温泉から2014年08月25日 06時28分47秒

日曜日に「すざかバッハの会」例会を終えて、谷あいの山田温泉に泊まっています。火曜日に松本のサイトウキネンを聴きますので、今日の月曜日は、子供の頃住んでいた上山田温泉に泊まる予定。この夏唯一の小旅行です。

以前若杉弘さんがおっしゃっていたのは、外国の音楽家たちが夏休みをしっかり取ることの効用。音楽から完全に離れることで、無性に音楽がやりたくなってくる。そのようにして闘志満々、新しいシーズンを迎えるのがいいのだ、とおっしゃるのですね。

本当にそうだと思いますが、私は生来の貧乏性がはなはだしくなり、温泉でも暗記をしているありさま。夕暮れの旅人は急ぎ足になる、ということでしょうか。

今朝は雨模様。昼間どこに行くか、長野に出てから決めたいと思います。

過ぎたるは?2014年08月17日 08時21分05秒

14日(木)。NHK収録の後、「あんのん鍼灸指圧」(大岡山)を訪れました。久しぶりだったのは、ついでの予定がなかなかうまく立てられなかったのと、最近充実していて、駆け込む必要性を覚えなかったこと。体調をどんな風に見てくださるか、興味がありました。

ゆっくりやっていただいた後、担当してくださったご主人に「どうでしたか」と尋ねてみました。すると意外にも、「自分が見たうちではいちばん悪い状態だった」とおっしゃるのです。えっと思いましたが、理由は、交感神経が興奮して張り詰めた状態になっている、頭部が異常に凝っている、とのこと。夜眠れないか、なにかよほど心配なことが続いておられるのですか、と言われました。

理由は明白。ギリシャ語です。車中、路上、待ち時間を利用して暗記し、入浴中もやっていますから、つねに臨戦態勢で、休むいとまがない。自分としては充実を感じ、朝から勉強に向かう自分を喜んでいたわけですが、年甲斐もない行為によって、身体には、相当な無理がかかっているとわかりました。

空中から下を眺めていると、黒い服を着た人たちが集まり、ひそひそと話しています。耳を澄ましてみると、「あの人もギリシャ語が命取りになりましたね」と言っている・・・そんな光景が浮かんできました。

ほどほどに、という加減が、どうも苦手です。

達成!2014年08月08日 22時28分41秒

ここしばらく、一つのことに集中していました。達成したらご報告することを楽しみに励んでいましたが、どうやら達成できたと判断し、ご報告します。不肖私、『ヨハネ福音書』の第1章を暗記しました!それがどうした、ですって?たいへんでしたよ。なぜなら、覚えたのはギリシャ語コイネーの原文だからです。

私は美学の専攻ですから、本当は、ギリシャ語ができて当然。しかし学生時代に、ラテン語は必要だがギリシャ語は音楽には必要ないと勝手に考えて、勉強をネグレクトしたのですね。でも、そうではありませんでした。宗教音楽を専攻した結果、新約聖書の研究のために、ギリシャ語がどうしても必要になりました。

この歳ですから無理、と考えていたのですが、来るべき《ヨハネ受難曲》の著述にはギリシャ語の習得が避けて通れないと判断し、勉強を始めました。2冊ほど入門書を買いましたが、文法の複雑さは、とくに動詞において、想像を絶しています。そこで、語学の習得はまとまった文章の暗記に限る、という自分なりの原則に帰り、『ヨハネ福音書』第1章を、暗記することにしました。

しかし何から何まで違う言葉が相手なので、絶望的に覚えられません。自分もついにこうなったか、と思い、それなら忘れなくなるまでやればいいのではないか、と思い直し、コピーを携帯して、電車の中、路上、待ち時間に、もぐもぐと続けました。おかげで、週刊誌でも読まなければ退屈な時間が、じつに有意義な時間に変貌しました。

よくしたもので、だんだん覚えられるようになり、だんだんわかるようになった。向上の喜びを支えに、51節もある第1章を、なんとか征服しました。既存の訳の問題点も今では理解できますので、ルター訳のテキストに対しても、客観的な視点で臨めそうです。

そして思うこと。語学は若いうちに、というのは真理だが絶対ではなく、自分であきらめているだけです。まだまだ初心者ながら、新しい言葉に親しめる喜びは、絶大だと感じます。老化防止の手段としても、自信をもってお勧めいたします。

