クラヴィコード!2009年07月31日 23時51分25秒

水曜日は、バッハ研究所の前期最後のイベント。会場には渡邊順生さん秘蔵の楽器(クラヴィコード、チェンバロ、フォルテピアノ)とポジティヴ・オルガンが並び、それらを試奏しながら、大塚直哉さんがバッハと彼の楽器、およびその演奏法についてレクチャーするという、贅沢きわまりない企画でした。

バッハ研究の最先端の情報に精通した大塚さんのお話・演奏は世界的にみても最高レベルのものでしたが、私がとりわけ印象深かったのは、クラヴィコードです。ごく小さな、しかも精妙な音に集中して耳を傾けると、そこに広いファンタジーの世界が広がっている、というのは、私が最近もっとも貴重だと思っている音楽体験の形です。

終了後、クラヴィコードの周囲に人が集まったことは言うまでもありませんが、渡邊さんがそこで愛を込めて演奏した《平均律》の変ホ短調プレリュードの美しさは無類のものでした。「この曲はクラヴィコードがいいねえ」と申し上げたときの、嬉しそうな顔ったら。

レクチャーでは、〈私は満ち足りている〉のレチタティーヴォを、ソプラノの鏑木さんと4種の鍵盤楽器で演奏するという試みも行われました。え、クラヴィコードで歌の伴奏できるの、と思いたくなりますが、これができるのですね。アンナ・マクダレーナはおそらく終始ソット・ヴォーチェで、クラヴィコードのかそけき響きに耳傾けながらアンサンブルを楽しんだことでしょう。歌の伴奏か、じゃ音量のある楽器じゃなくちゃ、と考えてしまうのが、近年の音量主義。楽器が違えば、歌い方もまったく違ったにちがいないのです。

別宅にもどうそ。 http://groups.google.co.jp/group/alt-prof-i

コメント

_ 柴田 ― 2009年08月01日 22時48分04秒

歌の伴奏と言えば、リュートやギターが最適なのではないかと思います(笑)。どこにでも持っていけますし。確かに音量は、歌本来?の機能を考えれば、目の前にいる相手一人に聞こえればいいわけですし(笑)。人間の体の一部が振動する歌と、人間の指が振動する弦に直接触れる弦楽器の相性は抜群かと...
あ、こういう話は、別館でする方がよろしいでしょうか(笑)?

_ I教授 ― 2009年08月01日 23時35分49秒

たしかにリュートでも同じことが言えますね。やっぱりふさわしい音響で、アンサンブルしていたんですよ。あ、これって別館の話題ですか(笑)。

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