそらく儀式は壮麗だったでしょうが、にわかカトリックの新王に向ける貴族たちの目は、冷たい。そして、儀式に華を添えるべき王妃クリスティアーネ・エーバーハルディーネは、信仰上の理由から出席を拒否し、ポーランド入りさえしていないーー。じつに、格好がつかないではありませんか。

お城の南には、ポーランド随一の河川、ヴィスワの流れがあります。私は河畔のベンチに腰かけて、大好きな選帝侯妃追悼カンタータの「ヴィスワの流れが豊かであるかぎり」のくだりを思い浮かべながら、彼女の行動の持つ意味を考えていました。バッハはかの名曲によって彼女に大きなエールを送りながら、最終的には宗派の対立を越えようとして、《ロ短調ミサ曲》を書くわけですよね。

関心のある方のために付言すれば、ポーランドの女性が美しいという世評は、本当です。色白、細面で金髪、スタイルがいい上、感心するほど洒落た装いの人を、たくさん見ました。すばらしいと思います。