5月のイベント2015年05月01日 10時25分29秒

昨日が誕生日で、69歳になりました。心身共にまずまず充実しているので、もう少しがんばれると思います。そこで、今月のご案内です。

まず2日(土)16:00~17:00、ラ・フォル・ジュルネで講演をします。今年は「パッシオ」がテーマだそうで、多義的な解釈に基づくプログラムが組まれていますが、私は「受難としてのパッシオ」というテーマにしました。「受難」の概念史と音楽史を組み合わせようと思い、いま、ギリシャ語とラテン語の聖書の用例を調べています。

今月は、早稲田エクステンション・センター中野校のバッハ講座(15:00~17:00)が、3回あって完結します。14日(木)のテーマが「音楽の趣味、生活の趣味」。21日(木)が「編曲を考える」(パロディ論)、28日(金)が「古楽器の嵐」です。

「楽しいクラシックの会」(立川錦町学習館)は16日(土)10:00~12:00。「21世紀のモンテヴェルディ《オルフェオ》」の後編です。第3幕以降を取り上げます。

朝日カルチャーセンター新宿校は、20日(水)。10:00~12:00のワーグナー講座は、《マイスタージンガー》第2幕の、第2回。第1回で通し鑑賞をし、第2回で複数の演出を参照しながら聴きどころを考えてゆくのが、最近の流れです。13:00~15:00のバッハ・リレー演奏講座は、《フーガの技法》です。同横浜校のモーツァルト講座は、23日(土)13:00~15:00。テーマは「宮廷舞曲の充溢」になります。

モーツァルトといえば、22日(金)14:00~16:30に、日本モーツァルト協会のピアノ・コンチェルト講座第2回があります。今月取り上げるのはウィーン時代の初期、第11番から第19番まで、とくに1784年の6曲(第14番以降)です。東京文化会館の会議室が狭く、空席待ちと伺っています。

さて朝日カルチャーセンター新宿校で、今学期から、レクチャーコンサートを始めます!第1回は30日(土)の16:00~17:30。バッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第1番ト短調に、《シャコンヌ》を加えた魅力のプログラム。当然バロック・ヴァイオリンで聴いていただきます。出演は須賀麻里江さん。どうぞご期待ください。

「ラ・フォル・ジュルネ」をかすめる2015年05月03日 08時10分01秒

2日(土)は、「ラ・フォル・ジュルネ」でいただいた講演のために、有楽町へ。BCJの《マタイ受難曲》とバッティングしているので行けない、と複数の方から伺っていましたので、あぶれた少数の方が暗い顔で集まる光景を頭に浮かべながら出かけました。予想の針は悲観的な方に合わせるのが習慣です。

案に相違して行列ができ、席が埋まったばかりか、今日その部屋では一番多い、とのこと。「受難としてのパシオン」というタイトルでやりましたが、皆さん生き生きと真摯に聞いてくださり、いくつかの再会にも恵まれるという、嬉しい一日になりました。良さそうなコンサートもたくさんありましたが、この連休は翻訳に専念しなくてはならないので、そのまま帰宅。

それにしても、この音楽祭、お客様がつきましたね。会場に本当に人の動きがありますし、私のような小さな講演にも何人ものスタッフがついて、万全の体制で支えてくれます。地方版がいくつもできているというのも、行き届いたサポートあればこそだと思いました。

今月の「古楽の楽しみ」~モテット2015年05月06日 23時59分21秒

連休が終わりましたね。もう終わりか、という気もしますが、最善を尽くして仕事をしましたので、悔いはありません。来週に迫ってきた「古楽の楽しみ」のご案内をいたします。

今回は、バッハのモテットを特集しました。合唱団の方々、よろしく!4日を満たすにはモテットの曲数が足りませんので、カンタータやオルガン曲を入れています。

11日(月)は、《霊は弱い私たちを》BWV226から入りました。ラミーン~聖トーマス教会聖歌隊の1951年録音と、コーイ~セッテ・ヴォーチの2009年の比較が冒頭です。まさに、隔世の感。