モンテヴェルディ、リハーサル始まる2014年07月14日 08時56分58秒

ご案内している8月1日、サントリーホール・ブルーローズにおけるモンテヴェルディのコンサート、昨日日曜日に、横浜の渡邊邸で初練習しました。10時から、夜の9時まで!時間差はありましたが全員が参加し、ほぼ全体像が見えてきました。

今回ヒロインとしてご参加いただいた、加納悦子さん。ヤーコプス指揮の《ポッペア》における小姓役での活躍はDVDでおなじみですが、今回のペネーロペとオッターヴィアは初役とか。にもかからわず誰よりもよく勉強してこられ、早くも圧巻の歌唱で、一同感嘆。これが一流というものなのですね。

《ウリッセの帰還》を手がけるのは、今回が初めてです。当初は《ポッペアの戴冠》と比べるとずいぶん見劣りするように思っていたのですが、勉強するにつれ、真価がわかってきました。今回取り上げるのは4つの場面も、お楽しみいただけると思います。

いい公演にできるよう、みんなで努力してまいります。

綱渡り続く2014年07月11日 10時34分10秒

毎回同じような記述になってしまって恐縮ですが、9日(水)の綱渡り記にお付き合いください。

この日は、サントリー音楽賞&佐治敬三賞の贈賞式で、私は、乾杯の発声をするという役割をいただいていました。手帳によれば、18時からのスタート。昼間はNHKの準備に費やし、16:30に家を出るために、16:00からの30分を、原稿の用意に宛てるつもりでした。3つの団体へのお祝いの言葉を、磨き込んだ形で差し上げようと思ったからです。

16:00が近づき、入浴の前に場所を確認しようと案内状を探し出したところ、髪の逆立つような記述が。そこには、授賞式17時(!)から、祝賀会18時から、と書かれていたのです。

脱兎のごとく支度し、飛びだそうとして気付いたのは、腕時計が見あたらないこと。スマホがあればいいか、と思ったら、その充電を忘れている。大騒ぎで探すこと数分、タクシーが来てしまったので、一刻を争う状況ではあるが、時計なしで駅に向かいました。

鞄の中を見ると、なんと時計が入っている。忘れないように、先に入れておいたらしいのです(それを忘れるという、よくあるパターン)。国立駅の階段を駆け上がると、そこに電車が来るという幸運に恵まれ、17:00少し前にサントリーホールにたどり着くことができました。

そうしたら意外にも、私は胸に花をつける来賓扱いで、堤剛さん以下受賞者の揃う待合室に案内されるではありませんか。会場にも、堤さん、3人の受賞代表者(鈴木雅明さん、有馬純寿さん、ローラン・テシュネさん)、文化庁長官といっしょに入場し、一列目に着席。ああ間に合ってよかったと、何度も心で反復しました。

テレビ朝日のすてきなアナウンサー、坪井直樹さんの快活な司会で会は進み、ついに乾杯のシーンへ。原稿が作れなかったので若干の破綻はありましたが、心配した立ち往生はなく、務めることができました。鈴木雅明さんは「・・とバッハ・コレギウム・ジャパン」という形での受賞なので、そのことの重要性に触れ、メンバーがいっしょに主役として輝けるような、愛のある演奏を追求して欲しい、と申し上げました。

世界的に評価のある団体の功績を本賞で顕彰する一方で、限られた聴衆を前に行われためざましいコンサート(東京現音計画の「イタリア特集Ⅰ」とアンサンブル室町の「東方綺譚」)を紹介するお手伝いができ、末席にいる人間としても嬉しい気持ちの残る、今年の授賞式でした。それにしても、間に合ってよかった!

お詫び続き2014年07月09日 12時58分16秒

大阪で2泊した翌日の土曜日(5日)は、横浜の朝日カルチャーで、モーツァルトの1日講座。昔のように「ぐっすり寝てしまって・・」ということはさすがに最近はないので、早く横浜に着き、自由時間を満喫。13:00から、講座になりました。

今回出した本のエッセンスをまとめて提示し、詳細は10月からの新講座(第4土曜日)で、というのが、カルチャーからいただいたご配慮。今回の見直しによって後期の作品がどんな風に違って見えてきたか、ということを鑑賞を交えてお話しし、ちょうど15:30になりました。10分間質疑応答で延長し、受講生とお別れをして、教室を出ました。

