ヨーロッパ真摯の旅2015(16)--《ヨハネ》第2稿を見直す2015年06月28日 23時57分12秒

18日(木)夜は、聖ニコライ教会で、旅行最後のコンサート。《ヨハネ受難曲》第2稿を、ヘレヴェッヘが指揮しました。これがまた、とても良かったのですね。

コレギウム・ヴォカーレ・ヘントの声楽が、まずすばらしい。音楽をしっかり見据えた、大人のアンサンブルです。モンテヴェルディ合唱団が外へ向けてあふれ出る傾向があるとすれば、こちらは、内面に成熟する傾向。しかもドロテー・ミールツ(S)、ダミアン・ギヨン(CT)、ゼバスティアン・コールヘップ(T)、ペーター・コーイ(B)という錚々たる顔ぶれがコンチェルティストとして入った、ぜいたくな16人です。それをヘレヴェッヘが並々ならぬこだわりをもって指揮し、コンサート・ミストレスのクリスティーネ・ブッシュが、表情豊かにオーケストラを引っ張ってゆきます。

私は《ヨハネ受難曲》の第2稿に、これまで抵抗を感じていました。アリアにどうしても唐突感があり、最後のコラールも、重すぎるような気がする。でもそれは、演奏のせいでもあったようですね。ヘレヴェッヘは従来から第2稿を演奏しており、すっかりそれに習熟しているので、入れ替えられたアリアや合唱曲が、「こうでなければならない」と聞こえるまでになっているのです。こうして聴くと、コラール・カンタータ創作の知見を盛り込んだ受難曲という最近の考え方も、なるほどと思えます。

イエス役のフローリアン・ベッシュは音域といい歌い振りといい、《ヨハネ》の超越的イエスにぴったり。エヴァンゲリストのトマス・ホッブスは堂々たるスケールの歌唱で、大成功の立役者でした。向こうで受難曲を聴くと、エヴァンゲリストが有名無名を問わず、揃ってうまいことに感心させられます。

でも、現段階では張り切りすぎなのですね。エヴァンゲリストは、「・・は言った」という風に、話を振らなくてはならない。話を引き立てるには、こんなに美声で立派に歌ってしまってはいけないのです。習熟して2、3割控えて歌えるようになれば、大福音書記者になる人だと思います。