次は、近年真作と認定された《あなたを離しません》BWV補遺159bを、ヒリヤード・アンサンブルで。いい曲ですね!もう一つ、編曲という資格で真作の仲間入りをした《全地よ、主に向かって喜びの声をあげよ》BWV160補遺を、リリングで。もう一つの編曲《神に従ったあの人は失われたが》(義人滅ぶれども)も、リリングの指揮で聴きます。最後は、昨今偽作説の強い《主を讃えよ、すべての異邦人よ》BWV230を、ボニッツォーニ~カペラ・クラコヴィエンシスの2014年ライヴで。リフキン方式による、鮮度の高い演奏です。

12日(火)は、すばらしい《イエスよ、私の喜び》BWV227を、コーイ~セッテ・ヴォーチで。2009年のこの録音も、古楽様式による名演奏だと思います。その後に同じコラールによるオルガン曲を2曲聴き、最後に、コラールの共通するカンタータ第81番《イエスは眠っておられる》を置きました。演奏はガーディナー2000です。

13日(水)は、《来ませ、イエスよ、来ませ》BWV229を、クルト・トーマス~聖トーマス教会聖歌隊の1959年録音と、ボニッツォーニで比較。次にカンタータ第151番《甘い慰めよ、私のイエスが来られる》を「来る」つながりで置き(演奏はクイケン)、オルガン曲をはさんだ後、最近モテット枠に入っている《おおイエス・キリスト、私の命の光》BWV118で締めくくり。演奏はティモシー・ロバーツです。

14日(木)は、《恐れるな、私はあなたとともにいる》BWV228で開始。バッハ作品をボニッツォーニで聴いたあと、ヨハン・クリストフ・バッハ、ヨハン・ミヒャエル・バッハで、同じテキストのモテット、ないし同じ言葉で始まるモテットの比較をしました。演奏は、ヘレヴェッヘとネーヴェルです。そして、同じイエスの言葉がレチタティーヴォであらわれるカンタータ第153番《ご覧ください、神よ、私の敵が》をガーディナー2000の演奏ではさみ、最後に《主の御前に新しい歌を歌え》BWV225をコーイの演奏で聴いて、締めくくりとしました。このモテットは放送ですでに2回使っていますので、始まりとするよりは、むしろ、希望ある最後として使いたいと判断しました。

放送のためにいろいろなジャンルを勉強し直すことができ、嬉しく思っています。ジャンルとしては当時古かったモテットが、いま聴くと、じつに新しく思えます。

敬語の衰退2015年05月09日 11時04分35秒

最近は皆さんツィッターをなさるようで、その流行は年齢や職業を超えているようです。私に勧めてくださる方もおられます。

テレビの番組にも、随時ツィッターの流れるものが増えてきました。リアルタイムでレスポンスできるのが売りであるようで、「視聴者参加」を実践される方には、魅力があるのだと思います。

しかし私はどうも、それを楽しむ気持ちになれません。その理由として自分的に大きいのは、字数制限が厳しいツィッターでは、敬語が省略されがちであることではないかと思われます。ツィッターのみならず、概してネットの発信では速さ、短さが重んじられるため、敬語を使わない傾向がありますよね。私は、知らない人同士のコミュニケーションにはやはり敬語の効用が大きく、ささくれだったやりとりや言いっ放しの批判にならないためにも、敬語は必要ではないかという意見です。

来週の放送でも言いましたが、外国語の簡潔さに比べると日本語の敬語は音節の過剰を招いて、まだるっこしい面があります。Komm, Jesu, kommは4音節で、音符が4つあれば処理できますが、これを「来てください、イエスよ、来てください」と訳すと16音節になってしまい、音符に当てはめて歌うことは、できない相談です。

でもそれが、日本語の良さでもあるわけですよね。美しい日本語が、敬語込みで受け継がれていくことを願っています。

好きな番組2015年05月13日 10時17分10秒

前ほどテレビを見なくなりましたが、在宅していると必ず見てしまうのが、NHK日曜日夜の「ダーウィンが来た!」です。美麗な映像で展開される自然界のドラマに毎度引き込まれ、驚嘆しきり。たいへんな手間をかけて作成しているにちがいありません。

珍しい動物の珍しい生態が次々に紹介されますが、子孫を残すために動物に与えられている知恵は、すごいものですね。複雑にして高度なプログラムが、遺伝子に刷り込まれているというわけですね。