すると私を見つけた講座担当の女性が、驚愕の表情で駆け寄ってくるではありませんか。叫ぶようにおっしゃるには、「先生!今日は16:30までですよ!」と。

私も驚きましたね。2コマ、16:30とわかってはいたのですが、15:30が近づいてずいぶん話した気になり、すっかり錯覚していたのです。

大あわてで教室に戻り、ちりぢりになっていた受講生を再招集。あらかた集まっていただけたのですが、予定した話は終わっていたので、どうしたらいいかを頭で考えつつ、平身低頭のお詫び。幸い受講生から次々と質問を出していただけたので、なんとか形をつけることができました。うっかりもいいところで、まことに失礼しました。

8日(火)は大阪音大定例の講演のため、ふたたび大阪へ。大学で取り上げている《コジ・ファン・トゥッテ》の話をして欲しいということでしたので、持ちネタのまとめに精を出しました。最後の仕上げ(パワーポイント・ファイルへの楽譜の貼り込み)で時間が切迫し、新幹線に持ち込むか、仕上げてから急ぐかの選択に直面。後者を選択し、家を出ました。

そうしたら、南武線で「ホームから転落したお客様を救助」するという事故が起きてしまったのですね。新幹線の乗り継ぎも悪かったため、遅刻の避けがたい事態に。連絡通りの15分遅れで到着でき、ほっとして会場入りしたら、よれよれで息せき切ってやってくると思ったのに、意外に平然としていた、とのご感想が。なるほど、横浜のショックに比べて、対応が甘くなりました。次に万一のことがありましたら、よれよれでたどり着くようにいたします(笑)。

講演は、声楽のクラスからもたくさんの受講生が来てくださり、いいペースで進行。いつもながら、庄内駅前での打ち上げが、楽しい雰囲気でした。ありがとうございました。

サッカー素人談義2014年06月27日 01時06分48秒

皆さん、しばらくサッカーに熱中しておられたことと思います。私はサッカーには基本的に興味がないのですが、報道の過熱にあおられ、コロンビアとの最終戦を観戦しました。ファウストの翌日、大阪、ニューオータニの一室で、早起きしました。

素人ですから、批判的なコメントはできません。ただ、一般論として、素朴な疑問を感じるのですね。それは、攻めるのこそが日本のサッカー、ということで、ほとんど攻撃中心の戦術が採られていたことです。もちろん点を取らなければ勝てないわけですが、強い相手に対して正面から攻めていくというのは、古来の兵法に照らしても、どうなのでしょう。

私は、将棋が少しわかります。将棋の世界では、ヘボは攻めるだけ。守りが強くなって初めて、ランクが上がってゆきます。なぜなら、攻めは自分の都合を中心に考えて進められますが、守りは、相手がどう来るか、どう来られたら自分が困るかを、入念に考えなくてはならない。すなわち、相手中心に考えるという高等戦術が、守りには必要なのです。名人になるのはたいてい、守りの強い人です。

というわけで、外野が守らず攻めろ!の大合唱になっていたのは、どうなのかと思っていました。それにしても、中南米は、小国もみんな、強いですね。だからこそ面白い、ワールドカップです。

【付記】野球も同じです。交流戦の間に、守備の破綻から大量失点というゲームをいくつも見ました。ソフトバンクの二遊間(本多、今宮)はすばらしいですね。

富山でバッハを語る(3)2014年06月19日 08時36分30秒

講演は土曜日の午後でしたので、翌日富山県を少し見るにはどこで泊まるのがいいかと思い、検索をかけてみました。すると高岡に、ニューオータニがあることがわかったのですね。これは高岡の観光上のステイタスを示すもののように思え、高岡に泊まることにしました。それから氷見に足を伸ばし、戻ってこようという計画です。

土曜日にはしゃぎすぎたためか、日曜日は風邪気味で足も痛いという、バッド・コンディション。通行人に次々と追い越される、とぼとぼ歩きになってしまいました。でも高岡、いいですね。日本三大大仏のひとつが、宿の近くに。


隣接する、緑豊かな高岡古城公園。


さらに良かったのが、前田利長の菩提寺だという、瑞龍寺。さすが国宝、端正なたたずまいで心が洗われるようでした。


1両だけの小さな電車に乗り、能登半島の右端を北上して、漁港と温泉の町、氷見へ。海産物の集まる「ひみ番屋街」までの30分の道のりを、とぼとぼと歩きました。駅にコインロッカーがなく、荷物を持参するはめに。