感想としてあるのは、自然界の生存競争はまったく厳しいものだなあ、ということ。その中で子孫を残していくためには、一定量の犠牲を織り込む繁殖プランが必要のようです。生存競争は基本的に、異なった動物との間で行われる。天敵というのもあります。同種のオス同士が縄張りやボスの座をめぐって争う光景もよく出てきますが、それにも生存競争のためという合理性があるようです。

番組がしばしば感動的に思えるのは、動物の生き方の中に、人間にとって学ぶべきものがあるからでしょう。動物は、みんな必死で生きている。動物は、連携して命をつないでいこうとしている。動物は、同種間で殺し合いをしない--そうした動物たちが激しい生存競争の中に投げ込まれている世界とは、何なのでしょうか。

リラックスの損得2015年05月19日 23時36分25秒

気がつくと1週間、更新しませんでした。まったく余裕のない毎日だったためで、この生活ペースは、再考の余地がありそうです。

朝が、不規則。たいてい早く目が覚めるのですが、ある日ぐっすり寝てしまい、10時頃起き出して、もう起きてこないのかと思った、と妻に言われました。でもその日は身体が軽く、好調を自覚しつつ、NHKの収録へ。

するとディレクターの女性が、「お疲れのようですが大丈夫ですか」と言うではありませんか。今日は元気だ、と思っていた私は、切歯扼腕。あなたは私が長い人生でため込んだ疲労を見て、そう言っている。たしかに人生には疲れているかもしれないが、今日は元気なのだ、と力説しました。でも説得力はなかったようです(汗)。

いま整体のプログラムを受けていますが、私の身体が硬いのに驚く先生がおられます。先日も驚いている気配が窺えたので、「生ける死後硬直と言われているんですよ」と申し上げたら、「本当にそうですね」とのお答え。あの、定番のジョークなんですけどね・・。それでもよくしたもので、やっていただくうちに、ある程度は、柔らかくなってくる。ならなかったら最後で、文字通りの「死後硬直」です。

そんな状況なので、リラックスが良薬、と思っています。ところが気づいたのは、ハイテンションで朝から仕事に励めるのはむしろリラックスしていない時だ、ということ。緊張が溶けてしまうと気が抜けて、仕事への意欲が湧きにくいのです。ぞれでもリラックスを求めるべきかどうか、その損得が気になる昨今です。

コマーシャル2015年05月22日 11時59分03秒

CSのチャンネルを切り替えながら野球放送を見ていると、コマーシャルの時間がひんぱんで、かつ長いことに気がつきます。コマーシャルに入ったのでチャンネルを切り替えると、そちらもコマーシャル、ということがちょくちょくある。サッカーではないことでしょうから、スポンサーにはありがたいのが野球放送だと思います。ちなみに宣伝対象の大半は、健康食品です。

1つのコマーシャル時間は長めで、起承転結のある同じコマーシャルが、延々と繰り返される。試飲、効用の報告、などなど。繰り返し見ていて一番辛いのは、顔の知られていない俳優を起用してしっかり演技させ、効果満点に作ってあるものです。見るたびに、作為が気になってくるからです。しかしそういう反応は、作る側は想定していないように見受けられます。

げんなりしてチャンネルを切り替えながら、ふと気がついたことがあります。私は男性がやっているその手のコマーシャルはとても気になるのですが、女性がやっていると、ほとんど気にならない。そもそもどの人が女優で、どの人が一般人かも、よくわかりません。

ことほどさように異性のことはわからない、という、これは証明なのでしょうか。女性のご意見を伺いたいものです。優さん、いかがでしょう(笑)。

ベテランの鬼手2015年05月25日 21時33分52秒

勝負事に厳しさはつきものですが、将棋の厳しさは、格別。理系的な頭脳を要求されますので、年齢による力の衰えが速いのです。ある程度の歳になると、若い棋士に、いいように負かされるようになる。対面して長時間対局するわけなので、これは辛いことだろうと思います。一時代を築いた有名な棋士も、一番下のクラス(C2)に落ち、連戦連敗になってしまうのがこの世界です。

昨日の日曜日、NHKの将棋トーナメントの対局は、それを絵に描いたような組み合わせでした。方や「貴公子」と呼ばれ、日の出の勢いの若手、佐々木勇気五段。後手をもって対するのは、歳の差30近いベテラン、藤原直哉七段。失礼ながら事実を記せば、C2に徳俵で踏みとどまっている年長者です。

冒頭のインタビューでは、「ベストフォーを目指します」と高らかにおっしゃる佐々木五段に対し、藤原七段は、「予選を勝ち抜けるとは思っていませんでした」と。少し将棋を知っている人であれば、やっぱりそうか、勝敗は見えている、と思ったことでしょう。私も、藤原さんにがんばって欲しいが無理だろうなあ、と思って観戦しました。

すると、藤原七段が隙のない差し回しで、優位を築くではありませんか。でも、終盤戦で若手の力が生きますから、どこかで逆転されることがほとんど。そういう対局を、ずいぶん見てきました。

ところが、挽回されてきたようにも見えた大詰めで、解説者もまったく想像していなかった、すばらしい手が出たのですね。龍(飛車が成った最強の駒)を玉のそばにタダ捨てする鬼手です。取ればアウト、取らなくてもアウト。佐々木五段がすぐに投了し、藤原七段の快勝になりました。ガッツポーズといきたいところですが、終わってもじっと瞑想し、喜びを示さないのが、この世界です。

私は涙が出るほど感動してしまい、今日もまだ、その余韻が残っています。こういう会心譜がテレビ放映されるなんて、棋士の勲章ですよね。藤原さん、これからもがんばってください。

今月のCD2015年05月29日 09時08分04秒

CDをかけたとたんに流れてきた、潤いのある音。ああ、やっぱり手で弦をはじく楽器はいいなあ、と惚れ込んでしまったのが、福田進一さんのギターによる「ノクタナール~イギリス音楽集」(マイスターミュージック)です。
ダウランドの《涙のパヴァーヌ》に始まり、ブリテン、ウォルトン、パーセル、デュアードと進んで《グリーンスリーブス》でしみじみと終わる構成は、いにしえと今を往復して絶妙。福田さんならではの芳醇なサウンドと配慮の行き届いたフレージングで、イギリス音楽の品格を伝えてくれます。

もう一つ、ぜひ推したいと思ったのが、ユリア・フィッシャーがピアノのヘルムヒェンと組んだシューベルトのヴァイオリン作品全集(キングインターナショナル)。小作りではありますが親密なアンサンブルの、なんと温かいこと。これこそシューベルト器楽の魅力だと思います。フィッシャーはヴァイオリン/ピアノの二刀流なので、ヘ短調幻想曲の連弾まで弾いていてびっくり。

終わる企画、始まる企画2015年05月31日 11時54分13秒

今年の5月は暑かったですね。木曜日の掛け持ち(國學院大學と早稲田エクステンション・センター)が、荷物を持って炎天下を歩きまわる形になって、案外疲れました。

早稲田(中野校)は、今週で、計5回のバッハ講座が終了。設備も良く規律も正しくて、なかなかいいところでした。受講名簿があり、毎回、出席を点呼するのです。お返事がいいので感心していたら、出席をためていくことで単位が出るのだそうですね。さらにためていくと、総長からの表彰があるとか。これは励みになります。では試験をしましょうかと申し上げたところ、それは不要とのことでした(笑)。

昨、30日(土)から朝日カルチャー新宿校で始まったのは、レクチャー・コンサート。歌やダンスのための、小広い教室を使います。バッハの強みは、チェンバロやオルガンがなくても、無伴奏という強力な出し物があること。第1回は無伴奏ヴァイオリン・ソナタの第1番と《シャコンヌ》というプログラムで、須賀麻里江さんに出演をお願いしました。

お客様が間近に取り囲む形の空間で、バロック・ヴァイオリンの説明や曲の解説もたっぷり行い、終了後は演奏者を囲んで、質疑応答。高いステージに上がってしまうとできない密接なコミュニケーションを取ることができ、いい形で進められるという確信がもてました。熱演した須賀さんは大人気で、終了後は写真撮影の行列になりました。

次回は7月18日(土)16:00~17:30です。曲は、無伴奏チェロ組曲の第1番と第3番、出演は山本徹さん。二期会のヘンデル《ジューリオ・チェーザレ》で大きな存在感を見せていた山本さん、すばらしいと思いますのでご期待ください。