足湯に漬かっていると、理系の大学生を相手に話しているおじさんの声が聞こえてきました。STAP細胞の話です。STAP細胞はないと言われているが、本人があると言っているのだから、あるかもしれない。だとしたらすばらしいことだ、応援したい、という趣旨。よくある意見なのでしょうね。

私は、学問の世界に身を置いてきた人間として、いい加減を許容するような立場はとれません。手続き的にも信頼の置ける仮説だと認められて、初めて次に進めるわけで、その立証責任は、仮説の提唱者にあります。ないことを立証するなどという気の遠くなるようなことを、回りがすべきだということではない。どの分野にも、立証されない仮説を好都合に打ち上げる人もいれば、客観性を得るために苦労している大勢の人もいることを、見てきています。

期待したお寿司屋は長蛇の列であきらめ、市内で食事を済ませて帰宅しました。おかげさまの週末。バッハアンサンブル富山の皆さん、ありがとうございました。

新・あれ、バッグがないっ!(3)2014年05月29日 23時33分52秒

さて、どこにバッグを置いてきたか。新幹線の車内でノートパソコンを使っていたのだから、新幹線に乗る以前ではない。新幹線に置き忘れたという可能性が、まずひとつです。だとすると、荷物は博多まで行ってしまう。博多まで取りに行くのではたまりません。

もうひとつは、紀伊國屋梅田店で本を購入するときに、足元に置いて出てきてしまったという可能性。これの方が多分多い、と推測しました。まだそう時間は経っていないので、レジにそのまま置いてあるのではないか。しかしこの場合は、誰かが持ち去る、ということも考えられる。そのままならいいが・・、いや絶対そのままだっ、と念じて、阪急梅田まで戻りました。

レジに直行。店員数人が並ぶ、大きなレジです。若い男性店員を覚えていたので、その前を見ましたが、バッグはありません・・。

残る可能性は、お客さんが忘れ物に気づき、お店が預かった、というケースです。それが最善で、そうでなければたいへん。「ここにバッグを忘れたと思うんですけど」と尋ねると、その店員は思い当たる様子で、ちょっと探してから、他の店員に相談。しばらくしてその人が、バッグをもってきてくれました。

良かった(しみじみ)。やっぱり、日本ですね!でも、喜んでばかりはいられません。不注意から起こった出来事が幸運な解決を見て、大量のツキを消費したように思えたからです。これがコンサートにかぶったら困る。夜9時からとなったリハーサルでは、皆さん心なしか好調でないように思え、別の心配が兆してきました。(続く)

新・あれ、バッグがないっ!(2)2014年05月28日 16時15分56秒

日曜日は、新宿でいったん下車。いずみホールのオペラをおまかせしている河原忠之さんと、歌舞伎町の風俗まっただ中の喫茶店で、打ち合わせがあるからです。

私は右手に神器入りのバッグ、左手に舞台衣装という大荷物でしたので、コインロッカーを探しました。しかし日曜日の昼間は、どこも満杯。ようやく地下鉄の駅近くで空きが見つかり、荷物を収めて、手ぶらで歌舞伎町に出かけました。

打ち合わせ終了後、東口方面にスープカレーのおいしいお店を見つけて昼食。私はスープカレーのお店があると必ず入るほど好きなのですが、このお店「東京ドミニカ」はいいですね。一番といっていいくらい気に入りました。

大満足で荷物を取り、JRへ。思えば、ここに間違いがありました。身軽なときに、本を買っておくべきだったのです。月曜日のコンサートのために高峰秀子さんの『わたしの渡世日記』を再読しておこうと思ったのですがなぜか見あたらず、紀伊國屋で買うことにしていたのでした。

新幹線の車中では、ノートパソコンの環境構築に熱中。本は、大阪駅で下車し、梅田の紀伊國屋で買うことにしました。文春文庫のはずが新潮文庫に変わっていてびっくりしましたが、無事購入。大阪駅に戻ります。

両手に荷物をもっていますが、なんとなく軽いように思えました。右手には、ステージ衣装。左手には、本屋の手提げ袋。・・・えっ、違うじゃん!本当は3つあるはずの荷物が、2つだけなのです。またバッグが!と、このときばかりは気が動転しましたね。なぜなら、バッグの中味が、パソコンだのルーターだの、フランクフルトのホテルとうり2つになっていたからです。しかし、5年使ったパソコンをなくすのと、前の日に買ったばかりのパソコンをなくすのでは、意味が違います。

バッグが手元にないのはさてどの段階からか、私は考え始めました。(続く)